【鑑定その9 虹色の謝罪石 前編】
ダンジョンの奥には異世界のものや時を超えたものがごろごろ落ちていることが知られている。
ダンジョンとはそもそも何なのか? それすらも今の私たちにはよくわかっていない。それが何者かの意志によって存在しているものなのか、それとも何らかの偶然の産物なのか……。
ダンジョンの謎はいろいろある。
たとえば、奥に行くほど強力な魔物がひしめいていることが冒険者にはよく知られているが、なぜそうなっているのか説明できたものはいない。これではまるでダンジョンが冒険者を鍛えようとしているかのようではないか。
それに魔物も魔物だ。知能が高い魔物もいるのに、なぜか地上に攻めてきたりすることはめったにない。おかげで地上は人間どうしの争いをのぞけば基本的に平和である。
このように、ダンジョンには謎が多いのだが、そのうちのひとつが……
「これ、もらったからあげるー」
「また虹色の石?」
その日、ルブラは皮袋につめた虹色の石を持ってきた。
「またなんかあったの?」
「ダンジョンのエレベータが動かなくなってさあ」
ルブラが言うには、ダンジョンのより深い階層につづくエレベーターがあるのだが、それが途中で動かなくなったのだという。
そもそも、なんでそんな侵入者に便利なだけの装置があるのかとか、動力は何なんだとか、疑問はつきないのだが……。
「しばらくしたら直ったんだけどね。それで家に帰ったら、郵便受けにこれが詰め込まれてたんだよ」
「ふーん、まあいつものことだね」
「そうなんだけどさあ」
ダンジョンではしばしば仕掛けなどの不具合が起こるのだが、そういう不具合に逢うと、冒険者のもとに何者かから「不具合のお詫び」などといった手紙とともに、虹色の石が送られてくるのだ。手紙には「魔力石(無償)をさしあげます」などと書かれている。無償ということは、有償のものもあるのだろうか。
そのため、この虹色の石は【謝罪石】と呼ばれている。
わたしはルブラの持ってきた虹色の石を手に取って眺めた。
その石の内側には、七色の複雑な光があり、きらきらと色を変えている。そしてわたしにもわかるほどすさまじい魔力が秘められている。
しかし、わたしを含め、だれもこの石の使い方を知らないのだ。
「ちょっと、この石の使い方を考えてみようよ」
「うーん。そうだねえ」
今回の鑑定品メモ:
【謝罪石】
よくわからないが何かダンジョンにおいて仕掛けなどの不手際があったときに渡される石。虹色できれいだが何なのかはよくわからない。ルブラが持ってきたやつがうちに山ほどある。
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