【挿話】異能訓練
ある日のこと。
私は
「異能の使い方を教えて欲しいです」
「異能を……?」
「はい。私は、己のチカラを、自在に扱えるようになりたいんです」
私は三つの異能を持つ。
どれも強力なチカラだ。
でも……十分に扱えてるとはいえない。
けど、あれ以降、あまりうまく使えていないのである。
「アタシが教えるのはかまいませんが……お嬢様は、どうして異能を使えるようになりたいんです? アタシらでは、チカラ不足ですか……?」
不安そうに、
自分たちがチカラ不足だから、自衛のために力を付けたい……そう思われてしまったのだろう。
勘違いさせてしまったようだ。
「違うんです。私は……早く一条の家の人間に、なりたいんです」
「と、いいますと……?」
「私……こっちに来て、一条家の皆さんに、お世話になりっぱなしです。何も……返せていない。私も……少しでも皆さんの力になりたい。皆さんと……同じになりたいんです」
朱乃さんは得心いったようにうなずく。
「お嬢様のお気持ちは、理解しました。ありがとうございます。アタシも、皆もうれしいです。ね、皆」
ふすまが開き、黒服女子のみなさんが、うんうん、とうなずく。
き、聞かれていた……恥ずかしい……。
「とはいえ、寄生型能力者であるアタシらに、異能の使い方をって言われても……うまく教えられる自信ないですね」
寄生型能力者は、その強大な力をもつがゆえに、制御できないという欠陥をかかえていらっしゃった。
「制御のコツというより、使い方のコツをしりたいんです」
「うーん……」
「どうしたんです?」
「いや、ですね。異能はアタシらにとって、生まれてすぐあったもの。どう使うか教えて欲しいと言われても……教えるのは難しいです。歩き方を教えろとか、手の動かし方を口で説明しろ、と同義なので」
なるほど……。
異能者にとって異能はあってあたりまえのものだから、言語化が難しいと。
「陰陽塾に通うのも手ですね」
「おんみょー……じゅく?」
「はい。妖魔や異能者と戦うモノを育成する、まあ、学校です。通称、異能学校」
「異能学校! そんなところが……」
それがあるなら、是非、行ってみたい。
「あー、でも陰陽塾の入学式は4月なんですよ。入るとしたら来春からですかね」
「そっか……」
今は11月下旬、まもなく12月になるというところ。
陰陽塾に通うとしても、まだ四ヶ月も先のこと……。
「その間は、自己流で鍛えるしかないですね」
「ですね……。アタシは言葉にするの苦手だし、
「真紅郎さんに?」
「はい。兄さんも寄生型ですが、能力のコントロールはできていた、希有な存在なので」
曰く、通常の寄生型能力者は、能力を暴走させていた結果、異業になっていた。
でも真紅郎さんが包帯グルグルまきだったのは、【吸血鬼】の特製を引き継いでいたがゆえにだったらしい。
「というか、それこそサトル様に異能の使い方を請えば、喜んで教えてくださるのではないですか?」
「そ、それは……そうでしょうが……」
なんだか、言うのが恥ずかしかった。
子供っぽいって思われるのは、ちょっと、いやだ。
「ははん。なるほどぉ……異能を練習して、サトル様に褒めてもらいたいんですねぇ~」
う……。バレてしまっていた。
「乙女ですねぇ~」
「うう……秘密ですよ?」
「わかってますって。んじゃ、兄さんとこいきましょうっ」
朱乃さんに連れられ、真紅郎さんのところへと向かう。
黒服さんたちも、この一条の家に住んでいる。
私やサトル様とちがって、一人一部屋ではなく、相部屋だそうだ。
真紅郎さんは蒼次郎君と相部屋だった。
「あ、レイちゃーん!」
蒼次郎くんがぴょんっ、と抱きついてくる。私は彼を抱っこする。
年下の弟みたいで、蒼次郎君、可愛くて好きなのだ。
「おや、どうしました、お嬢様?」
「レイちゃんもコイコイする?」
「こ……?」
畳の上では、お札が置いてあった。
「子供の遊びです。蒼次郎に付き合ってたんです」
「なるほど……」
お札には可愛らしい絵が書いてある。
「レイちゃんもやろやろっ。ルール教えるからさっ」
「うん。後でね。今日は……真紅郎さんに用事があってきたの」
真紅郎さんが目を丸くしながら言う。
「
「はい。異能の使い方を教えて欲しいんです」
「それはとても殊勝な心がけですね。このような素晴らしい方が家長になってくださり、私もうれしい限りです」
「あ、ありがとうございます……」
前のように、恐縮したり、私なんか……とは自然と思わないようになっていた。
だってそうやって自分を下げることで、私に期待してくださってる、一条の家の人たちの思いまでも、踏みにじることになるから。
「本格的な異能戦闘訓練は、陰陽塾でならうのがいいでしょう。今は、基礎的な霊力コントロールを覚えるべきです」
「れいりょく……コントロール……ですか」
「ええ。異能の扱いを、簡単に説明しますと……」
真紅郎さんが和紙の上で、達筆な字でこう書いた。
【霊力→体内妖魔→異能発現】
「このように、霊力を体内の妖魔に渡すことで、異能を発動させるのです。異能をスムーズに扱うためには、霊力を自在に動かせるようにならねばなりません」
なるほど、非常に勉強になるな。
今まで自分は、無意識に、異能を発動させていた。でも発動にはこういうメカニズムが、ちゃんと存在していたらしい。
「霊力のコントロールは、どうすれば身につくのですか」
「訓練あるのみですね。まずは、霊力の流れを感じ取ることから。お嬢様」
「はい」
「私の肌に直接手をふれてください」
「は、はひ……?」
肌に……触れる?
