喫茶ノワルカン〜戦士たちの火点し頃〜

プロローグ


 【火点ひともごろ】──夕暮れになって、明かりをつける頃。


♔♔♔


 冠式社会主義共和帝国かんしきしゃかいしゅぎきょうわていこく──通称「式国しきこく

 この国は、日本の隣に位置する独裁国家。


 生活のあらゆる側面が政府の厳しい管理下に置かれ、個人の自由は極めて制限される。


 娯楽は「労働意欲を高めるもの」か「国家への忠誠を示すもの」に限られ、酒場や劇場、映画館などの施設もほぼ存在しない。


 そんな厳格な国の中央都市に、ある異端な店が存在する。


 その店の名は『喫茶ノワルカン』。

 

「ノワルカン」とは、日本語の「火点し頃」に相当する、式国語の表現。

 その名の通り、店は夕暮れ時にオープンする喫茶店。そこは政府の高官や工作員、都市部の学校に通う学生たちの間で、密かに人気を博していた。


 そんな喫茶ノワルカンを営むのは、ニアという20代後半の謎の青年。


 彼の穏やかな笑顔と細やかな心遣いは、任務や訓練に疲れ果てた客たちの、唯一の居場所となっている────。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る