第18話 「ギャップ萌えと黒塚先輩の一面」

昼休み、校庭のベンチで。秋の陽射しが心地よく降り注ぐ中、黒塚先輩と座白君がのんびりと座っていた。ふと、黒塚先輩が口を開く。




「ねえ、座白君」


「……なんですか」


「ギャップ萌えって、知ってる?」




唐突な話題に、座白は少しだけ目を細めた。


「……まあ、聞いたことはありますけど。普段のイメージと違う一面を見て惹かれる、みたいなやつですよね」


「そうそう。例えば、普段クールな人が動物に優しくしてるとか」




黒塚は楽しげに微笑みながら、さらに問いかける。


「座白君は、そういうのに弱い?」


「……あまり意識したことはないですね」


「ふうん。じゃあ、もし私にギャップがあったら?」




その言葉に、座白は一瞬考え込む。そして、軽く肩をすくめながら答えた。


「……先輩の場合、あんまりギャップを感じるイメージが湧きませんけど」


「え? どうして?」


「だって、普段から自由すぎて、何を見ても驚かない気がするので」




黒塚はその答えに少しだけ目を丸くしたが、すぐにくすくすと笑い始めた。


「ふふ、たしかに言われてみればそうかも。でも、意外とあるかもしれないわよ」


「例えば?」


「そうね……お料理が得意とか?」




黒塚のさらりと言った言葉に、座白は少し眉をひそめた。


「……先輩が料理をしている姿は、確かにイメージしづらいですね」


「ひどいわね。でも、作れるのよ? 特にスイーツとか」




その言葉に、座白は少しだけ驚いた表情を見せた。


「……スイーツですか」


「そう。クッキーとかケーキとか。意外と本格的に作れるのよ」




黒塚は得意げに微笑む。その表情を見て、座白はほんの少しだけ感心したように頷く。


「……それが本当なら、確かに少し意外かもしれません」


「ふふ、でしょ?」




黒塚は嬉しそうに足を組み替え、校庭の空を見上げる。


「でもね、座白君。ギャップって作ろうとして作るものじゃないのよ」


「……自然に出るものだってことですか」


「そう。だから、私が座白君のギャップを見つけたら、ちゃんと教えてあげるわね」




座白は少しだけ肩をすくめながら答える。


「……別に教えなくてもいいですけど」


「だめ。見つけたら必ず言うわ」




黒塚の言葉には、どこかいたずらっぽい響きがあった。座白は軽くため息をつきながらも、どこか楽しげな表情で空を見上げた。




「……本当に、自由すぎる人ですね」




秋の風が二人の間を静かに吹き抜けていく中、穏やかな時間が流れていた。

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