第11話 水樹は怒り直美は反省し真矢は彼氏を

 保健室では、二人の生徒が居た。


 優しい温もりを感じる。優しい手で不安を取り除いてくれる。そんな温もりを感じる。


 「っは」


 夢から覚めたように、斗真は息を吐きながら目を覚ます。

 夢で感じていた、温もりはやはり本当だった。


 俺はベットで横になっているのだが、何故か横に座っている真矢先輩がいる。

 そんな、真矢先輩は何故か俺の頭を撫でている。


 どういう状況? 頭に何か巻かれている感覚を感じる。そうだ、あの時頭を打って倒れたんだ。


 斗真は真矢に目を向ける。


 真矢は、ただ、斗真の頭を撫でる。


 えーと、真矢先輩はなんで俺の頭を撫でているんだ? 不思議に思いがらも斗真は声を出さず、真矢を見つめ続ける。


「大丈夫?」


 優しく頭を撫でながらつぶやく真矢。まだ、真矢の手は斗真の頭を撫でている。

「めっちゃ大丈夫です!」



 うん、今この状況で大丈夫にならない奴なんて居ないと思いますが?! 世界一の美人に頭を撫でられて大丈夫にならない奴なんて居ない。いるはずがない。


 てか、本当にこの状況は何? 斗真は考えながら真矢を見つめる。


 やはり、真矢先輩は可愛い。目元も綺麗で本当に非の打ち所がない。


「それより、そのーなんで真矢先輩がここに?」


「心配だったから」


 心配って。心まで優しいのか真矢先輩はそれならもう、天使以外の何物でもないな。


「なんか、ありがとうございます」


「別に大丈夫だよ」


 真矢は頭を優しく撫で続ける。


「じゃあ」


 真矢は斗真の耳元に顔を近付ける。


 近い、鼻息が耳に当たる。


「彼氏になる?」


 まさか、俺は弟から進化したのか? って、彼氏?????

 これは神様の悪戯か? いや、真矢先輩は本気で言っているのか? 否、絶対にない。


「えーと、俺は――」


 その時、勢いよくドアが開く。


「斗真――」


 水樹は声を荒げながら保健室に入ってくる。


 おい、今青春しようとしていたのに、コイツに破壊されたぞ? 保険はあるのか?


「お、死んでないじゃん」


 こいつ、お見舞いとか絶対に向いていないタイプだぞ。普通怪我した友達に「死んでないじゃん」といえるのか? ありない。


「仕事あるから後でね」


 真矢はそう言い、立ち上がる。


 そして、真矢は保健室を出る。


 水樹は、目を細め真矢の背中を見つめる。


「可愛い」


 水樹はつい独り言が漏れてしまう。そして、ベットに横になっている斗真に視線を戻す。


「斗真って、モテるんだ」


 椅子に座りながら水樹はつぶやく。


「モテるって言葉を辞書で調べてこい」


 斗真は視線を天井に向けて言う。


「私と、真矢先輩の対応違くない!?」


「それは、そうでしょ」


「うわー、差別だ」


「はいはい」


「ほら、態度全く違うじゃん」


 真矢は頬を膨らませる。


 確かに、態度を人によって変えるのって駄目だな。


「ごめん」


 俺は素直に謝り、頭を下げる。


「べ、別に」


 何故か照れている水樹に斗真は思わず笑ってしまう。


「照れているの可愛いじゃん」


 あれ、俺何言ってるんだ? この雰囲気だからつい口走ってしまった。


「ちょ、私を狙っているの?」


 水樹は自分の両手で体を隠す仕草をする。


 狙ってねーよ。なんで出逢って数週間で好きになるんだよ。


「狙ってないよ」


「狙ってるね、絶対に狙ってるよ!?」


 なんだよその言い方、まるで狙ってくださいみたいな言い方やめろよ。


「それより、どうしてここに?」


 この不毛な話を変えるため、俺は違う話をする。


「あ、そうそう」


 水樹は真剣な表情をする。


「直美が見つからないんだ」


「え?」


「斗真が教室で倒れているのを発見したのは私と真矢先輩と先生だったのね」


「うん」


「でね、その教室には倒れている斗真と拓馬と直美が居たの、で、先生が二人に待つように指示したんだけど、次の瞬間直美が走って逃げたんだよね」


「そうだったのか」


「でね、いくら学校を探しても直美が見つからないの」


「なるほど、分かったよ」


「でも、水樹はどうして学校に居たんだ?」


「あー、運動」


「へ?」


「? 普通に運動」



 水樹は学校をジムだと勘違いしているのか? まぁ、水樹だしな。


「斗真今焦ってないの? それに怒ってないの?」


「うーん、焦ってはないなし、怒ってもないかな」


「なんで?」


「なんでって、それは、直美は逃げないから」


「え?」


 その時、走ってる足音聞こえてくる。


 斗真は安心した顔を浮かべる。


「斗真」


 ドアの前に立ち、息を荒げている直美に視線を向ける。


 斗真は安心して顔だったが、水樹は違く怒っていた。


「あんた、逃げたのによくここに来たね」


「それは」


「言い訳なんてないでしょ」


 水樹は直美を追い詰めるように言う。


「水樹やめろ」


 斗真は水樹に言う。


 けど、水樹は斗真の声を無視して言い続ける。


「逃げたのに――」


「水樹」


 斗真の声が保健室を包む。


 水樹は我に返ったように体をぴくっと動く。


「ちゃんと、みんなの話を聞こう」


 俺は二人の顔を交互に見る。


「そうね」


 水樹は不貞腐れた様子で頷く。


 直美は何も言えない表情でただ俺を見る。


「ごめんなさい」


 直美は一切悪くないのに頭を深く下げる。


 そして、直美は重い足で保健室に入る。


 直美は近くの椅子に座る。


 そして、俺たち三人は話し始める。

 

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