旅籠と木賃宿
これは推理とかコータローの仮説としてたけど、旅人は関所に来るじゃない。その時に途中手形が必要かどうかの情報を知るのだけど、
「そこやけど、関所に入ってもたら間に合わへんやん。そやから、そういう情報は関所の手前の宿場で手に入れたと見たい」
なるほど、これから関所に向かう前に事前情報として知る訳か。そこから途中手形を入手するのだけど、
「途中手形を発行するのは宿屋のこともあったそうやねん」
それこそ、はぁ?の世界だ。それってもしかして、
「地域振興になるやんか」
あくまでも推理と仮説としてたけど、関所前の宿場で途中手形が必要と分かっても窓口で手軽に買えるわけじゃないよね。それなりの手続きと手数料を支払って途中手形が出来上がるのを待つしかないのか。そうなると途中手形が手に入るまで、
「その宿場に泊まらざるを得んようになる」
でもそうなると、
「たぶんやけど、途中手形の手数料は関所の役人の懐に入ったんやろ。その代わりに宿場の宿屋は宿泊料で儲けるや」
途中手形の手数料は千円ぐらいだったそうだけど、旅人にしたら千円なら払うだろうし、関所の役人にしたらチリも積もれば山となるよね。世の中はカラクリだらけだよ。必殺仕事人が出てくれないかな。黄門様でも、暴れん坊将軍でも良いけど。
「旅人にとっては少々不便やけど、そこまでボッタクリ料金や無いし、これで殺されたりもあらへんから必殺仕事人に依頼するのもおらんやろ」
加えてみたいな話だけど、江戸時代でも関所によっては途中手形が必要になるかもしれないぐらいの情報は時間とともに広まるから、
「そういうつもりで旅行の日程を組んどってんやろ」
でもさぁ、宿屋に泊まると言っても限界があるじゃない。
「そこやけど、江戸時代の宿屋は相部屋が原則やねん。そやから詰め込めるだけ詰め込んだ方が儲かるねん。それとやけど旅人かって宿屋ってそんなところやって常識もあったはずや」
江戸時代の宿屋って旅籠と木賃宿があったけど、旅籠って今の和風旅館に近いのは近かったそう。畳敷きで、座敷があって、一泊二食付きで風呂もあったぐらいかな。ついでに言えば布団もあって、
「浴衣もあるとこはあったかもしれん」
旅籠もピンキリだったはずだけど、目安としては一泊八千円ぐらいの研究はあるそうなんだ。値段とシステム的には今のビジホより民宿に近い感じがするけど、
「詰め込まれ方は合宿所みたいやけどな」
それと旅籠で出される食事は不味かったと歴史小説とか時代小説に良く出て来るけど、
「あれもようわからんとこがある。もろろん宿場により、旅籠により、宿代によって変わるんやろうけど」
まず夕食は一汁三菜のところが多かったそうだ。ここも庶民の食事は一汁一菜が普通だったそうだから、品数だけで行ったら御馳走になるらしい。
「三菜には焼き魚とか煮魚が出ることが多かったそうやけど・・・」
これも庶民の食事からすれば魚が出るだけで御馳走の感覚だったのか。
「味については食べた人の主観やからな」
もちろん旅籠によっても変わるだろうし、その日の食材によっても変わるだろうな。今でも同じだけど、不味いところと美味しいところがあるだろ。一概に旅籠の食事が不味かったとは言えないかもね。じゃあ、木賃宿はどうだったの?
「あれもようわからんところが幾らでもあるけど、今やったらライハに近いんちゃうか」
木賃宿は自炊宿ってよく書いてあるし、自炊のための薪代プラスアルファぐらいで泊まれたとなってるのよね。その代わりじゃないけど、囲炉裏を囲んで雑魚寝で板間だし、寝具だってなかったのか。
「ライハに近いんやけど、今と違うのは近所にスーパーどころかコンビニもあらへんし、ファミレスもファストフードのチェーン店かってあらへんねん」
なるほど! 今のように食事をどこかで済ませて泊まれないし、コンビニ弁当を買い込むのも出来ないよね。そもそも自炊のための食材だって、
「米や味噌を背負って旅なんか出来へんやんか」
たとえば江戸からお伊勢参りに行くだけの食材なんか背負わされたら歩けないよ。なるほど、自炊宿って言うけど、どこかで食材を調達しないと出来ないのか。
「それだけやないで。炊事施設かって人数分があるわけないやろ。たぶんやけど米を炊く用の竈と囲炉裏で鍋料理ぐらいしか出来へんはずや」
そ、そうなると思う。その時の薪代が木賃宿の由来だろうけど、米や味噌、さらに他の食材はどこから調達したかになるよね。
「この辺は木賃宿でも変わってんやろうけど・・・」
一つは出入りの商人がいたと考えるのか。その商人から米や味噌を買って自炊していたぐらいって言うけど、
「その時かって、居合わせた客が出したゼニ出して、共同で作ったぐらいやと思うんや。客も懐事情が様々やろうから・・・」
米だけ食べられた人から、鍋も食べられた人もいたかもか。他には、
「宿に頼んでたはあるんちゃうか。宿代とは別に食事代を取るパターンや」
これまた食事代に応じて米の飯だけ食べられた人から、鍋も食べられた人もいるぐらいとか。その囲炉裏の鍋料理だけど、
「料金次第はあったやろうけど、木賃宿に泊まるような連中やさかい・・・」
味噌仕立てで、大根とか白菜が入っている程度か。
「それでも木賃宿なら千円か二千円程度で泊まれたらしいで」
そこまでして旅に出たいかと言われそうだけど、物見遊山じゃなくて行商人なら経費節約のために利用したんだろうな。そうなると物見遊山目的の人の方がリッチだったのか。
「そりゃ、そうやろ。今でもそうやんか。伊勢参りかって今と位置づけがちゃうで。そやな。一生に一度の世界一周旅行みたいな感覚やったと思うで」
そ、そうなるよね。そのために旅行費用を積み立てるのだもの。泊まるのだって旅籠を想定してるだろうし、
「それと徒歩やから着替えはあらへんかってん。水戸黄門かっていっつも同じ衣装やろ。あれは当時もそうやってん」
なるほど、当時の旅人の荷物と言えば振り分け荷物ぐらいのはず。あんな竹籠の中に着替えまで入るはずがないもの。そうなると、
「臭かったと思うで。もっとも庶民かって毎日風呂に入ってたわけやないからな。その辺はお互い様過ぎて気になれへんかったんかもしれん」
千草はやだな。今の時代に生まれて良かったよ。
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