第8話 別府タワー出現

「フンコロガシ⁈」

 ミコは、前世を思い出し、外に向けて大声で呼びかけた。


「ねぇ、もしかして、フンコロガシのフン?」

『そうや、わしや』


「ああ、フン、懐かしいね! ねぇ、押してくれてるんでしょ」

『うん、まりいもん見ると押しとなるけん』


「ペンタリア国まで押していける?」

『そりゃ無理やな。ペンタリアには海を越えんと行かれんけんね。陸地でん行くこたできるけんが、すげぇ遠回りや』


「そっか、じゃあ、行けるとこまでお願い!」

『OK!』


 フンは、アルを後ろ足で転がして平原を歩いた。敵の矢の嵐は次第に届かなくなった。


 しかし、敵はいつのまにか橋を渡って接近して来ていた。アルとフンは百人くらいの敵に囲まれた。


『囲まれたよ、ミコ。もうダメかも知れない』

 アルの声は、酷く沈んでいた。

『僕は大丈夫だけど、フンが‥‥‥』


 敵は長い剣を、アルとフンに振りかざしてきた。

 だが、ミコもルイスも中にいて、外の様子は見えない。



 その時。

「ウッ、何だこの匂いは!」

「うわー、こりゃ堪らん」


 外がいきなり騒がしくなって、その後、次第に声が聞こえなくなった。


「どうしたの?」

『ああ、ミコ。敵は皆おらんごつなったけんが、まだ出らん方がいいよ』


 フンが云った。

「何で?」

『くせえんや、しんけん』 ※しんけん=大分弁で “とても”


 ミコは、はっとひらめいた。

「ショクダイオオコンニャクね!」


『そうや、別府タワーぐれえの高さん、とてつもねえでけぇろうそく立てんようなんが来ち、花を咲かしたんや』


「別府タワー?」

『東京タワーんごつこねえけん』

(だからといって、別府タワーは誰もわからないじゃん!)


「ねぇ、ショクでしょ。ありがとう、助かったわ」

『いいのよ、ミコ』


「ねぇミコ。草だよね、草も友達なの?」

 ルイスが恐る恐る訊いてきた。


「草ですが、なにか?」

「何でもないです」



『ふんなら、行くよ』

 フンが云った。

『わしもこん匂いは、堪らんけんね、多分アルも』

『うん、はだがばがりそうだ』

(鼻が曲がりそうって云ったのかな?)


 フンはまた、アルを転がして歩き始めた。


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