「あ……」

「ん?……どうした?」


 ぶらぶらと3人で買い物をしていたら、突然虎太郎の足が止まった。


「女の子が男に絡まれてる」

「え、どこ……?」


 動体視力のいい虎太郎の視線の先に、廉と朝陽は男2人組に絡まれる女子を発見。


「え?」

「あっ……」

「廉」

「朝陽と虎太、悪い、加勢して」

「へ?」

「OK♪虎太、廉の天使ちゃんだよ、あの子」

「えっ、マジ?!」

「行くぞ」

「おぅ」


 朝陽と虎太郎を両脇に抱え、廉は男2人組の元へと。


「薄汚ねぇ手で触んな」


 廉はまどかの腕を掴む男の耳元に呟いた。


「ッ!?……誰、お前」

「その子の彼氏♪」


 物凄い勢いで振り返った男に、朝陽が廉を指差す。


「は?」

「上條くんっ」

「え、マジなの?」

「お兄さん、手離した方がいいですよ?こいつらキレたら、マジで手に負えないんで」

「っ……」


 廉の隣りにいる虎太郎は、挑発するように指をポキポキと鳴らす。

 その図体は3人の中では異質なもので、白いTシャツを着ててもはっきりと分かるくらい肩や腕、胸の筋肉が盛り上がっている。


「離せって言ってんのが聞こえねぇのか?」


 廉の眼が鋭利な目つきに変わり、眉間に深いしわが刻まれている。


「ごめんごめん、うちら急用を思い出したから」


 パッとまどかの手が離された。

 すかさずその腕を廉が掴むと、男2人組が尻尾を巻いて逃げて行く。


「怪我は?」

「……大丈夫」

「1人?長瀬は?」

「和香は用があって、今日はいないの」

「そっか」


 強張っていたまどかの表情が、廉に腕を掴まれ、漸く柔らかなものへと変わった。

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