スピリッツ・サイド 新生B√ 幼馴染から始まる恋

@kousatuzei_m

第1話 救いの旅路へ

プロローグ 回想


 これは、僕こと志方聡しほうさとるが十歳の時に経験した、とても大切な記憶だ。

 成人式を迎えた今でも、僕は時々あの日の事を思い出している。


 幼少期の僕は、いつも近所の神影神社みかげじんじゃの泉の前を秘密基地にして遊んでいた。


 秘密基地と言っても、やる事は友人と集まってゲームソフトをプレイしたり、一人で本を読みながら流行はやりの曲を聴いたりするだけだったのだけれど、あの頃の自分達だけの居場所に行った時の高揚感は今でも鮮明に覚えている。



 夏休みのあの日は、友人とは家族旅行等で都合が合わず、僕は少々退屈な時間を過ごしていた訳だけれど、その平穏はこの後の出来事によって一瞬にして崩れ去った。


 ぼんやりと、目の前の水面みなもに黒い和服を着た六歳位の女の子が映ったかと思うと、その刹那せつな、辺り一面が煌々こうこうと光り輝いた!


 僕が思わず目を閉じ、白光が治まったのを感じてから目を開けると、眼前には白い蝶の模様が入った黒い和服を着た、黒猫耳と一本の尻尾を持つ女の子が困惑した様子で佇んでいた。


聡「えっと、怪我は無いかな? 迷子なら、付き合うけれど」


 僕がしっかりしないと!

 と声を掛けてみたけれど、もっと気の利いた言葉が有ったかも。


黒猫耳の少女「ケガとかは、していないみたいなの。

 おにいちゃん、ここはどこ?」


 僕の後悔とは裏腹に、この子は安心した様子で僕にすがる様に聞いてくれた。

 幸い言葉は通じるみたいだけれど……これは、本格的に迷子だね。


 寂しがって泣きそうになるこの子をあやしながら、僕が数分掛かりで少しずつ話を聞き出して分かった事は、この子が魔力で循環している異世界の東洋怪異の国の出身である事と、彼女はその世界の中心に有る湖に触れたと思った時には既にこちらの世界に居たという事だけだった。


 小さい子の相手とか、もっと練習しておいた方が良かったかな。 僕がそう思い始めた頃、この子は何かを決意した様子で、たどたどしくも話し始めてくれた。



黒猫耳の少女「私は……宵月小蔭よいづきこかげって言うの。

 蛇姫様には、知らない人に名前を教えるのはいけない事って教わっているけれど、優しいおにいちゃんには、ちゃんと御話するね」


聡「ありがとう」


小蔭「あの湖はね、本当は王家の人しか近付いちゃいけないの。

 小蔭、分かっていたの。

 でも、それだといつか蛇姫様に置いて行かれちゃう気がして、寂しかったの」


聡「そっか。 それで、自分も一緒の事がしたくて、湖に近付いたんだね」


小蔭「そうなの。 おにいちゃん、ごめんなさい」


聡「謝らなくても良い。

 謝らなくても、僕は君を責めたりしないよ」


 こんなに小さい子の、こんなにも純粋な気持ちを僕に責められる訳がなかった。

 僕が何も言わずにこの子の髪を撫でていると、泣きそうだった彼女の瞳に少しずつ希望の色が戻り始めた。


小蔭「それでも、王家の人は湖の近く同士ならオリハルコンの魔道具で御話ができるから、もしかしたら……助けを呼んで来てくれると思うの」


聡「範囲の限られているスマホの様な物が有るのなら、きっと助けが来るね。

 ここに居れば安心だから、僕と一緒に待っていると良いよ」


小蔭「おにいちゃん……ありがとうなの」



 恥ずかしそうに俯くこの子と一緒に五分程待った頃、目の前の水面にストレートの銀色の髪と白い清楚なデザインのローブ風の服が印象的な少女が映ると、先程の様に辺りが光り輝いた。


聡「どうやら、助けに来てくれたみたいだね!」


小蔭「そうみたい!」


 僕等が強烈な光に少しだけ声を荒げると、目の前には三日月の珊瑚形の髪飾りを付けた九歳位の少女が、柔和な笑みを浮かべて立っていた。 彼女の服装とくびれた腰に括り付けられた薄光を放つ装飾品も、彼女の地位を明示していた。


