第10話 おとこ
何をしているのだ!!!!!
背後で怒鳴り声がして、僕はぎょっとして振り向いた。知らない五、六十代の男性が、僕のほうへと近寄りながら何やら怒っている、何を怒鳴っているのだろう???
そして自分でも意外なことに、僕はその時そのおじさんにはっきりこう言ったのだ。
かおるとお腹の赤ちゃんが、交通事故で死んだので、もう少し先に行けば会えるのです、、、、、!
僕は、海の中に立っていた。浜辺はすっかり暗くなっていて、もう胸より上を小さな波がゆっくりと体をゆすっていた。どうやらゆっくりと砂浜から、沖のほうまで歩いてきていたみたいだ、、、、、!
そのおじさんが、さっきより近くに来てまた何か怒鳴りだした。でも、何を言っているのか意味が分からなかった。だが、何のためにここに来たのか分かった。僕は死ぬつもりだったのだ、、、、、!
なあんだ、そうか。それなら何もぐずぐずすることはなかったのに、かおるが絶対に右にはいかないといった、絶壁から飛び降りていたらもっと早く死ねたのに、と考えながら。僕はなぜかホッとして再び沖へ向かおうとした、、、、、!
砂浜から二十メートルくらい離れたところで、しばらくするとおじさんの手が僕を背後から激しく揺さぶった。彼は海に入り込んで僕のそばまで寄ってきていた。揺さぶりながらまだ何かを口にしている、、、、、?
僕はその男性を改めてみた。やっぱり知らない人だたまたま通りかかった人に違いない、、、、、!
そのわずかな瞬間、彼はタクシーに、喪服に黒ネクタイで乗ってきてこんなところで、お金はバッグの中に全額っておかしいだろう、、、、、!
しばらくしてからだった、僕のしびれた頭に彼の言葉が飛び込んできたのは、、、、、!
お前男だろうが!!!
おとこ?僕はつぶやいた、、、、、?
そうだ、ちゃんと二人を弔ってやるのが男ってもんだ!!!
僕の体の中で何かが、カチリ、と音を立てた。そうだ、僕はおとこだ。平和な光を、放ちながら平和のために働く男になるはずだったのだ、、、、、!
そう思ったとたん、涙が堰を切ったようにあふれた。声は出さず、ただ涙だけ流しながら僕は泣いた、、、、、!
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