神にでもなってやる!!
むぎ茶
第一章 水ノ国編
第1話 異世界へ
俺は神が嫌いだ。
なぜ、そう思うのか?
俺、『
いや、だったの方が正しい。
別に自分の家庭は裕福でもないし、俺が何かに秀でていた訳でもない。
でも俺はそれでも十分に幸せだった。
家族と一緒にご飯を食べたり、時々お出かけをしたり、時には怒られたり。
けどそれで俺は十分だった。
それ以上何も望まなかった。
なのに、神様はそんな俺を許さなかった。
俺が小学5年生のときに、父が交通事故で死んだのだ。
父はいつも通りの安全運転をしていたらしい。
しかし、横から信号無視をしたトラックと衝突。
父は衝突の衝撃によって外に投げ飛ばされ、頭を強く打ち、即死亡。
その当事者のトラックの運転手も一時は意識を取り戻したが、悪化し死亡。
その時の母の顔を今でも覚えてる。
絶望と、誰にも当たることも出来ない苦しみ、そして自身の無力さを含んだ顔を。
俺も死亡したと聞かされた時は何も思考できなかった。
考えたくもなかった。
俺はとっくに『死』を理解していた。
それが不運にも俺の心を抉ったのだ。
俺は泣いた、一日中泣いた。
妹はまだ小学一年生とまだ『死』というものを完全には理解していなかった。
だから俺よりも幸運だったかもしれない。
けれど、母は強かった。
グズグズするのをやめ、仕事を探し働き始めた。
母が1番辛いはずだろうに。俺達には
「お母さんがいるからね、大丈夫だよ。2人は何も心配しないで好きなように生きなさい」って何回も言ってくれた。
俺はそんな母がすごくかっこよく見えた。
母みたいな人になろうって、何回も思った。
けど、神様は容赦なく俺たちを陥れる。
生活が安定してきた4年後⋯
突然妹が
小学校からの帰り道で、友達と別れたのを最後に突然いなくなったらしい。
すぐに警察による捜索が始まったが見つかることは無かった。
母はその時についに壊れてしまった。
限界がきてしまった。
娘という生きる希望をも消えたのだから。
その時から今までの2年間、母はいわゆる植物状態に似た状態になっている。
喋ることもなくなった。
今は病院で入院しているが、原因は不明で回復する見込みは無いのだそう。
そして俺は今、高校生だ。大学に進もうと思っていたが、お金の出処がない以上働くしか無かった。
今は祖父母からお金の援助をしてもらっているがこれ以上負担させる訳にはいけない。
もちろん学びたいことが沢山あったが、どうしようも無かった。
この時、俺は悟った。神は俺をとことん潰したいようだなって。
俺が何かしたか?人でも殺したか?
いや、何もしていない。
ただ幸せに過ごしたかった。
なんで、なんで俺ばかりにこんな目にあうんだ...!
特別なものなどいらなかった、なんでそれでも神は俺から全てを奪うんだ!!!
俺はこの世界に失望した。
だから俺はもうこんな世界から出て行ってやる。そう決めた⋯
そうして、今、俺はビルの屋上にいる。
「こんな世界なんておさらばだ」
俺は柵の上に立つ。
だけど、俺の足が震えていた。
これは足場が悪いとかじゃない、本当は怖いんだ。
死ぬのが。
『まだ母さんは生きている。それをほって逝くのか?』
と第二の俺が俺に投げかけてくる。
そんなの分かってる、分かってるよ⋯。
俺は少しの間悩むが、その言葉に押し負けてやっぱり戻ろうと柵から降りようとする。
が、運悪く俺は足を滑らせ、空に堕ちた。
あぁ、ここでも俺は神から見捨てられたんだな、と感じた。
なにも出来ずに落ちてゆく。
ごめんなさい、母さん。
母さんを1人にしてしまう⋯。
俺は後悔する。けどもう遅い。
そして、ゆっくりと俺の意識は暗転した。
・
・
・
この時の俺には知る由もないが、俺は地面と衝突などしていなかった。
歩いていた周りの人々は驚愕する。突然落ちてきた人が地面と衝突する直前に
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