 彼女は優しそうな雰囲気を纏っていたけれど、僕の胸に御顔を隠す様に抱き着いた小蔭ちゃんの両腕には、叱られるのを警戒してか少なからず力が籠っていた。


柔和な少女「小蔭ちゃん、もう大丈夫よ。

 驚かせてしまいましたね。

 私はセイレーンの次期姫君でシェリナ=ウィズ=セレスティアルと申します」


聡「僕は、志方聡って言うんだ。 初めまして」


 あれ、言葉が通じている?

 ……ああ。 時期姫君を名乗る彼女が、東洋怪異の国の王家と通訳無しで話せるとすれば、小蔭ちゃんに通じている日本語が分かるのも当然かも知れないね。


シェリナ「聡さんですね、初めまして。

 あら、小蔭ちゃんって男の人には人見知りする子なのかなって思っていたけれど、この尻尾は……クスクス、優しいお兄さんなのね」


 シェリナさんが硝子細工の様な笑みを浮かべると、小蔭ちゃんはようやく彼女に振り向いた。



小蔭「うん。 とっても優しい、おにいちゃんなの」


 艶やかな黒猫耳を横に下げながら真赤になる小蔭ちゃんの様子に、和装の女の子も素朴な感じで良いなと見惚れていると、シェリナさんも顔を赤らめながら続けた。


シェリナ「男の方って、やっぱり女の子の可愛らしい仕草が大好きなのですね♪

 私の国では女性は穏やかに、清楚にしているのが好ましいと言われております」


聡「シェリナさんも、可愛いよ」


シェリナ「まあ……」


 口許くちもとに指先を添えて赤くなる彼女を見て、言ってからだけれど僕も急に恥ずかしくなった。



 意外と直ぐに平静に戻った彼女に尚更赤くなった僕は、慌てて話題を戻した。


聡「二人は、向こうの世界の子なんだよね。

 こっちには、どの位居られるの?」


シェリナ「今日でしたら、いつでも帰れると思います。

 こちら側との往復は初めてですから、確実に成功するとは言えませんが……今日は丁度、湖の魔力が高まる14日目なので」


聡「それなら、二人で僕の家に来ない? 御土産に、渡したい物が有るんだ」


 防犯の事も考えて僕は二人を連れて実家まで戻ると、一人だけで家に入って日本語の辞書を取って来た。 どうしてかって? 僕には考えが有ったんだ。



 もしも向こうで次に何かが起こった時に、この世界の理解に熱心な子達に言葉が通じれば、僕も何かに協力できるかも知れないからね。


 他の人は異世界自体を信じないだろうし、信じても行くのを怖がると思うから、僕一人の協力ではとても解決には至らないかも知れないけれど……もしもこの子達に窮地が訪れるとしたら、僕は絶対にその隣に居てあげたいって思ったんだ。


 それに、そんな事が起こらなくても、辞書に書かれたこちら側の知恵が向こうの世界の発展に役立つかも知れないとこの時の僕は考えたんだ。



 夏休みなのに帰りが日本語の授業になる事は分かっていたけれど、あの子達が相手だったからか不思議と退屈には感じなかった。


 その結果、向こうの情報は行きの20分しか聞けなかった訳だけれど、向こうでは湖の魔力が高まる14日目が吉日とされている事、小蔭ちゃんが仕えている蛇姫様は儀式等で用が有るその日以外は湖には近付かない事。

 

 吉日には他国の姫君も湖の近くに有る別荘に来る事等が聞けたから、こちら側に飛ばされた小蔭ちゃんを水に強くてオリハルコンの高級魔道具を持つセイレーンの次期姫君が助けに来れたのは偶然ではなく必然だったという事までは理解できた。


 もしかしたら、神影神社の泉は昔から定期的に異世界に繋がっていたけれど、向こうの人が水面を見た時に誰もそれに気付かなかったのか、過去に誰かが飛ばされた事が有ったとしても、その人も他人には信じて貰えないと直後に帰って秘密にしたのかも知れないね。



