【鑑定その9 虹色の謝罪石 後編】

「行くよ。せーのっ」

「うりゃ!」

 わたしたちは虹色の石を破壊することを試みた。ルブラが「とりあえず割ってみよう」と言ったからだ。

 わたしがやっとこで石を固定し、ルブラが一撃する。

 しかし、あのルブラですら、石は割れなかった。正確に言うと、ヒビらしきものは入るのだが、すぐにその傷は消え、もとの状態に戻ってしまうのである。

「うーん。壊せないな」

「ルブラでも壊せないなんて……」

「火にかけてみたらどうかなあ」

「うーん、あまり期待できないけど」


「あの。お二方、何をしているんです?」

 ビリディスが話しかけてきたのは、わたしたちが火をおこして虹色の石を炙っているときだった。

 べつに隠すことではないのでわけを話すと、ビリディスは不思議そうに話を聞いていた。

「虹色の石……うーん。どこかで聞いたことが」

「えっ、どこどこ?」

 ビリディスは眉間にしわを寄せ、必死に何かを思い出そうとする。彼は頭痛がすると言い出した。

「……一回あたり30個」

「え?」


「一回あたり虹の石が30個、十連が300個です。十連は金以上の冒険者が確定で一人……」

「ビリディス、何を言っているの?」

「現在ピックアップキャンペーン中、火属性の冒険者が確率アップです……」

「おい! 大丈夫か!」

 ぶつぶつ言いだしたビリディスの前で、ルブラがぱんと手を打ち鳴らす。

「……はっ、私は何を……?」

「なんかぶつぶつ言ってたぞ」

 ビリディスは覚えていないらしく、首を振る。

「ちょっと調子が悪いのかもしれません……うっ、頭が」

 彼はそう言って帰っていった。


「ビリディス、大丈夫かな?」

「さあ……」

 わたしとルブラは顔を見合わせ、それからたき火を見る。

「30個とか言ってたよね」

「くべてみるか」


「にじゅきゅ、さんじゅう」

 ルブラが30個めの虹色の石をたき火に放り込むと、そのとき、何かが起こった。たき火の中で虹色の石が、一斉に白く輝きだしたのだ。

「うぁあ」

「す、すごい魔力!」

 すさまじい閃光に目がくらむ。

 たき火は光の柱と化した。


「な、何が起こってるの?」

「わからん。カイリカ、下がってろ」

 ルブラがわたしをかばうように立つ。

「何か来る! こいつ、手ごわいかも……」

 その時、光の柱から何者かが現れた。


「よっ! あたしルブラ! よろしく頼むな!」

 光の中から現れたのは、もう一人のルブラだった。

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