第12話 

 昔々、魔法の森の奥深くに、不思議な旅人が住んでいました。その名は田所浩二。どこから来たのか誰も知らず、彼自身も


「なんでここにいるかわからないんだよね」


 と口癖のように言うのでした。


 ある日、森の精霊たちが浩二の家を訪ねてきました。


「田所さん、大変だよ! 森の真ん中にある魔法の泉が、何者かに呪われてしまったんだ!」


 浩二は眉をひそめ、


「まずうちさぁ、魔法の森あんだけど……焼いてかない?」

 

 と、とんちんかんな返事をしました。しかし精霊たちは真剣です。


「冗談言ってる場合じゃないよ! 泉が枯れたら、森中の魔法が消えてしまうんだ!」


 これを聞いた浩二は


「やべぇよ、やべぇよ……」


 と額に汗を浮かべながらも、やる気を出しました。


「ま、まぁ落ち着けよ。とりあえず行ってみっか。俺もこの森で暮らしてるからには、無視できないっしょ!」


 精霊たちとともに森の奥へ進むと、呪われた泉は紫色の霧に包まれ、不気味な音を立てていました。近づくと、霧の中から謎の魔法使いが現れました。


「フフフ……この泉の魔力をいただくことで、私は世界を支配するのだ!」


浩二はその場で一歩踏み出し、「やりますねぇ!」と謎の魔法使いを挑発しました。


 魔法使いは困惑した様子でしたが、すぐに杖を振り上げ、呪文を唱え始めました。しかし浩二は慌てる様子もなく、「あぁ、じゃあ次は俺の番な」とポケットから謎の石を取り出しました。その石は森で拾ったもので、特に意味もなさそうだったのですが、なぜかキラリと光りました。


 その光が魔法使いを直撃すると、「なんだこの光は!? こんなの聞いてないぞ!」と叫びながら霧とともに消え去りました。


 精霊たちは驚きつつも大喜び。


「田所さん、すごいよ!魔法使いを追い払ったんだね!」


 浩二はドヤ顔で「いやぁ、俺にかかればこんなもんよ。まぁ、こういうのはノリと勢いだからさ」と言いましたが、内心は「これマジでなんだったんだ……」と困惑していました。


 泉は再び清らかな水を湛え、森の魔法も元通りに戻りました。その後も田所浩二は魔法の森でのんびり暮らし、時々「いい旅だったなぁ」と呟きながら、森の平和を守る存在として精霊たちに慕われました。


 そして、彼の名はいつしか「森の奇妙な英雄」として語り継がれることになったのでした。

 ……それマジ?


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