第14話 現実と心の変化


僕らは荷物の整理をしていた。


これ素敵ね・・・・・


そういいながらゆみが手にしていたのは、かおるが編んでくれた二人用マフラーだった・・・・・!


手編みよね? 名前入りだもの


向けられたゆみの視線を無視して、僕はさらりと言いのけた。


三カ月かかったって・・・・・!


今まで一人暮らしをしてきた中で、僕の一人暮らしの部屋の中に上がったことのある女性は、かおるしかいなかったので、ゆみとの同棲性生活は新鮮な感じがしたのに、いきなりわるいかんじがした・・・・・!


必要なものを二人でショッピングモールに買いに出かけて、帰ってきたところだった。


ゆみは僕が無造作にベッドに置いていたマフラーをしげしげと見ながら、しきりと感心していた。


「きれいに編んであるは」


ゆみは、マフラーから目を離さず、僕に聞いた。


「もし私が名前入りのマフラー編んだら、一緒に巻いてくれる?」


ああ、と言おうとして、なぜか僕は言葉をつまらせた、なぜだ?


ゆみは、返事を返さない僕のほうに向きなおって小さく舌を出して見せた。


「ウソ、私編み物できないから」


僕は知っている、それこそ嘘だった。


ゆみはどちらかというと、みんなで写真を撮る時など、いつも後ろのほうで笑っているような。そんな風だったから、僕らの生活も静かに過ぎていった。


一方、僕はどちらかというと、元気に活動するほうだった。クラス委員や、風紀委員、イベントがあれば真ん中で何かやっているような。別にそんなつもりはなく、おとなしくしているつもりだったが、同窓会に行くと元クラスの女の子たちからは、結構目立っていたと言われたりしていた。


でも、僕らの生活は静かに過ぎて行った。


かおるとは付き合っていた期間は四年間ほどあったが、同棲はしなかった。しかし、かおるのことも含めて、優しく迎えてくれる、ゆみとは常に生活を共にしていた。


仕事から帰ってきて、真っ暗な電気の消えた部屋に入らなくていい、良い暖かさがあった。僕はそれに助けられていた。


朝、目が覚めると、ゆみが台所で鼻歌まじりに朝食を作っている。そんなドラマか小説、漫画みたいな光景に慣れるについて、かおると子供の話をすることも次第になくなり、暖かいゆみの心に僕は、日に日に惹かれていった。


ぼくはそんな「ありふれた日常」に助けられていたのだ。ゆみは僕をとても優しく支えていてくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る