家族の為に嫁いだのですが…いつの間にか旦那様に溺愛されていました
@karamimi
第1話 崖っぷちです
「ファレソン伯爵、いい加減に借金を返してくれるか?来週までにお金を準備できなければ、貴族裁判にかけるかなら」
「貴族裁判だなんて…頼む、もう少しだけ待ってくれ。お金なら何とか働いて返すから…」
「うるさい!ただ…俺とお前の仲だ。そうだな、お前の娘を俺に差し出すのだったら、貴族裁判だけは勘弁してやろう。お前の娘は、アンリに瓜二つだからな…」
「アンネリアをだと?バカ言え!アンネリアはまだ16歳だぞ。倍以上歳の離れたお前になんて、やれるわけがない」
「それなら、没落して一家共々平民になるかだな。よく考えたら、今の生活も平民と変わらないか。使用人すらいないのだからな」
ゲラゲラと下品な笑いを浮かべながら、去っていく男。
「あなた!」
「お父様」
お母様と一緒に、急いでお父様の元へと駆け寄る。
「アンリ、アンネリア。すまない、私に力がないばかりに…」
悲しそうに微笑むお父様。
「あなた、何をおっしゃっているの?そもそもあの男が卑劣な手を使って、我が伯爵家の領地に被害を与えたのでしょう?その上、あの手この手で私たちを悪者に仕立て上げて…本当に見ているだけで、虫唾が走るわ」
「確かにあいつのせいで、我が家は今、没落寸前だ。でも…それは私の力不足でもある。私がもっと、上手く立ち振る舞えれば、こんな事にはならなかったのだよ…あんな男に借金をする事もなかった。全て私の責任だ。結局私は君だけでなく、家族すら守れなかった…」
お父様がポロポロと涙を流している。なぜか我が家は、アッグレム伯爵から執拗までの嫌がらせを受けているのだ。運悪く疫病が流行ったタイミングで、悪党どもを領地に送りこみ、治安を悪化させた。ただでさえ疫病で苦しんでいる民たちは、悪党どもに財産を奪われてしまったのだ。お父様も悪党どもを追い出そうとしたり、疫病をなんとか落ち着かせようとしたのだが、力及ばず…
我が領地は、壊滅的な被害が出てしまった。その結果、税収を得るどころか、借金をして領地を立て直す必要が出てしまったのだ。
ただでさえ領地立て直しで大変な状況に陥った我が家に、追い打ちをかける様にお父様の評判を落とし、貴族世界から孤立させたあの男。
もちろんお父様も黙っておらず、激しく抗議をしたが、証拠がなかったため、ただの言いがかりと言う事になったのだ。アッグレム伯爵のせいで、どんどん孤立し貧乏になった我が家。そんな我が家だが、領民を助けるために、アッグレム伯爵から多額の借金をしている。
というのも、評判がた落ちの我が家にお金を貸してくれるのは、アッグレム伯爵くらいしかおらず、泣く泣く借りる羽目になったのだ。
そもそも、どうしてアッグレム伯爵がここまで我が家に嫌がらせをするのかというと、昔アッグレム伯爵とお父様が、お母様をめぐって争っていたらしい。結局お母様は、お父様の選んだのだが…
それが気に食わなかったらしく、そこからずっと嫌がらせをしているらしい。よほどお母様の事が好きだったのだろう。未だに独身を貫いているアッグレム伯爵は、自分の全人生をかけて、我が家に嫌がらせをしているらしい。
そんな彼の嫌がらせのせいで、我が家は今、没落寸前なのだ。
「お父様、そんな悲しい事を言わないで下さい。そうですわ、私がアッグレム伯爵の元に嫁げば、借金は取り消していただけるのですよね?それに私が嫁げば、きっともう、我が家に嫌がらせをしてくることはないでしょう」
「アンネリアを、あの男に嫁がせるですって?そんな事は絶対にさせないわ。あなた、今でも伯爵家とは思えない程ひもじい生活をしているのですもの。このまま伯爵の地位を返上して、平民になりましょう。私はあなたとアンネリア、アランがいればそれで十分幸せですわ」
「だが、せっかくアランが、この家を建て直そうと今、必死に勉強をしているのだ。それなのに、アランの気持ちを無下には出来ない」
「僕なら平気です、父上。姉上をあんな男に売るくらいなら、皆で平民になりましょう」
ふと扉の方を向くと、弟のアランが悲しそうな顔をして立っていたのだ。アランは非常に優秀で、まだ12歳だというのに、必死に伯爵家を立て直そうと、勉学に励んでいるのだ。そんなアランを家族は見ている為、何とか伯爵家を残せないかと考えたいたのだ。
「そんな…あなたは今、寝る間も惜しんで必死にお勉強をしているじゃない。それに、落ちてしまった我が家の評判も今、必死に回復しようとしているのに…私は平気よ。お父様、お母様、私が伯爵の元に嫁ぎます」
「何をバカな事を言っているの?あんな卑劣な男にあなたを嫁がせるくらいなら、私があの男に嫁ぐわ」
「母上や姉上を犠牲にしてまで、僕はこの家を守りたいとは思いません。父上、皆で平民になりましょう」
皆が思い思いに気持ちをぶつける。
「皆、落ち着いてくれ。とにかくまだ返済期間まで、少し時間がある。何か良い方法がないか、考えて…」
その時だった。
「お取込み中のところ、申し訳ございません。私、ビュッファン侯爵家の執事をしております、ガウンと申します。何度もお声がけをさせていただいたのですが、呼びかけに応答されませんでしたので、失礼かとは思いましたが、勝手に入らせていただきました」
私達の目の前に現れたのは、立派なスーツを着た男性だ。
「ビュッファン侯爵家の執事ですって?どうしてビュッファン侯爵家の人間が、我が家に?」
~あとがき~
新連載始めました。
よろしくお願いしますm(__)m
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