冷淡男子の上條くんは全振り初カノにご執心

７

「初めまして、廉と朝陽の幼馴染の津田 虎太郎です。白修館高校に通ってます」

　野生的な見た目とは違い、礼儀正しい虎太郎。

　武道は、『礼に始まり礼に終わる』という礼儀が大切だからだ。

「初めまして、小森 まどかと言います。上條くんと藤宮くんとは同じクラスです」

「へぇ～、クラスメイトなんだ」

「はい。先ほどは助けて頂き、ありがとうございました」

「俺は何にもしてないけどね～」

　虎太郎と社交辞令のような挨拶をする小森。

　そんな小森を虎太郎は無神経にも舐め回すように見回している。

「お前、見すぎ」

「あっ、……ごめんね～？」

　虎太郎の視線を遮るように前に立った廉。

　白いＴシャツにショートパンツを合わせた恰好の小森は、すらりとした綺麗な脚が男の目を奪うのは歴然だ。

　今まで物や人に執着したことがない俺が気になっている存在だからと、虎太郎は小森が気になって仕方がないのだろう。

「この後、どうしようか。廉、まどかちゃんを送ってくだろ？」

「えっ、あの、大丈夫ですっ！買い物の途中だったので、私はこれで」

　慌ててぺこりと頭を下げた小森。

　朝陽の言葉の意味が分からない、俺。

　そんな俺らを見据え、虎太郎は朝陽の肩に手を回した。

「まどかちゃん、1人で買い物してると、また変な男に狙われちゃうから、廉を連れとくといいよ？」

「へ？……あ、本当に大丈夫ですっ」

「廉もそう思うでしょ」

　朝陽と虎太郎が気を利かせてくれたのは明らか。

　偶然でもばったり会えたことが嬉しくて、このチャンスを逃したくないと俺は思った。

「小森、俺がいたら買い物できないのか？」

「へ？……そんなことないけど」

「じゃあ、決まりな」

「まどかちゃん、廉のことヨロシクね～♪」

「まどかちゃん、またね～」

「……あ、はい」

　朝陽と虎太郎が手を振りながら去ってゆく。

「じゃあ、俺らも行こうか」