【鑑定その6 虹色の聖なる腕輪 前編】

「す……すごい」

 わたしはルブラの発見した謎の物体を見て言った。

「そうかなあ」

 ルブラは小首をかしげている。

「そんな大したもんなの」

「わからないけど、これはたぶんすごいものだよ。どうやって作ったのかわからない!」

「まあ、どうやって作ったのかはわからないけど……」


 その物体は、虹色のばね状のリングだ。不思議な虹色の物質で作られ、びよんびよん伸び縮みする。

 この【虹色のばね】を見たときわたしは思った、これには何か特別な力があるに違いない! と……。

「そうかなあ」

 ルブラはそのばねの両端を手にのせて遊んでいる。ばねは液体のようにしゃーっと低い方の手に流れるので、手を上下させるとしゃーっしゃーっと手から手に移動する。

「こういうオモチャだと思うけど」


「いや、これはたぶんすごいアイテムだよ! 虹色だし」

「たんに虹色なだけでしょ」

「わからないよ。なにか魔法の力があるかも」

 そう思ってわたしは魔力鑑定を行ってみたが、なんの反応も示さない。いや、しかしなにかあるはずだ。

「ただの虹色のばねだよ、これ」


 そう言いつつルブラはその【虹色の不思議なばね】で遊んでいて、新しい遊び方を発見した。階段状になったところでその虹色のばねを落とすと、しゃーっ、しゃーっとくるくる反転しながら落ちていく。

「へえ。これ面白いね!」

「知性を感じる……これには意思があるかも」

「ねえルブラ、前みたいにこれをダンジョンに持っていってよ。なにか特別な力が見つかるかも」

「いや絶対ないって……まあいいけどさ」




今回の鑑定品メモ:

 ルブラはオモチャだと言ってゆずらないがわたしにはわかる。これは高度な錬金術の結晶である。なんらかのすごい力があるに違いない。きっとそうだ。たぶんそうだと思う。そうなんじゃないかな。


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