第33話:姫がマイルドな女になってる。

姫が拳銃で撃たれて以来、大学からの帰りはブッダーが付き添っていてくれた。


まあ、ある意味コスプレしたゴスロリ女と、奇妙な仏像の仮面を被ったやつは

目立ちすぎるから・・・姫とブッダーの周り、半径5メートル内に民衆は誰も

近寄らなかった。

そんな日々が平和に続いて、はや一週間・・・なんつうか姫にささやかながら

変化が現れ始めた・・・ささやかでもないんだけど。


やっぱり姫は変だ。


今朝のことだよ。


いつものように姫が二階から降りてきたんだ。

俺は自分の目を疑ったね。

なんといつもパンツしか履いてない姫が・・・パジャマなんか着てるじゃん。


「え?・・・うそだろ」


で、おまけに俺に挨拶したんだ・・・いつもはブスッとして挨拶ひとつ

したことないのに・・・機嫌悪いくせに。


「ツッキーおはよう」


「お・・・おはよう・・・」

「え?おはよう?・・・」

「姫・・・へんなウイルスに感染してないか?」


「何言ってるの・・・・ウイルスになんか感染してないから」


「お前の方が何言ってるんだよ」


「姫・・・おかしいよ、おまえ・・・」


「おかしくないよ・・・変なツッキー」


やっぱり、おかしいだろ・・・姫は変わった。


ある日、姫が大学から帰るって時刻に、ブッダーから用事ができたのでツッキー殿、姫のことをお願いするでござるって連絡が入ったので俺は今、姫と最寄りの駅にいるんだけど・・・。


ちょうど下校時間・・・ついこの前まで姫が通ってた付属高校の新入生の

女子たちがホームで賑やかに騒いでいた。


「お〜新入生か?・・・キャピキャピだな・・・」

「いいな、初々しくて・・・」


「ツッキーダメだよ・・・よそ見しちゃ」


「なに?・・・新入生の子達がちょっと目に入っただけだよ」


「私だけ、見てて・・・」


「たってさ・・・普通に道歩いてたって女性なんて普通に目に入るだろ・・・

いちいち目をふせて歩いてたら変だし、危ないじゃん」

「つうかさ、少しくらいの目の保養、許せよ」


「ヤだ・・・」


「ヤだって・・・はっきり言うね」


「どうせ、俺が浮き気心出したら、殺すって言うんだろ?」


「なに、言ってるの・・・殺すなんてそんな怖いこと・・・」

「ツッキーがもし浮気なんかしちゃったら、私、死んじゃうからね」


「は?・・・なに言ってるんの?」

「俺、浮気しても殺されないの?」


「殺したりなんかしないよ・・・そんな言葉,クチに出すだけでも怖いよ・・・」


「やっぱり、あれだな・・・頭打たれてからおまえ、おかしくなってきてるな」


「なにが?」

「私、普通だよ」


「普通じゃねんよ・・・違和感ありありだわ」


「今朝だって、朝、目があったら、俺に向かって「おはよう」って言った

んだぞ・・・おはようって・・・普段、ろくに挨拶もしなかったくせにさ。

しかも、いつも朝はブスッとしてるくせに・・・」


「それに、二階から降りてきた時も、ちゃんとパジャマ着てただろ、いつも

パンツしか履いてないのに・・・」

「笑顔でおはよう〜なんて言うから部屋の中がパーっと明るくなったわ」


「だって・・・挨拶も身だしなみも礼儀でしょ・・・それに自分の彼氏のに

挨拶して、なんでダメなの?・・・」


「やっぱりおかしくなってきてるよな、おまえ」


「おかしくなんかないです」


「い〜や・・・絶対おかしい・・・調子狂うよ・・・」

「どうなっちゃってるんだよ」

「絶対、あのホームでも銃撃事件のせだよ・・・」


まあ、前みたいに暴力的で猟奇的な姫を見てるとハラハラする時もあったけどな。

マイルドになって、いいのかなって思う反面も逆にもの足りない気もする。

姫は天使になっちゃったのかな・・・。

そう思って俺は姫と家に帰ってからブッダーを呼んで相談してみた。


「あのさ・・・姫って普通って言うか、以前と違って正常な女になってないか?」


「まあ、治ってはいるでござるが一度は脳に損傷を受けてるでござあるからな」

「現にそれがしの星でも、頭に衝撃を受けたり怪我を受けたりしていきなり人格が

変わるポルトボヌールもいるでござるが・・・」


「それだよ・・・ボルトボヌールって?」

「ボルトボヌールは我々異星人の方んとの名称でござる」


「まあ、最初の頃より出来が悪くなったんなら余計問題だけどな、今はマイルド

な姫になってるから、まだいいけど・・・」


つづく。


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