愛のない夜のために
一ノ瀬 薫
ここからどこかへ
ずいぶん遠いいところに
来てしまった。
今までこんなに離れ離れで
俺は自分を眺めた事は無い
しかし
それはたぶん俺をどうやって
殺してやろうかという算段がつかなかったからだ。
毎日背広を着るのは
それが仕事だからでほかにすることは無い。
デスクは書類の山だが
俺にはどうでもいい事だ。
責任はその窓から見える雲のようなもの
あるにはあるが眺めるくらいの事だ。
新聞を読みながらそんな時間を過ごす。
ここは
あの世に行くためのインターチェンジみたいなもの
地下鉄も
バーも
クラブも
ささやかな風景のようなもの
そこにずっといるわけには行かない
もちろん
会社にしたってそうなのだ。
ここからどこかへ
俺はいつ走り出すのだろう。
うまい具合に走れるだろうか
長い道のりでもなかったが
曇り空が今日も覆っている
行く先はなくて
いつかどこかへゆくのだ
誰も知らないところへ
そこでは
思い出せなかったあの歌が
歌えるようになるのか。
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