第13話
彼女の肩に置いた手を背中に回し、彼女に顔を近づけた。
一瞬動揺を見せた彼女だったが、再び眼を閉じこちらの反応を期待して待っている。
『次はここを暖めれば良いのかな?』
と言いながら、彼女に優しく長いキスをした。
キスをしながら、それを聞いた彼女の口元が緩んだ気がした。
外は豪雨が続いている。雨が窓ガラスを激しく打ちつけ、レースのカーテンを引いたかの様に外からの視界を遮り、二人きりの閉ざされた空間になっている。
彼女も、人目を気にする事なくキスが出来ることに抵抗が無かった。
『これからどうしようか…、着替える服を何処かで買うにも店は閉まっているし…』
彼女に風邪をひかせるわけにも行かないし、このまま自宅に送るのも時間がかかり過ぎる。
『髪もお化粧もグシャグシャだから、もぅ人前には行きたく無いなぁ〜』
『う〜ん、どうしょう…。人前に行かず、暖まれて、髪やお化粧を直せて、服を乾かせる場所って、1つくらいしか思いつかないんだけど』
彼女も察しが付いたらしい。
彼女の中の”躊躇い”は、これからの二人の関係がどうなるのか知っていた。
そして、彼女からの次の言葉によって、今後の展開が変わる事はお互いに理解していた。
『帰りが遅くなっても大丈夫だよ』
彼女が手を握り返し、恥ずかし気に上目遣いでこちらの様子を伺っている。
『このままじゃ風邪ひいちゃうから、じゃぁ行こうか…』
彼女に僅かな大義名分を与えた。
『さっきみたいに優しくしてね』
主導権を握っていたつもりが、彼女の言葉で今まで踊らされていた気がした。
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