第37話 どうしてこうなった?(視聴注意)



※注意 少し衝撃的なシーンがあります。気を付けてください。


トモエは自分のための妖精を作り上げるために、自分の体を使うことにしたようだ。

まずは右腕を落とす。それから俺を見た。俺はすぐに回復魔法で、再生をさせる。

続いて左腕を落とした。同じく再生させた。


「トモエ、その両腕を使って、妖精を作るのですね?」


「ええ、私の体を使い妖精を作ります。

 私の分身であり、私の専属となる妖精ですもの。

 体の一部を使うのは当然と言えるでしょう。それと先程までとは違い、今回はマリアの魔石を無しで行ってみたいと思います」


「コガネ!あなたは下がりなさい。

 ここからは私とトモエと妖精たちで、トモエの妖精を生み出します。

 主様は魔力を供給してください」


「ああ、分かっている」


俺は邪魔にならないように、トモエたちからは少し下がって魔力の供給を行う。

トモエはマリアと協力しながら、自分の両腕だったものを、加工している。

片方には『水』の魔力、もう片方には『風』の魔力をトモエが注ぎ込んでいる。

しかしトモエに対する魔力の供給量を感じると、あまりうまくいっていないように思える。


「……大丈夫か?」


俺はかなり不安そうにトモエたちへと尋ねる。


「……少し難しそうですね」


「そうだな。妖精は生まれるが、実力が伴わない可能性があるな」


『水』と『風』の妖精は外野として、好き勝手言っていた。

しかしそれは事実なのだろう。トモエの顔は少し悔しそうに、歪んでいる。


「……さっきまではうまくいっていたのだろう?

 なのに何故?」


俺は自分の思うことを口に出す。それしかできないからそれをする。

もしかしたら話すことで何か解決するかもしれない。

俺は少しの希望を持って、言葉を紡いでいた。


「先程まではトモエの血と私が作った魔石を材料にして、コガネが魔力を注いでいました。

 魔力の付加がトモエとコガネで実力がだいぶ違うんです。

 というより扱える魔力量が違うんです。

 今回はトモエの妖精を作るために、トモエの魔力を使っています。

 トモエが魔力を使っています。

 それが原因です。それと魔石なしの影響も出ていると思います」


マリアが俺に状況を説明してくれる。つまりトモエ専用の妖精は、トモエが作らなければならないが、トモエはコガネよりも作ることが下手だという事か……。

なかなか難しい問題だな。


「……材料を変えてみてはどうでしょうか?

 トモエの肉体は魔力の通りが悪いので、別の肉体を材料にして、魔力を注いでみるのはどうでしょうか?」


「それとやっぱり魔石を使ったほうがいいのではないでしょうか?」


『水』の妖精のアドバイスに、マリアが口を挟む。


「それだとドラゴンに勝てないよ。

 魔石を使えば、簡単に生み出せるけど、魔力量が魔石に依存してしまう。

 そうなるとドラゴンを倒すために、ドラゴンと同じくらいの魔石が必要になってしますよ。

 マリア、幾ら君でもドラゴンクラスの魔石を作ることはできないだろう?」


『風』の妖精はマリアの意見を、否定した。

マリアを見ると、マリアは少し悔しそうな顔をしている。


「確かに私は自分よりも強い魔石を作れますが、ドラゴンレベルは無理ですね。

 魔力の制御が出来なくなります」


「コガネはどうなんだ?」


俺はコガネを見る。コガネは一人で地面に横たわり、睡眠を取っていた。


「コガネはドラゴンと同レベルの魔力の制御が可能です。

 しかし魔石を作ることはできませんし、魔力を注ぐのはトモエの役目です」


トモエを見ると、トモエは一人でブツブツ言っていた。どうやら考え事をして、考えが口から洩れているようだ。


「……神の器が必要だ。神の力を持つ者が必要だ。神の力。

 すなわち大邪神の力。大邪神から祝福を受けたものが必要になる、

 大邪神の祝福?……つまり大邪神の加護!

 ご主人様だ!ご主人様が必要になる。

 ご主人様のどの部分を使えばいい?ご主人様のご主人様たる所以はどこだ?

 ……〇〇〇だ!〇〇〇しかない!」


トモエが俺を見る。正確には俺の股間を見る。

肉食獣が狙いを付けたような目つきで、トモエが俺の股間を見ている。


「ご主人様。

 私欲しいものがあるんです……」


トモエはそういうと、包丁を抜いて俺へと近づいてくる。

怖い!めちゃくちゃ怖い!!

俺は逃げようとするが、足が一歩も動かない。


「ネトリ!強い妖精を作るためだ!

