忘れられし龍と少女

@HANAMIHANATABA

第1話

 ああ、なんて悲劇だ。自分がもたらした平和によって、あろうことか、その国に住む人間は、「自分たちが正しい」、と思いはじめた。その思い込みによって、人間同士の戦争を始めた。

これは、龍にとっては、ひどい誤算でもあり、悲劇でもあった。

そして、龍は、そんな人間たちに落胆して、遠い遥かなる地で、眠りについた。

何年。何十年。何百年と、龍は、眠りについていた。

そして、一人の少女と出会う。

「んっ・・・・貴様誰だ」

龍は、問う。

「いや、あなたの眠りを邪魔するつもりは、なかったの。でも、どうして、そんなところにいるのかなって?」

龍の目に映ったのは、ピンクの髪に綺麗な瞳をした人間の女性だった。

「人間よ。余は、この地で深い眠りについた。ただそれだけだ」

「そう。ならよかった。もしかして、迷子かと思って」

あまりの予想外の反応に、龍は、笑ってしまった。

「わっはっはっ、貴様、余が迷子だと?余は、龍神王国を守ってきた龍であるぞ」

「そうね」

ピンクの髪の綺麗な瞳をした女性も、笑っていた。

「さて、貴様の名前を聞いておこう。名は何という?」

「リンよ」

リンという少女が名を言った瞬間だった。

「がっあ・・・・」

龍が驚き、咄嗟に治癒魔法を発動した。

「がっ・・・・あああ。私?」

「矢か」

狙っていたのは、ゴブリンの群れだった。ゴブリンは、個体の強さは、人間に負けるが、集団となっては別だった。

「死ね」

だがそれも、神に等しき力を持つ龍の前には、意味がなかった。

「魔法陣展開。発動。パーフェクトダークネス」

漆黒の炎が、魔法陣から繰り出される。

「ぎゃあああああ」

漆黒の炎が、ゴブリンの集団を骨すら焼き尽くす。そして、漆黒の炎は、燃料になるものさえあれば、なんでも燃やし尽くす。

「・・・・さて」

リンを背中に乗せて、龍が、空に羽ばたく。なぜ、リンを助けたのかは、龍には、わからない。

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