「マジで?」

「おぅ、来年のオリンピックに向けて、強化選手に選ばれた」

「すげぇな」

「出場の内定貰ったわけじゃないけどな」

「いやいや、強化選手に選ばれるだけでもすげぇだろ」


 虎太郎は先月行われた空手のアジア大会で準優勝、昨年行われた世界選手権でも3位だったこともあり、オリンピック代表強化選手に選ばれたようだ。


「で、2人は最近どう?何か変わった事とかは?」

「俺は相変わらずかな」

「俺も」

「そっかぁ」

「いや、廉は違うだろ」

「あ?」

「虎太、ビックリするぞ?」

「何なに?」

「廉、好きな子できたから」

「え、マジ?」

「あ、別にちげぇよ」

「あー、まだ認めない気なんだ?」

「マジでそんなんじゃねぇから」

「おっ、廉が言い返してるっ!」


 朝陽の言葉に喰いついて来た虎太郎が、廉の顔を覗き込む。


「お前、うぜぇぞ」

「その顔じゃ、朝陽の言ってること、ホントなんだ」

「っ……、うっせぇな、じろじろ見んな」

「うっわぁー!廉でもそんな顔すんだな」

「お前、マジウザい。むさ苦しいのは見た目だけにしとけ」


  朝陽はツッコミにしてもジョークを飛ばすにしても、やんわりと仕掛けて来るが、虎太郎は冗談が通じない分、常にストレートに態度に示して来る。

 表裏がなくて接し易いのはあるが、ある意味鬱陶しい感じが否めない。


「で?……どんな子?」

「しつけぇ」


 しつこく顔を覗き込まれ、虎太郎の顔面を掴んで朝陽の方に無理やり向ける。


「結構美人で、スタイルはいいし、頭もよくて、頑張り屋の子」

「おぉぉぉっ、何だよそのフルスペックな条件。もう告ったのか?」

「するわけねぇだろ」

「なんだよっ、つまんねぇな」

「虎太、お前、マジぶん殴るぞ」

「やれるもんなら、やってみろよ」


 カモーンと言わんばかりに、かかって来いよとファイティングポーズを取る虎太郎。

 そんな虎太郎に廉は冷視線を向ける。

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