22 空を飛ぶ
飛翔魔法を唱える。
まだ得意ではないから詠唱の省略は出来ない。
Vel’dras nu’mor, il’kara syll’dari. Thal’ven ethereal—『Skyris』
2分ばかり上昇する
地面が遥か下に見え
足元には何もない
重力が
引き戻そうとするのを
明確に感じながら
俺は
さらに高く舞い上がる
「修羅、上昇するならもっと体を絞れ。空気の抵抗を減らせ」
神威の声が頭に響くが、返事をする余裕もない。
重力が俺を大地へ引き戻そうとする力と、前へ進むための自力とのせめぎ合いだ。
風が顔を打つ
その圧力は
地上にいる時の
何倍も強い
手足を使って方向を調整するたび、全身に掛かる負荷が増していく。
まるで地球そのものが…俺を叩き落そうと爪を伸ばしているかのようだ。
俺はさらに力を込め
風を切り裂きながら
前進する
急激に方向を変えるたびに、体が横に引っ張られる感覚が強烈に襲いかかる。
腹の底が引き剥がされるような感覚が広がり、骨が軋む音さえ聞こえる気がした。
だが、それでも俺は止まらない。
高度がさらに増していく。
空の色がわずかに薄くなり、雲が足元に流れ去る。
風の音が低くなり、体の外に流れる空気の圧力を全身で感じる。
だが、重力は消えたわけじゃない。
むしろ、一層俺の体を下へ引っ張る力を強めている。
「修羅、この高さだと一瞬の油断が致命傷になる、消耗の度合いも考えろ」
「わかってる!けど、この感覚たまらない」
急降下する。
一瞬
体が
浮き上がり
心臓が
喉元に跳ね上がるような
感覚が襲う
地面が猛烈な勢いで迫ってくるが
俺は恐怖よりも
全身を駆け抜ける快感を
感じていた
戦いと似ている。
常に下へ、終わりへ引きずり込もうとする。
それを振り切るたび、俺の中に熱が湧き上がる。
地面すれすれで速度を落とし、再び急上昇する。
足元に広がる大地が遠ざかり、今度はまた空が俺を包む。
体が引き裂かれそうになる感覚と、それを超えて進む快感が混ざり合い、思わず笑みがこぼれた。
全力で空を駆ける
地上を忘れる瞬間の中
風の音と重力の重みだけが
俺を
この星に繋ぎ止めている
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新たな戦いに向かう途中、足元にひび割れた石の感触が広がる。
荒れ果てた廃墟の町、かつて栄華を誇ったであろうその場所が今は無機質に静まり返っていた。
まるで時間がここで止まっているかのような、息を呑むほどの静寂が周囲を包み込む。
「ここは……」足を止めた俺の目の前に広がるのは巨大な都市の廃墟。
石畳がひび割れ、倒壊した建物が時折ゴツゴツとした影を投げかける。
その一部は崩れ落ち、周囲の風景に溶け込んでいる。
神威の声が霊刃を通じて伝わる。
「お主、この地には魔物の痕跡が残っておる。無数の戦闘の跡だ。慎重に進め」
その言葉が耳に届いても、俺はすぐに冷静になることができなかった。
新たな獲物に向かう興奮が止まらない。
この場所に潜んでいるであろう魔物の気配に胸が高鳴り、ただひたすらに戦いへの衝動が湧き上がる。
踏み込むたびに、廃墟の石が響く音が耳に届く。
徐々に、足元に散らばる破片が視界に入ってきた。
だが、それ以上に目を引くのは、広がる死の空気だ。
どこか、息苦しさを感じるほどに重い。
その瞬間、神威が警戒の声を上げた「気をつけろ何か動いてる」
その言葉が終わると同時に、俺は視界の隅で動きを見逃さなかった。
建物の影から、蠢く何かが現れる。冷徹な目を光らせ、すぐにその魔物が何であるかを察知する。
「来るか……」
突然、地面が揺れ、背後からひときわ大きな足音が響く。
石畳がひび割れ、その隙間から、次第に異形の軍団が現れる。
魔物たちは一つ一つ異なる姿で、無表情にこちらを見据えている。
神威の冷徹な声が響く。「ハイエン、異形の軍団を操る支配者だ。」
俺は霊刃を引き抜き、深い息を吐いた。
目の前に広がる軍団に、冷徹な瞳を向ける。
だが、相手が何であれ、戦闘本能が胸を焦がす。
倒さなければならない、ここで終わらせなければ。
「決めるぞ」
その言葉と共に、俺は足元を蹴り、ハイエンの軍団へと向かって突っ込んだ。
霊刃を一閃
黒炎が
暗闇の中を切り裂き
魔物の分身が
次々と消えていく
だが、すぐにまた新たな影が現れ、軍団はまるで尽きることなく生み出されてくる。
強烈な戦闘が続く中で、次々に出現する影に対応するのは簡単ではない。
「修羅、影の本体を見極めろ」神威の声が冷静に響く。
俺は冷静さを取り戻し、周囲の動きを観察しながら、軍団に潜む本体を探し出す。
やがて俺はその本体を見抜く。
その動きは微妙に…他の影とは異なっていた。
「そこか」霊刃を握り直し、俺は目の前に現れたハイエンに向けて一歩踏み込んだ。
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