元勇者は戦闘狂、目立つと面倒だから透明になって無双狩り、妖刀魔石を携え狩りまくる!!

魔石収集家

1 元勇者は戦闘狂

森の中は冷たい静寂に包まれていた。

風すら止み、木々が微動だにしない。

しかし、その静けさの中に異様な気配が漂っている。


巨大な鳥型の魔物――サンダーフェニックスが、雷光を纏い空を旋回していた。

その翼が空気を裂くたび、稲妻が周囲の木々を焼き尽くし、森の一帯を支配している。

威圧感は確かに強い。だが、それは俺の狩りを阻む理由にはならない。


右手の霊刃をゆっくりと握り直し、その動きを観察する。

奴の旋回には規則性があり、攻撃を準備するために雷光を溜めるタイミングが明確だ。

だが、その動きの中に隠れた隙もまた見逃せない。

翼を広げ、雷を纏うその瞬間――そこが狩りの好機だ。


「派手な獲物だな、悪くない」

右手のブレスレットが微かに脈動する。

その力が霊刃に流れ込み、黒炎が刃先を覆う。

その熱と力強さが手に伝わるたび、心が狩りへの興奮で満たされていく。


音もなく地面を蹴り、木々の間を滑るように移動する。

視界の中に映るのは獲物のみ。

奴はまだ俺の存在に気づいていない。

空中で旋回しながら雷光を蓄え、次の一撃を放つ準備をしている。


跳躍の瞬間が訪れた。

木の枝を足場にしながらさらに高く飛び上がる。

霊刃を逆手に構え、奴の左翼を狙う一閃――刃が空を裂き、黒炎を纏った鋭い軌道が奴に向かう。


刃が硬い羽根を削る感触が腕に伝わる。

同時に黒炎がその一部を焼き尽くし、奴の動きを鈍らせていく。

サンダーフェニックスが激しい咆哮を上げ、空中でバランスを崩した。

だが、それでも完全には墜ちない。

奴の翼が衝撃波を生み出し、周囲の空間を震わせた。


その余波が空中の俺を弾き飛ばし、木々の間へ投げ出された。

体勢を崩しながらも木の幹を掴み、無事に着地する。

左翼を負傷した影響で奴の動きは明らかに鈍くなっているが、依然として強烈な雷光を纏っている。

地面を抉るような稲妻が放たれ、俺の位置を正確に狙ってきた。


雷撃の軌道を読み、一気に横へ跳んでかわす。

しかし、稲妻の余波が肩をかすり、全身に軽い痺れが走った。

「この威力か……一発もらったら厄介だな」

だが、この程度の痛みはむしろ狩りの快感を強めるスパイスに過ぎない。


距離を詰めるべく再び地面を蹴り、低い弧を描きながら奴の懐に飛び込む。

右手のブレスレットがさらに強く脈動し、霊刃が黒炎の激しい渦を巻く。

雷光が途切れるその一瞬を見逃さず、刃を突き立てた。


刃が奴の胸元を深々と貫き、黒炎がその核に届いた瞬間、全てが静寂に包まれる。

サンダーフェニックスが全身を震わせ、雷光が完全に消える。

巨体がゆっくりと崩れ落ち、地面に叩きつけられた。

その姿は黒い灰となり、風に溶けていく。


地面に残された魔石が淡く輝きを放っている。

それを拾い上げた瞬間、心身が満たされる感覚が全身を駆け巡る。

身体が研ぎ澄まされ、力が湧き上がる――討伐の度に感じる、この感覚がたまらない。


「また少し強くなったか」

手に宿る確かな力の実感が、次の狩りへの期待をさらに高める。

新たなスキルが得られたことを本能的に理解する。

ブレスレットに宿る魔石の脈動が、獲得した力の大きさを物語っていた。


霊刃を静かに収め、魔石を袋にしまう。

風が再び木々を揺らし、森に静けさが戻る中、自然と足が次の狩り場へと向かっていた。


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