お、男の方の肌にっ?
「レイちゃん何照れてるのぉ?」
「サトル様と散々いちゃついてるのにねー」
とからかってくる、
「ちょ、直接肌を触れることは、したことなかったので……」
「やましい意味はありません。霊力の流れを直に触れて貰おうとおもっただけです」
「わ、わかりました……」
で、でも……霊力を上手く扱えるようになりたいし……。
よ。よしっ。
「お願いします」
「はい、では……」
真紅郎さんがシャツのボタンを全て外す。
シャツの合間から、真紅郎さんの、鍛え上げられた肉体が覗く。
……サトル様もそうだけど、異能者のかたって、体を鍛えてる気がする(
「し、失礼します……」
「はい。では、私の丹田……へその上に手でふれてください」
「は、はひ……」
どうしても、顔が熱くなる。男の方の素肌に触れるなんて……。
ぴたり、と私は真紅郎さんのお腹に触れる。
「では……霊力を流します」
最初は……わからなかった。
でも……徐々に、熱いものがうごめいている感覚が……伝わってくる。
「この、熱い……血の流れみたな、これですね」
「!? もう……感覚を掴んだのですか?」
「? はい。なんとなく……」
おー……と
「すげえやレイちゃん。おいら、まだ霊力コントロール苦手で、能力不発になるときあるもん」
「そ、そうなんだ……」
今ので、なんとなく掴んだ。よし……これなら……。
と、そのときだった。
ガラッ。
「「「「あ……」」」」
……状況を、説明しよう。
半裸の真紅郎さんに、触れている……私。
そんなところにやってきた、サトル様……!?
「あ、あの……」
「レイ」
サトル様が近づいてきて、がしっ、と私の手を掴む。
「俺以外の男に、触れないで欲しいっ」
「えっと……」
「俺ならいくらでも触れて良いからっ!」
「あの……」
「欲求不満なら俺が付き合うから!」
「ちちちち、違います誤解です!」
どうやら私が、欲求不満から、し、真紅郎さまを襲ったと思ったようだっ。
「違いますよ! なんて勘違いしてるんですかっ!」
「違うのか?」
「そうですよっ」
「ではどうして真紅郎を裸にむいてるのだ?」
「いいかたっ! それは……」
まさかコソ練していたとは言えないし……。
「やはり……やましいことしていたんだっ! 俺はこんなにレイのことが好きなのにっ!」
「わ、私だってサトル様のこと好きです!」
「ほんとかっ?」
「はいっ!」
「そうか……!」
ぎゅーっ、とサトル様が私を強く抱きしめる。
「レイ、俺はおまえを離さないぞ! 誰にも渡さないし、誰にも触れて欲しくない!」
そんな様子を見て、蒼次郎君があきれたように言う。
「にいちゃんなんだか、子供っぽくなってなーい?」
「というより、昔に戻った感じがしますね。昔のサトル様は、もっとわがままで、甘えたがりな、クソガキ……もとい、悪童だったのですよ」
その後私を手放したくないサトル様に、一日中ぎゅーっとされ続けたのだった。
恥ずかしかったけど、でも……うれしかった。
サトル様が私のことを、深く愛してくださってるのが伝わってきたからだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【★お知らせ】
第一章完結からしばらく経ったある日、僕は久しぶりに作者ページを開きました。
そして、驚きました。
こんなにたくさんの方から、続けてほしいというコメントが来たこと、そして、たくさんのポイント&ブクマに!!!
これはもう、書くしかない!
期待に応えないと!
ということで、
第二章、書くことにしました!!!
本当に多くの方に、応援していただけました。
ありがとうございます!
毎日投稿でヘトヘトだった僕の心が、皆様のポイントや応援のおかげで、とても癒されました。
これならまだ、書ける!
ということで、第二章は、明日、【12/25(水)】の夕方18:00からリスタートします!!!
これからも執筆頑張りますので、
お願いがあります!
「続き待ってたー!!
「第二章楽しみ!」
と思っていただけましたら、
【ブックマークへの登録】
【画面下↓の【☆☆☆☆☆】からのポイント評価】
以上をして、応援してくださるととても嬉しいです!
★の数は皆さんの判断ですが、
★5をつけてもらえるとモチベがめちゃくちゃあがって、
最高の応援になります!
図々しいお願いになり、大変恐縮ですが、なにとぞ!
ご協力よろしくお願いいたします!
広告の下↓あたりに【☆☆☆☆☆】欄があります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます