テーマ:太陽の下で
あったけえなあ。
カフェの窓際でミルクティーを飲みながら、太陽の恩恵に感謝する。
気候変動の影響か、冬一歩手前のはずなのに、
極端な暖かさになったり、いきなり冷え込んだり、
躁鬱病のようなアップダウンを日々繰り返しており、
本日の気温を確かめず、うっかり薄いパーカーで街に繰り出し、
寒さに耐えかねてカフェに避難した。
ガラスに外気を遮断され空調が程よく温めてくれる空間で、
ぬくぬくと日差しを浴びる。
ああ、ありがたい。ガラスを量産できるようにしてくれた人達ありがとう。
あんたらは儲けのためだったかもしれないけど、
おかげで凍えずに日向ぼっこができる。
自分、中世に生まれてたら死んでたわ。
ミルクティーに砂糖を追加する。
甘い。
自分のような貧民一歩手前の労働者でも甘味の恩恵に預かれるなんて恵まれてる。
自分、ここにいたら、死ぬ。
昨日見たゲーム実況の中世世界と、
それを眺めて中世世界の貧しさや汚さに
引いていたことを思い出しながら、ぼんやりと外を見る。
空は綺麗に晴れており、
乱れた寒暖差のせいか赤くなるタイミングに
悩んだかのような微妙な色の街路樹が並んでいる。
綺麗な赤でもなく、黄色でもなく、枯れて茶にもなってない微妙な色だ。
それでもそれなりに不自然に見えないから自然は偉い。
ゲームの中は綺麗な紅葉だった。
イチョウ並木は黄色く染まり、紅葉は赤い。
人が見て8割が美しいと思う景色が
完璧な設計でそこにあり、それは綺麗だと感じた。
ゲームは楽だ。実況を見るのはもっと楽だ。
見てるだけで進んでいくし、安全な場所で汚かったり危険だったりするところに行ける。
現実はそうじゃない。
少し間違えただけで死にそうに寒いし、
期待通りの紅葉は見られない。
でもまあ悪くない。
お日様はぬくいし、ミルクティーは甘い。
薄着で死にそうになってた体はガラスと空調で守られてる。
自分、アウトドアしたら死ぬかもしれん。
小学校のキャンプ以降自然というものに触れる機会もないまま大人になり、情報の海の中で生きているのに
うっかり薄着で外に出て死にそうになる人間に、
準備してても死ぬような自然の厳しさは向いてない。
自然の厳しさを知らないまま生きている。
見積もりが甘くても生きていける。
そのことをありがてえと思いながら、ここを出たらグレイのコートを買おうと決めていた。
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