いたいけなほしくず
砂生
一章 セプティマとポステマ
プロローグ 記憶の天秤
あおい空に、うんと手をのばす。
ゆびのあいだから、空をみる。
ちいさい、ぼくの手。
いつか、ポステマみたいになるのかな?
セプティマ、5歳。
「セプティマ、どうしました?」
「あ、ポステア。あのね、みて!」
まかれる、水。
とびちる、しずく。
「みてみて、ほら!」
ゆびさしたさきには、にじ。
「虹、ですね」
「きれいでしょ!」
「……そうですね。綺麗ですね」
「おみず。むだにしちゃった?」
「いいですよ。綺麗なものを見せていただきました」
笑い合う、二人。
「おやすみなさい」
ベッドに入って、明かりを消して部屋を出るポステマを見送るセプティマ。
ふと、セプティマが窓の外を見上げると
一面の、星。
「きれい」
そこに流れる光。
「きれ……」
細く流れる光に、言葉を失うセプティマ。
「あした、ポステアにおしえてあげなきゃ」
いつもと変わらない毎日。
いつもと変わらないポステア。
終りなんて言葉も知らないセプティマ。
「あ」
小さな不注意で、ざっくりとポステアの腕についた傷。
「きゃー!たいへんなの!いたい?だいじょうぶ?」
ゆるゆるの包帯。
なんの治療にもなっちゃいない。
セプティマ、七歳。
「治らないね」
ポステアの腕を見て、セプティマが言う。
「そうですね。治らないですね」
セプティマ、十七歳。
セプティマは、屋根に登って星空を見上げた。
下から、細く走る光。
涙が、溢れた。
「傷、治ったんだね」
ポステアの腕を見て、セプティマが言う。
ポステアは何も答えない。
今日は、セプティマにお嫁さんがやって来る。
変わらない毎日。
変わらなかった毎日。
届かなかった言葉。
届けたかった言葉。
届かない、言葉。
「お休みなさい」
いつもの、声。
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