 そんな事を考えながら、僕等は神影神社に戻って来た。


聡「一人にさせるのは不安だったから一緒に歩いて貰ったけれど、疲れたかな?」


小蔭「おにいちゃんとのお話が楽しかったから、平気なの♪」


シェリナ「向こうの世界でも、徒歩で移動する事は有るので大丈夫でしたよ」


聡「良かった。 これで御別れなのは寂しいけれど、楽しかったよ」


小蔭「おにいちゃんも、こっちに来れば良いのに……」


 腰の後ろで手を結んで、友達を待つ子供の様にじれったそうにする小蔭ちゃん。


シェリナ「小蔭ちゃん、聡さんには聡さん達の世界が有るのですよ。

 私も寂しいですが、もし機会が有りましたら、また御会いしましょうね」


 こういう時は、シェリナさんの冷静さが有り難い。

 僕は、彼女の思慮深さに感謝しながら別れの言葉を口にした。



聡「吉日が14日置きならこっちは毎回日曜日だから、なるべくいつもここにやって来るよ。 だから、もしもそっちで何か起きたら、きっとまた僕を呼びに来てね!」


小蔭「分かったの。 おにいちゃん、またねなの!」


シェリナ「聡さん、もしも貴男が大人に成った時に未婚でしたら、その時は私達の世界に御嫁さんを探しに来ると良いですね。

 きっと、貴男好みの女性が見付かる筈ですよ」


聡「えっ、それって」


シェリナ「そのままの意味です♪ それでは」


 最後の方は囁く様に言われて、僕は柔らかく手を振るシェリナさんから目が離せなかった。



第一話 救いの旅路へ


 あれからの僕は、日曜日の度に神影神社に通い続けた。

 と言うのも、僕はぐに二週間が待ち切れなくなったからだけれど、なんと一週目の時点から水面に彼女が映ったんだ!


 まさかと思って他の日の学校帰りにも見に行ってみたけれど、どうやら毎回日曜日のみが吉日らしかった。


 これではあちらの時間が倍速……つまり、7日目の後半が14日目でこちらの15時が向こうの6時なんだね。

 それでも、この時の予想はその斜め上を行く事実により部分的に否定された。



 僕等の関係は、吉日毎に水面越しに手を振り合う文字通りの遠距離恋愛だったのだけれど、数回通った辺りから水面の右側にはシェリナさんが、左側には他国の上流貴族を思わせる黒を基調としたドレス姿の5歳位の女の子が映る様になったんだ。


 暗い水色の髪をしたその子も僕に興味が有るみたいで手を振ってくれる様になった訳だけれど、この子はシェリナさんより熱心な……そう、丁度僕位の熱心さだった。


 御互いに微笑んで手を振り合うとシェリナさんは満足気に帰るけれど、この女の子は母親らしき人に連れて帰られるか、僕が一度目を離すまでこちらを見ていた。

 でも、この子の成長速度……明らかに半分位なんだ。


 成長期の幼女である以上種族の特性は考えにくいから、時空や食料の違いによる筈だけれど、これだと生物以外の時間は倍速なのに、生物から見た体感の時間はその四分の一の半分みたいだね。


 不思議な話だけれど、物の成立ちから違う可能性すら有る異世界の事なのだからと考える。

 これは聞き齧りの知識だけれど、恒星との位置関係や自転の速度、テロメアに作用する食料等が関与していれば、現実的にも有り得ない話では無さそうだし。



 それと、小蔭ちゃんはあの一件が応えたのか数週間に一回だけ顔を見せてくれる様になったのだけれど、いつしか僕はあの子やシェリナさんと同じ位僕と気長に向き合ってくれる、ドレス姿のあの子にも特別な感情を抱く様になっていた。


 勿論シェリナさんも女性として本当に魅力的だし、可愛い小蔭ちゃんに何か有った時は誰よりも僕が味方でいてあげたいと思っているけれど、あの子は言わば10年越しの付き合いの中で僕と一番「」が有った子だからね。


 某性格診断ソフトにも判断速度系や導線関係のルーンが有る訳だし、他の恋愛物にも究極の二択と言った言葉が有る訳だから、あの三人の間で僕が揺れてしまう事についてはある程度許して欲しいとも言いたくなる。



 彼女の言葉を大切に覚えている僕は、水面越しでも何回後に長期滞在できる夏休みに入るかが分かる様に数字の下に矢印とウェディングドレスを描いた紙を用意して、矢印に合わせて指で数字を数える手振りをする事で、彼女とその左に映る女の子にその旨を伝えた。


 家族には、帰省した友人と一カ月の本州旅行に行くと言った訳だけれど、向こうで恋人が見付かった後にもう一つの選択をする可能性も考えると、ある程度の非情は必要だからね。


 後は、泉を保守してくれる協力者の神主さんが秘密を守り通してくれるかと、皆に気付かれない様に旅行用の荷物を向こうに運べるかを祈るばかりだよ。

 こうして僕は、運命の夏休みを迎える。



 夏休みか。

 シェリナさんはウェディングドレスの絵を見て瞳を輝かせていたけれど、僕が本当に好きなのは小蔭ちゃんやあの子なのではないか?


 あの頃と全く変わらない神社の泉を眺めながら、いけない。

 こんな気持ちで彼女を迎えたら、それこそ失礼だ。

 皆に全力で接してみて、一番気が合う子と結ばれるのが建設的だろうと僕は雑念を振り払う。


 すると、あの時と全く同じ様に辺り一面が光り輝いた!

 白光が収まると、僕の眼前にはあの頃の雰囲気を残して僕の半分だけ成長した二人が期待に満ちた表情で立っていた。

 普段は穏やかにしている僕も、これには思わず声が高鳴る。


聡「二人とも、御久しぶりだね! 来てくれて、ありがとう」


小蔭「お兄ちゃん、御久し振りなの!」


 11歳位になった小蔭ちゃんは、案の定な……上級者向けな和装のなのロリだね。

 なのロリって言うのは語尾がなのになる小さい女の子の事で、真なる平和主義者が推しな宝石の美少女ゲーや僕の周囲の間では近年復権しつつある新属性なんだ。



シェリナ「聡様、御久し振りです。 そして、御主人様、御待たせ致しました」


 14歳位になったシェリナさんは、メイドさんの様な雰囲気を纏った、長身で清楚な御姫様だね。

 二人共、凄い攻撃力だな……唖然とする僕の沈黙を破ったのは、以外にも可愛いなのロリの方だった。 この子にしては珍しく、とても真剣な瞳をしているね。


小蔭「聡お兄ちゃん、優しい蛇姫様を、東洋怪異の国を救って欲しいの!」


聡「そっか。 本当に、僕の助けが必要な時が来たんだね」


シェリナ「御主人様、左様で御座います。

 貿易や内政という意味では事足りているのですが、今回は本当に難しい状況ですので、是非とも聡様の英知を御借りしたいのです」


聡「戦術ゲームで和睦エンドを目指す様な物だね。

 ああ言うのはその世界の中で人物達が生きている訳だけれど、その蛇姫様が戦火に巻き込まれ掛けているのなら、分かった。 協力するよ」


シェリナ「流石は御主人様です!

 本来なら、過去一千年の様に平穏な時期に私達の世界に御招きしたかったのですが……これでは、御嫁さん探しをしにくいかも知れませんね」


聡「こういう時は、持ちつ持たれつだよ」


小蔭「お兄ちゃん、ありがとうなの! 優しいお兄ちゃんで、良かったの!」


シェリナ「聡様、有難う御座います」


 冷静なシェリナさんの傍らで、なのロリらしく歓喜する小蔭ちゃん。

 初転移だったあの日とは随分印象が違うけれど、きっとあの時は思わぬ事態に怯えていたからだよね。



シェリナ「小蔭ちゃんって随分大きくなったと思っていたけれど……優しい御兄さんの前では、まだまだ小さい女の子なのね♪」


小蔭「うん。 聡お兄ちゃんの事……大好きなの♪」


聡「ありがとう。 小蔭ちゃん」


 ASMRの少女達の様に慈愛に満ちた笑みを浮かべるシェリナさんと、俯きはにかむ小蔭ちゃん。 喜んで貰えて何よりだけれど、一千年も世界平和が続くなんて向こうの世界の人達はいったいどんな民意をしているのだろうか?


