非 -Anti-

しゔや りふかふ

第1話 ドライ・フラワーを眺めて

 ラベンダーであったときの面影を遺すドライ・フラワーを眺め、頬杖を突き、ふつと想ふ、人にあらば木乃伊。


 花々ゆえに梁やら、壁の飾り板やら、さかさ吊りの憂き目に遭う。人にあらばやすらかに柩にて、世のすべてから解き放たれていようものをなど謔(たはぶ)れが蒼穹の一片の雲のよう、脳裡を過(よ)ぎって翳す。くちもとを動かすことなく、くすり笑ふ。


 萬物齊同(すべてはひとしくおなじ)と言うが、とても。

 いや、違う。花木乃伊(はなみいら)さまたちも、とてもおしずかに、時が止まったやう、微動もないおしとやか。静寂の死に顔。

 

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