 協力してくれるよね!!」


「あなたは回復魔法で再生できるのでしょう?

 なら二回切り取っても、問題ありませんよね?」


妖精たちがとても恐ろしいことを言ってくる。

目を凝らすと、俺の体は空気によって動けないようにされていた。

更に水が俺の四肢を捉えて、その場へに固定する。

全く俺の四肢が動かなくなる。

トモエはゆっくりと俺の方へと歩いてくる。

マリアは俺のズボンを脱がせていく。いや、ズボンを破いているといったほうが、正確だろう。俺の服は後で再生が可能だ。だから気兼ねなく破いていく。

もちろん下着も破いて、俺の〇〇〇が露出されることになる。

トモエは包丁を振りかぶり、俺の一点を狙っている。

俺にできることは回復魔法の準備だけだ。

……それにしてもどうして痛みを和らげるような魔法はないのだろうか?

どちらにしても、股間のものを切り取られるのは、遠慮したいものだ。


《麻酔魔法は眠らせる魔法と同系統で、回復魔法の範囲ではない。

 だからお前が使えないだけで、存在自体は存在する》


コピーのどうでもよい事実を聞きながら、俺の股間は切り取られた。

しかも回復したものをさらに切り取られて、2回切り取られることになった。

トモエは切り取ったものに頬ずりをしているのだが、今度切り取る前の状態でやらせてみようと思う。



******



さて俺が切り取られた後は、驚くほどに事が進んだ。

俺の〇〇〇を使って生み出された妖精は。恐ろしいほど強力な妖精になった。

二人の妖精はどちらもトモエに懐いている。

試練のために生み出された『風』と『水』の妖精よりも、トモエが作った妖精は強力な力を持っており、試練は合格となった。

『風』と『水』の妖精は戦うことなく、負けを認めたのだ。


「実際戦ってみないと、どちらが強いか分からないけど、やればどちらかが死ぬ可能性が高いからな。

 そんなのはごめんだ。

 負けを認めるよ」


「戦闘経験などから私たちのほうが分があるように思えます。

 しかしこれ以上は望めないでしょう。

 負けを認めましょう」


どちらも負け惜しみを言っているようにも思えるが、恐らく事実だろう。

俺たちは勝利し、トモエの元には専用の二人の妖精が生まれた。

ちなみに他にも妖精は生まれているが、彼らは普通の妖精として、世界へと散っていく。

これでこの試練も終わりとなった。


「……ところでトモエ。その妖精たちに名前は付けるのか?」


俺は何となく、トモエに対して問いかけた。


「……えっ!?名前ですか?

 付けたほうがいいのでしょうか?」


妖精たちを見ると、首を縦に振っている。付けて欲しいようだ。


「トモエ。その妖精は姿を隠さないのですか?」


マリアに言われて、その妖精たちが試練の妖精たちと同じように、実体化した状態のままであることに気付く。


「しばらくすれば、姿が消えると思います。

 まだ生まれた手ですし、他の妖精も生まれた直後は実体化していたじゃないですか」


「……それもそうですね。

 それで、名前はどうするんですか?」


「そうですね。どちらも材料の影響で男性っぽいので、男性らしい名前がいいですね。

 タロウとジロウなんてどうでしょうか?」


妖精たちは首を横に振る。

トモエは困った様子で、マリアを見る。


「……グリーンとブルー」


首は横に振られる。トモエも困ったときは、マリアに頼るのだな。

そう考えていると、トモエが俺に目線を送ってきた。


「……シップウとスイリュウ」


俺は何とか名前を捻り出した。やはりネーミングセンスが欠如している。

妖精たちは少し悩んだが、やがて諦めたように、しぶしぶと首を縦に振った。

他のものよりはマシという判断だろう。

俺は『風』の妖精であるシップウと、『水』の妖精であるスイリュウに回復魔法で魔力を与える。生まれたばかりの妖精たちは、元々大量の魔力を吸収していたが、さらに多くの魔力を吸収する。


「……恐ろしい力の持ち主ですね。

 正直私では制御できないレベルの妖精です」


トモエは冷や汗を流していた。マリアを見ると、マリアも顔を引き攣らせている。

俺は妖精たちが大量の魔力を吸収していることを知っているし、強力な存在感を放っていることも分かる。

しかしそれがどの程度すごいかは、分からない。


「……それでシップウとスイリュウはどの程度すごいんだ?」


俺の発言にトモエとマリアは呆れ返っていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎日 12:00 予定は変更される可能性があります

勇者のハーレム作るための異世界転生?勇者が生まれるのは75年後?それまで仲間を作って旅して楽しみます! 金剛石 @20240531start

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