ハイディス・シヴィンズ
皐月飴朔
第1話 目覚め①
小鳥のさえずり。木々の葉が優しい風に吹かれ、さわさわと音をたてている。その葉から差し込むおひさまの光で瞼の裏が赤く染まって、ゆっくり息をするたびに心地の良い木と土の匂いやってくる。
なんて幸せなんだろうか。夏樹はゆっくりと目を開けた。
そうして周りを見渡すとそこは大きな木の上で、その木から伸びる全ての枝は蔓のように長く、渦巻かれて皿のようになっていて、葉が生茂っている。
「あれ、ここどこだ?俺何してたんだっけな」
夏樹は呟いて、自分の体の周りに目をやると革のリュックと、1つの地図があった。その地図はどうやらこの辺りを指しているようであった。
「ああ、俺は共鳴の儀を受けに来たんだった。ここが気持ちが良すぎてうっかり寝ちゃったみたいだな。さて、目的の神の祠へ向かいますか。」
夏樹は木の上から軽やかに飛び降りた。そうして夏樹は地図の印の指すほうへと歩き出した。
少し歩くと、そこには一人の少女が立っている。少女は真白なワンピースに色鮮やかな花の髪飾りを頭に着けている。
「君、こんなところで何をしているんだい?」
少女は、黒く透き通った瞳でじっと夏樹を見つめながら答える。
「待ってるの。助けてくれるひとを。」
夏樹は聞き返す。
「何があったの?」
「この先に私の村があるの。村にはみんなが大切にしている大きな祠があるんだけどね、一週間前に村にやってきた人たちが祠は自分たちのものだから手を出すなって言って、村に番犬用の怪物を置いていったの。それで、村のみんなが困ってるの。」
少女は不安そうな顔で話した。
「祠って神の祠かい?」
「知ってるの?」
「知ってるさ。俺はそれを探しに来たんだから。」
夏樹は笑顔で答えた。
「じゃあ、あなたはシーカーってこと?」
少女は訝しげそうな顔をした。
「そうだよ。」
「村に来た悪い奴らもシーカーだったけど、あなたも悪い人なんですか?」
もし俺が悪い奴でも、悪い奴らに悪い奴かと聞いても意味ないよなと思いながら夏樹は笑って言う。
「全てのシーカーが悪い奴らってわけじゃないよ?そんな奴らと一緒にしないでほしいな。」
そして、少女の目をしっかり見た。
「ねえ、俺を村に案内してくれない?俺が怪物を片付けて、悪い奴じゃないって証明するからさ。」
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夏樹は少女に案内されて森を歩いていく。森は緑鮮やかでとても美しく、通りすがりに見つけた赤い木の実を二つもぎ取って少女に一つ渡した。
「ありがとう。」
少女の表情は固い。
「そうだ。俺は月山夏樹。15歳。君の名前を聞いてもいい?」
「私は雪音。15歳です。」
少女は無表情のままで答えた。
「そか、雪音か素敵な名前だね。」
夏樹は少しうつむいて固く微笑んで言った。
「ねえ、警戒されるのもわかるけどさ、そんなに冷たくならないでよ、、せっかく案内してくれてるなら楽しくおしゃべりしようよ。」
「ごめんなさい。私はまだあなたを信用出来ないんです。でも、あなたが言ったことが本当なら、村が救われるから。。」
「そっか。じゃあ、村を救って俺が信頼できるって証明できたら話そうね。」
「はい。。それと、もう着きます。」
夏樹と雪音が歩く先のほうの森がひらけてきた。
そこには美しく整備された村が見える。
村の中央の方に大きな塔がみえる。その根本にはなにやら異様な影が見えた。
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