登校後、親友の和香と雑談していると、教室の後ろのドアからクラスメイトが声を掛けて来た。


「小森さ~ん、生徒会の人が呼んでるよ~」

「あっ、はーいっ。和香、ごめんっ、打ち合わせだと思う。ちょっと行って来るね」

「いってら~」


 まどかは呼びに来た生徒会の人と、生徒会室へと向かった。

 生徒会室に入ると、歓迎会で催される出し物担当の人が既に集まっていた。


「小森さん、歓迎会が始まる前にステージ脇に来てね」

「はい、分かりました」

「これが最終の流れだから。じゃあ、後はよろしく」


 生徒会長の水城からプログラムの用紙を受け取る。まどかの順番は6番目だ。

 水城は、担当者にテキパキと指示を出している。いつ見てもカッコいい。

女性なのに堂々とリーダーシップが取れていて、まどかが密かに憧れている人物である。

 容姿端麗で頭脳明晰。全国模試でも常に上位だと噂に聞く。

 何事にも全力投球で頑張っているけれど、水城先輩のように完璧にはこなせない。

 視線の先に捉えた水城先輩が、眩しいほどにいきいきと輝いて見えた。


 生徒会室を後にしたまどかは、SHRに遅れないように急いで教室へと向かう。

 一段飛ばしで階段を駆け上がっていると、チャイムが鳴ってしまった。


 自分の教室に辿り着いたまどか。

 教室の後ろのドアがほんの少しだけ開いていて、そこに手を滑り込ませドアを開こうとした、その時。バンッと勢いよくドアが閉まり、まどかの右手が挟まってしまった。


「痛っ」

「あ、ごめんっ、……大丈夫?」

「……ん、大丈夫」


 廊下側の一番後ろの席の江藤えとう 邦明くにあきが、申し訳なさそうにまどかの顔を覗き込む。


 ジンジンと痛む指先。あまりの痛さに目元に薄っすらと涙が滲む。

 男の子の力で勢いよく閉められたドアに挟まれたわけだから、結構な衝撃だ。

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