 性格診断ソフトでもああ言うのはレアルーンだけれど、赤消滅が特徴的なシスター平和や、それ寄りのシスターメイドが多そうだね。


(これは今までの経験則だけれど、平和のサブ方向でありながら導線に従うメイドと一緒に出ない紫は属性が違うだろうし、勇者との相乗効果も多少有る裁判官や打算の商人が多ければ例えそれ等が善性や判断でも競争の中での対立は不可避だろう。


 それがメインは意外とレアな黄色貫通のシスター賢者は赤減少型も有る大人の愛だけれど、セイレーンが和睦の中心に居るであろう事を考えても20代の女の子の可愛いから主に出ている緑や青をサブに持つその仲間を出した時の感覚で素潜りすれば、小蔭ちゃんを守り続けているであろう彼女等との不和も起こりにくそうだね)



シェリナ「状勢について補足をすると、各国の疑心暗鬼の原因は大地や湖から取り込まれているマナ以上に、生成されているオリハルコンの量が多い事です」


 思案する僕の様子を見て、補足を入れてくれるシェリナさん。


聡「そう言う事なんだね。

 ところで、どこかがそんな技術を確立したと考えると、黒幕の国はきっと強いよ」


小蔭「だから、元から強過ぎる東洋怪異の国が一番疑われているの」


聡「事情は分かったよ。

 こちら側の人間で帰還が遅れたり怪我をしても責任を負えるのは僕だけだと思うから、僕は……小蔭ちゃんの国に入るよ」


シェリナ「それが一番ですね♪

 今、一番御主人様の支えが必要なのは小蔭ちゃんですし」


 僕のこう言った判断にも柔和に理解を示してくれるシェリナさんの愛情が有難い。

 とは言え、もしも元々強いとされる東洋怪異が大国なら、覇権でも狙わない限り隠れて練兵していればそんな技術は要らない筈だから、隣の憂いを警戒した魔法生産種族の国。 セイレーンとは思いたくないけれど、やはりその辺りで戦った時に強い国の方が怪しいよね。


(それに、こちらの経験則で考えてもあの一件を知らない向こうの万人に僕とこの子との縁が初めから知られているのは各国を渡り歩く上でそれなりにリスクの有る事だけれど、シェリナさんが育った向こうの民意次第では種族特性としても小柄な筈のこの子と同行していればそうならない可能性も有るからね。


 勿論過去のあの逸話を知っている人達にはその事実を隠し通せないとしても、あの一件は好感の方が大きい筈だし、最後に異世界転移ではあるあるなあの判断をする可能性を考えても向こうの理解は必要でしょう)



 僕がそう思いながら予め決めておいた内容のメールを皆に送り終えると、やはりこの子は不思議そうな顔をした。


小蔭「その荷物の中には、何が入っているの?」


 え、荷物の方を聞くの?

 まあ、電話の様な魔法具は有るみたいだし、姫君の御付きをしているこの子がその辺りに良く気付いても筋は通るか。


聡「これには着替えを入れて来たんだ」


 国力に影響する貿易品を理由に疑心暗鬼になる程一般人が鋭敏でも、一千年間も魔法による戦争をしない程の女性率だと、急拵きゅうごしらえだと可愛いやつしか用意できない可能性も有るからね。

(いくら商人が対岸でも、流石にシスターの出現率は女の子の方が多い訳だし)


シェリナ「随分と、家庭的な御主人様なのですね。

 それでは、再び入口を開きますね」


聡「御願いするよ。 それじゃあシェリナさん、またね」


シェリナ「はい♪」


小蔭「シェリナ様、またねなの♪」


 僕は、ぺこりと御辞儀をした小蔭ちゃんと共に、魔法具と泉の共鳴によって現れた転送陣の方に進んで行く。 この流れだとシェリナさんとは当分の御別れだけれど、向こうでの僕の立回り次第では早くの内に再会できるかも知れない。

