第8話 聖女様はダンスも上手?
「冒険者の憩いのレストラン「カル・デ・サック」にようこそいらっしゃいました」
食事を食べ終えてギラギラジュースを飲んでいると、カフェの奥に設置されているステージ上で放浪のジュース職人ウララちゃんのコスプレをしているお姉さんがマイクを使ってアナウンスを始めた。
「いつもは街に現れない私が今日、このお店に来たのはもちろん私の至極のジュースであるギラギラジュースを皆さんに飲んでもらうためです」
なにやらイベントが始まるようだ。俺としてはウララちゃんのコスプレの完成度の高さと店員のお姉さんがなかなか綺麗なのでテンションが上がる。
「でも、ただ飲んでもらうだけじゃつまらないのでギラギラジュースを飲みたいというお客さんはこちらのステージで私と一緒に飲んだら思わずやってしまうギラギラダンスをやってもらいます」
なるほど、こういうプチイベントをして盛り上げるってわけだ。
「そして、一番上手く踊れたお客さんには、私が各地を放浪して見つけたこのレアアイテム〝世界の理〟をプレゼントします!」
ウララちゃんが世界の理のシリアルコードが書かれたカードを高らかに掲げた。
「マジかよ」
俺以外にもお客さんたちからは驚きの声が聞こえる。
コラボカフェの入場特典が〝世界の理の欠片〟なのに対して、ウララちゃんが持っているのは、その欠片を集めて生成される〝世界の理〟の方だ。レア度が全然違う。
「丹下君、これは参加するしかないよ」
「でも、俺は最後の変顔はできてもその前の踊りの部分はできないんだけど……」
「そうなの!? 二人で参加すれば優勝できる確率が上がると思ったのに」
二人って綿矢さんは参加する気満々なのか。
「綿矢さん、あの踊りできるの?」
「えっーーと、ちょっとは。私、ダンスの授業もそれなりに得意だから」
俺の言っている〝あの踊りできるの〟は踊りの振りができるのかってことじゃない。振りよりもジュースが不味いことを前面に押し出したしょっぱい顔、コントのようなコミカルな動き、途中でやるオエーというお酒を飲み過ぎた人のような演技、そして、最後に気を失ったかのような変顔ができるのかってことだ。
どれをとっても女子高生が公衆の面前でやりたがらないようなものだ。
「さあ、参加したい方はこちらのステージまでどうぞ」
レアアイテムに釣られてか、すでに五人ほどのお客さんが席を立ちステージへと向かっている。
「それじゃあ、行ってくるね。私の変顔見ても笑わないでよ」
「それ、ある意味すごく難しかも」
俺の返事に対して綿矢さんはニッと笑って、
「笑ったら、丹下君にいたずらされたってクラスで泣いて訴えるから」
「マジで俺の人生詰むからやめて。正座で拝見させていただきます」
他の参加者に遅れないようにステージへ向かう綿矢さん。
その後ろ姿は何故だか自信があるかのように見えた。
― ― ― ― ―
今日も読んでいただきありがとうございます。
カクヨムコンのランキングが発表になり、本作がプロ作家部門12位となりました。
鬼の住処のような部門でこれだけ健闘できているのは皆様のおかげです。
皆様の力でさらに本作を盛り上げていただきたいと思いますので、
皆様の応援が何よりの活力でございます。よろしくお願いします。
次回更新予定は12月8日AM6:00です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます