先輩と私

森杉 花奈(もりすぎ かな)

あの日の約束

「お前、進路どうするんだ?」

 私は学校の先生に進路を問われていた。

進路?決まっている。先輩と同じA大学を受

けるのだ。私の考えははっきり決まっていた。

偏差値も成績も充分合格圏だ。ほかの大学を

受けることは考えていなかった。

「お前の成績ならもっといい大学受けられる

んだぞ。本当にA大学でいいのか」

先生は同じ言葉を繰り返す。本当にA大学で

良いのに。私の考えは変わらない。

「はい。もう、決めたんです」

「本当に良いんだな」

「はい」

先生がいくら説得しても私の気持ちは変わら

なかった。先輩と同じ大学に行くのだ。そう

心に決めている。あの日、先輩と約束したか

ら。絶対先輩と同じ大学に行く。それは私が

決めたことだから。だから何があっても考え

は覆らない。私の決意は変わらない。


 先輩とは同じ部活動で知り合った。

バスケが好きだった私は、中学校もバスケ部

だった。当然高校もバスケ部に入部した。そ

して高校のバスケ部で先輩と知り合ったので

ある。はじめはなんとなく他愛もないおしゃ

べりをしたり、ふざけあっていたりした。い

つの間にか誰よりも大切な存在になり、ふた

りが恋人になるのに時間はかからなかった。

先輩は1歳年上で、高校では2年間一緒だ

った。先輩が卒業を控えたある日のこと。

「お前、A大学に来いよ。大学でも一緒にバ

スケしようぜ」

「え?先輩A大学に行くんですか?」

「俺はお前と一緒がいいの。いいからA大学

に来い。約束な」

「はい。絶対A大学に行きます。先輩。大学

でも一緒にバスケしましょう。、約束ですよ」

 こうして私は先輩と同じ大学に行く約束を

した。そしてその日から私の猛勉強の日が始

まったのだった。


 そしていよいよ大学の合格発表の日。ドキ

ドキしながら自分の番号を探す。やったぁ。

合格者の番号の中に私の番号があった。私は

A大学に合格した。嬉しくてガッツポーズを

していたら、後ろから誰かに小突かれた。

「何やってんだよ。お前」

「あ、先輩」

「その分だと合格したんだな?」

「はい。これで晴れて先輩と同じ大学です」

「おめでとう。これからもよろしく」

「よろしくお願いします。先輩」

私と先輩は肩を抱き合って喜んだ。今日は人

生のうちで最も良い日だと思った。先輩と同

じ大学に受かったことがとても嬉しいと思っ

た。先輩とまた一緒にバスケが出来る。その

ことがとても嬉しかった。

 そして今は先輩と一緒に、大学でバスケの

練習をしている。卒業したら、結婚しようと

ふたりで決めている。何があってもふたりで

乗り越えていこうと思う。私たちの物語はこ

れからも続いていくのだ。ふたり一緒に。

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先輩と私 森杉 花奈(もりすぎ かな) @happyflower01

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