 僕は、そう言った緊張を胸に光の中に入って行った。



 湖の物らしい砂浜に足が付いたのを感じると、そこはもう圏外だった。

 こうした以上、ここから先は自分で切り開かないといけない訳だから、持ち込み道具に頼るつもりは元々無いけれど……本当に、ここは異世界なんだね。


 小蔭「小蔭達の世界へ、ようこそなの」


 再びぺこりと御辞儀をしたこの子が可愛くなって僕が髪を撫でてあげると、遠くから……いや、あの速度からしたら中距離からフロート系の魔法具を着けているらしい重厚な赤甲冑の御姉さんが向かって来た。

 この子は姫君の御付きだし、あの装飾は隊長格だろうか。


赤甲冑の女性「御待ちしておりました♪

 慣れない土地と緊張なさらずに、安心して付いて来て下さいね!」


聡「御丁寧に、有難う御座います」


 この人も中々の攻撃力だけれど、格好の割には愛情寄りのメイド長みたいな話し方をする御姉さんだね。

 ともすると、刃渡り1mと思われる脇差の突撃型大剣は魔法盾を考慮したこの世界の一般的な装甲を突破するのに必要不可欠な物なのだろう。

 比較的細身なレイピアや刀が武装として成立しない魔境か。


小蔭「朱雀様すざくさま、よろしくお願いします♪

 それじゃあ、お兄ちゃんもこれを使ってなの!」


 その言葉と共に、移動用の魔法具らしい銀色の円盤を取り出した小蔭ちゃん。

 挨拶の語尾になのが付かなかった上にこの名前……それに、炎の翼の様な移動用の魔法具。 やはり性格以上に強い重役だね。



朱雀「優しい方と聞いておりましたが、私達の様な御兄さんなのですね♪」


 火風の属性と思われる移動用の魔法具で地面すれすれを浮遊しつつ少し先の林に入った頃、言葉を選んでいたらしい彼女がそう切り出した。


聡「東洋は格式の有る御国柄の様ですし、きっとそう言う事ですね」


小蔭「丁寧だし、お姉ちゃんみたいに優しいお兄ちゃんなの♪」


朱雀「まあ、魅力的な御兄さんなのですね♪」


 さっきから、事有るごとにシェリナさんの様に微笑んでいる朱雀さん。


聡「御姉さんだって」


朱雀「えっ……もう、御上手なんですから」


 赤くなって固まってから、何とか照れ隠しをした朱雀さん。

 あの言い方だと、この国には礼儀正しい以上に強さに全振ったお姉さんも多い筈だけれど、こう言う人も居るんだね。


小蔭「お兄ちゃんは、小蔭達のなの」


聡&朱雀「そうだよね、ごめんね&そうですよね、ごめんなさいね」


 二人揃って、柔らかくこの子の髪を撫でた僕達。

 他国からは圧を掛けられそうなスターティングだけれど、冴え先は良さそうだね。



 一時の語らいの後、僕等は武家屋敷の様な日本家屋の立ち並ぶ町並みに到着した訳だけれど、リアルな獣耳に和装という点を除けば、やや長身な中型種は僕等の世界の女性陣と殆ど同じ外見をしているね。

