余命一年 最後にあなたに会うために 〜あなたを探す旅〜

@razuri_1127

覚悟の11月

第1話 11/10

秋、私の一番好きな季節だ


だって私が好きな金木犀の匂いがするから


私は3歳の時に肺が悪いことがわかって学校には行かずに病院で過ごす毎日を過ごしてきた


私の病室は10年間変わることなく同じ場所だったから毎年秋に咲く金木犀の木からする匂いが大好きだ


こんなに好きな金木犀の匂いを私はもう少しで感じることができなくなることなんて今は知らなかった




















世界は残酷だ


頑張ってきた人にほど厳しい


そんなことを思い知らされた


「余命1年です」


医者からそう伝えられる


誰も何も言わずに時間が過ぎていく


なんで私が?


その気持ちで頭の中はいっぱいだ


長い沈黙を破ったのは私の唯一の家族であるおばあちゃんだ


「瑠紀はもう治らないってことですか?」


「.....はい」


「今回の検診でステージ4の肺がんが見つかりました」


「今から治療することもできますが生存確率は低いです」


「そ、そうですか…」


おばあちゃんは落胆したように顔を俯けた


「どうしますか?治療なさいますか?」


数パーセントの可能性に賭けて失敗したら死ぬか、必ず残っている一年を大切に生きるか


「治療しません」


私は残りの一年しっかり生きることを選ぼう


「わかりました」


では余生はこれまで出来なかったことをして十分に楽しんでくださいね


「はい! もちろんです!」






































「瑠紀ちゃんはいつから病院ここにいるの?」


「3歳.....」


「えー結構長いんだ!」


「僕さ昔体悪くて病院で過ごす毎日だったんだけどさ」


「中二になった時に良くなってきて今高一だけど元気にやってるしw」


「だから瑠紀ちゃんも大丈夫だよ!」





























バサッ!


「ゆ、夢か....」


私が見た夢は5年前に出会った青年綾人の夢だ


彼は5年前の10月25日に私の前に急に現れ突如姿を消した


1つの手紙を残して...


瑠紀ちゃんへ


僕は少しの間瑠紀ちゃんには会えません


昨日またあしたって言っちゃったのはごめんね


僕はやらないといけないことがあるんだ


5年後に東京23区のどこかにいるから探して欲しい


わがままかもだけど見つけてくれれば僕がすごいものを見せる


約束するから、いつまでかかってもいい


僕は君を待ってます
























今もとってある手紙をもう一度読み返す


ああもうあれから5年経ってしまった


「どうしよう」


彼が私に残した思いを私は繋ぐべきだ


それに私にはもう時間が無い


ここで一人寂しく死ぬより


彼を探して旅に出た方が楽しいだろう


「よし、決めた」


夜が明けて行くにつれ空の色が明るく変わっていく


これからが楽しみだ

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