第2話

 凌雅のいない二度目のクリスマスは、寒波襲来と言われていた。東京は雪の予報だった。

 イルミネーションと空を舞う雪が、恋人たちの聖夜を演出するのだろうか。


 今年も『メリークリスマス』のメッセージと共に凌雅から送られてきたのは、大きなツリーの画像だった。

『風邪ひかないようにね』とメッセージを添えて、沙紀は真っ赤に色付いたポインセチアの画像を送り返した。


 凌雅に会いたい。


 言ってしまえば、彼を困らせてしまうのだろうか。




 三度目のクリスマスは、沙紀の方から凌雅にメールを送った。


『メリークリスマス』


 メッセージと共に、真っ赤なポインセチアの画像を添えて。

 送ったメールはすぐに既読がついたが、凌雅から返信があったのは、数十分後だった。


 お決まりのメッセージと共に、今年も大きなツリーの画像。


 ソファーに腰掛けていた沙紀は不意に立ち上がり、窓から夕焼け空を眺める。

 凌雅は、わざわざこの為にそこへ向かったのだろうか。


 送られてきたのは、夕日に染まるツリーの画像だった。


 一年に一度、たった数文字と画像のやりとりだけだったが、繋がっていることに安堵して、沙紀の頬を涙が伝った。




 そうしてまた一年が過ぎ、今年もまたポインセチアが花屋に並ぶ。

 赤と緑のコントラストが美しい。

 真っ赤な苞にはゴールドのラメが散りばめられていて、より一層華やいで見える。


 FMから流れる曲に、沙紀はふと耳を傾けた。



 ポインセチアを送ろう

 大好きな君に……



 凌雅の声だった。


 あの時まだ書きかけだった歌詞にメロディーがついて。

 甘く切なく響く凌雅の歌声。


 曲を最後まで聞き終え、俯いて店を出た――途端に沙紀の瞳から涙が零れた。


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