 街中を飛んでいる朱雀さんを見ただけで道を開けてくれる所も含めて。


 朱雀「やっぱり、驚かないんですね」


 聡「向こうも150年位前はこんな感じだったからね」


 東京は西洋風になるのが早かったけれど、築100年以上という言葉が有る事も考えると他の所には武家屋敷に見られる蔵の残っている街とかも有る訳だし。


 それに、この国の中型種もシェリナさんと同じ165cm位だからね。

 それは万能栄養食でも有るのだとしても、何故か女性しか見掛けない大型種は小蔭ちゃんの逆位のサイズ感だね。



聡「それにしても、女性の比率が多いよね」


朱雀「この世界では9割が女性ですし、器用な男性には主に魔法具を作って頂いているのです」


聡「全てが魔力で循環する世界の中では、貴重な男手という事だね」


小蔭「そうなの。 でも、中型種のお姉ちゃんにも器用な人は多いの」


聡「その場合は、器用な以上に魔法の適性が高いと言う事なんじゃないかな。

 これは一般論だけれど、属性値と魔力の相乗効果とかに依存していれば魔力も小柄な小型種や力の大型種よりも、両方を併せ持つ中型種の方が有利な筈だからね」


朱雀「その通りです♪

 貴方がこの子に渡して下さった辞書には魔法は創作上の物と書かれていましたが、書物が好きなのですか?」


聡「そんなに御堅くはないけれど、そう言う事だね。

 ところで、正面に御城が見えて来たけれど、あの橋の前に立っているいかにも位の高そうな方は、どなたですか」


 そうなのだ。

 この距離からでも大型種と分かるその女性は、白無垢と白装束を足して二で割った様な格好で街の方を眺めている。 彼女から見て左側に立っている六角形を意識したデザインの重厚な鎧姿の女性は近衛兵か謁見に際して召集された隊長格か。

 色も黒で得物も重そうな魔道打撃だろうから、完全なる和ではないんだね。


朱雀「彼女がこの国を治める蛇姫様ですが、貴方のために御城の前まで出向いて下さる御方なのですから、そんなに緊張しなくても大丈夫ですからね♪」


小蔭「そうなの♪

 だから小蔭もお兄ちゃんの側室として一緒に隣を歩ける様に御願いしてみるの♪」


朱雀「あらあら♪ 可愛いお嫁さんができて良かったわね♪」


 嬉しいけれど、さぬかメイマックス! 僕はふとそう思った。



第一話の後書き

 「 」の付かない思案及び情景パートの中でも特に考察勢には助かる解説と性質上の齟齬補完を兼ねた部分には( )を付けてみましたが、実は聡さんの再現走って小蔭ちゃんとシェリナさんを足した様な極致が出るんですよね。


 キャラクターは作者の鏡と言う言葉も有りますが、その状況の中で気が合うから恋愛しましたの主張をするならA√でもあのツインテの子ことリダシス平和のサニアちゃんより大人版メイマックスな八話初出のマリアンナさんとの非交戦での恋愛の方が、深夜アニメの女性環境に沿えなくても合いそうですし。



(これについては作者にも辛い話になるけれど、この筆者はあの時のどれかが裁かれる事も望まない位には気持ちの整理が付いたからシスター平和×2メイドの擁護仲介ハイブリらしくお姉さんの様な心持ちで話すと、本人からは出ないながらも王道のA√で意識したその人ファーストのリーダープランや赤伸び武闘の種族補正に等身大を感じる層からしたら100シスター属に平和も乗ったシェリナさんって多分ツッコミ通りの人外なのよ。


 これについてはサニアちゃんが向こうの世界で浮いていた理由が伝わりにくい事にも対応して、こちらの世界の実況では戦闘適性も有るリーダーベースが多数派で、ずっと日本に居た40歳以上女性からは判断速度系ルーンを抜いても黄色70辺りでのシスターベース貫通をまだ見た事が無い事を意識すれば頷けるよね。



 A√の第五話だって小型種が可哀相な事になった時点で試合に勝っても聡さん達にとっては負けな訳だから、本来なら後列にあの子達を立たせた上で守り切って模擬戦には負けたけれど女性として正しさは彼等に有ったとした方が彼女側な聡さんの戦いになった訳だけれど、ツインテールのあの子の「良い模擬戦にしましょうね」の言葉に忠実に勝ちに行ったから敢えての非情に突き抜けた訳だし、十二話のルミナスさんは嫁じゃないから子供達を怖がらせた悪役として制裁された訳だから、あの次の流れを決めると言う意味での決戦をしたプレシア属が守られていたのって結局比較的環境に近いあの子が最初からA√の嫁と決まっていたからなのよね。


 順当に1:1恋愛をしていたら彼はあの子を選ばなかった事はA√考察編のあの子も理解していた時点で、サニアちゃんは国を盤石にするための政略結婚や古典王宮のハーレム構図にも助けられていたし、それなり以上に相性の良い彼とこれだけあの子寄りの導線を通った彼女が異世界への興味込みでも聡さんに好感を抱かないのが妥当に見えてのあの指摘であったとしても、最後の方のサニアちゃんのあの言葉を意識しての攻撃であったにしてもあの精霊界は女性名詞善性で黄色×2貫通みたいな子が殆どな訳だから、それが理由でリーダー型として浮いていたあの子が写本を読んだ筈なこちらの世界の辞書と向こうの世界の辞書とでは民意が全く違う事に勘付いた人なら恋人やセイレーンに配慮したあの言葉もあれはあれで頷ける訳だからそれについてはまあ読者が女性研鑽しなさいと言う話だし、女系ナイトなプレシの強さも写実の赤に突出した人の勇者成分だった時点であの時動いた方々が何かを守ろうとしたのならそこに勇者らしさは感じても、後者の品位はどの道疑われるやつだからこれについても慎みを覚えましょうね。



