怪獣

学生作家志望

かさぶた

指をさされたら痛い。笑顔を見せられても痛い。


汚いといわれた数だけみんなを信じることができなくなっていった。


僕は怪獣。でも体はおっきくない、並んだら僕がいつも先頭だから。僕が怪獣って言われているのは僕の肌のせいだ。


僕の肌が汚れてるから、怪獣っていう名前がつけられた。


体中が痒くて、まだ朝ご飯もない暗い夜の中に僕は放り投げられるようにして飛び起きてしまう。深い眠りも心地がいい夢も全部僕の体が邪魔をした。


お父さんやお母さんに気付かれないようにベッドを降りて、洗面所に向かった。


そこには皮膚科の先生からもらった白い薬が置いてあった。青いキャップを数回まわして外したら、薬の中に指を入れて取り出した。


薬はべたりと指にくっついて簡単に離れない、洗っても洗っても洗っても取れない。それだけこの薬の効き目はすごいってことかなと思いながら腕いっぱいのかさぶたに触れてみた。


やっぱりかさぶたにはくっつかない、塗れているのかもわからない、全部指に絡まって意味がないような気もしてきた。


だめだ、かゆい、痒い、かゆい。。


「あ。」


これをして、白い薬がまとわりついて離れようとしなかった。さっきまでまったくくっつかなかった薬が溢れ出てくる血と膿にまざって僕の肌に付着した。


また掻いた。この薬はかゆくなる前に塗るもので、今みたいに突然痒くなった場合の対応はできない。


わかってたから耐えられない。どうやったって我慢のしようがない痒み。


僕の足下には埃とかさぶたがぼろぼろと、ごみの山みたいに落ちていた。


僕は怪獣。腕からにじみ出てくる血と、べたべたする薄い茶色をまとった膿をティッシュで拭きながら、1時間、2時間と夜を過ごした。


僕は怪獣、血だらけになってしまったこの体で学校に行く。


お願いだから、もう誰も僕を見ないで。知らないふりをして。


化け物のように見ないで。

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怪獣 学生作家志望 @kokoa555

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