 ホロライブのピンク色の子やリボンを付けた可愛い子に多いシス旅辺りの優しい娘達に近い人達はさっきからこれのどこにツッコミ入れているのとゾット哲学していると思うけれど、実はあの一件の中核に居た女性思想って割と容易に予測ができて、この話に関してはリーダープランや冒険挑戦と女性環境から見た少数派は除くから、そうなると導線に従わない変化球の番長が実況通りに近代女性に多くなければ赤や紫が上がって群衆心理を含みにくくない思想型と言えばもう裁判官と商人の二択で、その中でも単体で考えた時の賢者とデザインセンスが小蔭ちゃんや黒を着ない時期姫君のシェリナさんに近い層は導線に従ったセーフティーの中でそんな事はしない訳だから、例えその一方が黄色でもその内のかなりの割合が後ろに居た本体だったとはっきり分かるのよ。


 だから彼女等に対してはもっとシスター賢者できても良いんじゃないかなと思う所は多々有るけれど、だからと言って制裁パートが見ていられない昨今の女性主人公と同じ事を思う位なら、私はアニメ化した猫耳のやつのどの道入る制裁パートを恋人のためにした上で裸は見られたけれど彼配慮で許してあげたあの後半みたいな優しみに共感するから、要は不器用でも何となく守りたいと思ってくれる異性を信じている感じでこのサンタコス可愛いでしょみたいな女性的をしてあげられる様な、それが非常に濃くて紫の出ない人もネットアイドルには2/140人居た赤消滅で緑上昇なシスターメイド方面の相互理解が大切なのよ。



 それと、実はあの時点での作者は有名人のなろうライブリアクションで初見だったGギアは知らなかった事も考えると、十二話の聡さんの件は同じ属性つまりシスター平和をし合っていると表現が寄る理論のあるあるな訳だし、最強のスノーホワイトの武装も世相が合って知っていたらこの女性的な恋愛構図の中であの形にはしなかった事を考えてもそれなりにはちゃんとしてる作者のやりたい事をやるB√では、第二話時点でそもそも戦いを起こさせない様にあの小柄な最強種を連れに行く訳だから、登場人物も生きている理論であの子の事もきっと救いたいこの導線の中には筆者も出してるメイマックスやシス和に賢者は多分に居ても前提以上の子供の不幸は起こり得ないと言う含みからも、やっぱりこれの子供を守れる清楚お姉さんや何このゲームシスターしか出ないんだけれどな清純妹向けの誕プレ性質は変わらないと言う話)



 主張が纏まっていればフォローも込みで長文化しても読み易い事や、アクションには動きが恋愛には情景が多い事も含めて御互いに齟齬が大き過ぎる事に加えて、まず事件から始めた様なファーストインパクト狙いも有って丸過ぎて尖って見えるセンスも見せたけれど、これについては実は中身男な作者の方が面白いとなっていれば作戦成功な訳だから、これの人が小蔭ちゃんを再現走した時の結果がシスターメイド106カンスト、平和×2だった事も伝えると、読者層によっては


「×2持ちのさす御主賢者をテイムしておられるや幼女の光完全再現してる」となる事からも意外と大人びた等身大なあの子の歩き方は難しいとしても、70手前で貫通してくれるシスターベースを攻略準拠で予習した上であの子が出さない赤紫ルーンを含まない事は可能でしょうし、順当に大人の愛をできる層からしたら恋人がする事も含むメイドにステキな女性だなと恋愛しても頷けそうな物なので、初見がそれではなかった方々も「そう言うのは女の物だろう」と考えずにまだ見ぬ二週目平和聖職も含めて走って頂きたいものです。

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