血
海星
第1話 汚したくない
「ルイ。」
「…どうした?」
キッチンに立つルイに後ろからくっつく。
「ルイさ、本気で人好きになったことある?」
「…遠い昔にあったかな。」
「…そっか。」
「ただいまぁ」
「おかえり。」
「またイチャ付いてんの?」
「甘えてただけだよねー」
「うん。」
僕は無言で衣舞の前を通り過ぎて二階の自室へ行き、少量しかない荷物をまとめて大きめの鞄に詰め込んだ。
(あ、着替えてなかった…)
まだ制服だった事に気付いてスウェットに着替えて、ネックレスを付けて階段を降りた。
そこで思い出した。
(あ、ママのアルバム…)
玄関に鞄を置いて無言でリビングに入って箪笥の小さなアルバムを出した。
「なにしてんの?」と後ろから声がする。
「……」答えない。
「なにしてんの?」
再度声が来る。
でも僕は答えなかった。
そのまま部屋を出ようとすると、
「ねぇ、なんでシカトすんの?」と衣舞。
ほとんど怒っている。
「…勝手にすれば?好きにすりゃいいじゃん。ただ俺はもうお前を見たくない。」
「あいつ?友達だけど。」
「黙れ。やったかやっていかなんてお前にしかわかんねーだろうが。ふざけんな。次俺と会う前にそのピアスとネックレス全部捨てろ。」
「なんで?なんでそこまでしなきゃいけないの?」
「他に男出来たらフツーはそうすんだろ。」
「だから違うっつってんじゃん!!」
「どうみたってそうだろうが。知らねーよ。」
「どこ行くの?出てくつもりなんでしょ?行くとこあんの?」
「迎え入れてくれる女の一人や二人常に居るから。ガキに興味はない。」
「…だから違うんだって。。。」
「涼太、一回冷静になったらどう?」
痺れを切らしてルイが口を開いた。
「俺は冷静だよ。…長い間ありがとうね。」
僕はその日の夜から友達の親が貸してるアパートを借りてそこに住み始めた。
バイトもしていたので月二万ずつ家賃として払っていた。
その友達の親には一応ルイの番号を伝えた。
―――――――――翌朝。
「行かないの?」
威勢よくドアが叩かれて声をかけられた。
「今行く。」
ドアを開けると衣舞が居た。
「ってかなんで知ってんの?」
「ママから聞いた。」
「『行け』って?」
「ううん、逆。行き先分かったからそっとしとけって。無理。出来ない。だから来た。」
「別にいいよ。彼氏と行けば?俺に構ってるだけ時間の無駄じゃない?」
靴を履きながら言葉をぶつけた。
「だからさ、何回言やわかんの?あいつはタダの友達。あんたにはどんな風に見えたわけ?」
「イチャイチャキラキラしたカップル。」
「どこの少女マンガ見たらそんな発想になるわけ。」
「…お前まだつけてんの?それ。」
「外す気ないから。」
「……。」
「…なに?」
衣舞の鎖骨を左から右まで指で撫でた。
「別に。…行くぞ。」
「うん。。。」
たまらなくキスしたかった。
でも、我慢した。
――――――――――――2人でバスに乗って学校へ。
クラスは一緒。
常に一緒。
でも最近はバラバラだった。
で、たまたま昨日あの地獄絵図を見た。
今日は衣舞がやたらと傍から離れない。
休み時間もずっと一緒。…トイレまで。
でも、安心した。傍に居てくれる。それでよかった。
「衣舞、今日カラオケ行かない?」
女友達が話しかける。
「今日はごめん!」
「デート?」
「ん〜だったらいいんだけどねぇ。」
僕たちは当時付き合っているように
――――――――――――帰り道。
「送ってく。」
「帰ってこないの?」
「うん。」
「まだ拗ねてんの?」
「いや、いつまでもルイに甘えてられないから。」
「ママ、心配してるよ。」
「ほっといてって言っといて。それか、死んだって思っていいって。」
「なんでそこまで…。」
「お前だけが理由じゃないから。」
――――――――――――23時。
バイトを終えて帰宅すると、鍵が開いてて電気が着いてる。
(ルイだ…。)
案の定ルイが居て、キッチンに立っていた。
「おかえり。ごめんね、勝手におしかけて。ある程度作り置きしといたから、また無くなる前に連絡ちょうだい。来ておいておくから。」
「いいよ、そんな事しなくて。」
「…何があったか知らないけどあんたが高校卒業するまでは『育てる』って決めてるから。だから、あたしの母親業を邪魔しないでくれる?」
ルイは少し疲れた顔して微笑んでいた。
僕は……ルイに抱きつきに行った。
「衣舞の事でしょ?」
「うん」
「何拗ねてんの。」
「
「仕方ないでしょ、親子なんから。」
「そうだな。」
「……。」
ルイは僕のおでこに優しくキス
した。
「……。」
「好きなんでしょ?」
「うん…」
「安心していいんじゃない?衣舞もあんたしか興味無いみたいだし。あんな感じだと。」
「…うん。」
―――――――――――――――。
その日の夜中、ある人へ電話をかけた。
……が出ない。
いつもそうだ。
僕がかけても出ない、折り返しもない。
――――――(呼び出し音)
もう1人かけた。
『……どうした?』
どんな時間であろうとも基本何も無ければすぐ出てくれる。もしくは折り返しは必ずくれる。
『…逆なら良かったのに』
『逆?あぁ…逆ね。』
『うん…。でもどっちも同じじゃなくてよかった。』
『…涼太。ルイに聞かせて?今なんで苦しんでる?』
『……ママに会いたい。』
『寂しい?』
『違う。確かめたい。』
『どんなこと?』
『……俺が本当は誰を好きなのかわかんなくて。』
『あんたが好きなのは間違いなく衣舞。アミじゃない。』
『うん…。』
『衣舞のこと頼むね?学校ではあんたしか守れないんだからね?』
『うん。』
『寝れそう?』
『……このままがいい。』
『わかった。』
僕は、電話を繋いだまま眠ろうとしたが全く眠れなかった。
――――――――――――朝4時。この日学校は休みだった。だからフラフラしながら鍵を閉めてルイの家へ向かった。
そして家に着いて、鍵を開けて、ルイの部屋へ。
フラフラのまま、潜り込んだ。
ルイの寝顔を見ると安心して一気に眠気に襲われた。
僕はルイの背中にくっついて、幼き日のように様に眠りに着いた。
――――――――――――お昼前。
「…ルイ。…ルイ!!…ルイってば!!…ルイ!!……」
僕は目覚めと同時にパニックになっていた。
そのまま部屋を飛び出して階段を降りようとすると最後の数段で足を踏み外して落ちた。
異様な音で驚いてルイと衣舞が慌てて見に来た。
「大丈夫?!」とルイ。
「なにやってんの?!」と衣舞。
僕は子供のように声を上げて泣いた。
「…ルイ!!…ルイ!!…痛い!!…痛い!!…」
ルイは少し笑いながら僕を抱きしめた。
「ごめんね。下に居たからさ。大丈夫だよ。ここにいるから。大丈夫。」
「ルイ!!…ルイ!!…」
「大丈夫。居るよ。居る。」
僕は暫く泣いていた。
――――――――――――――――――。
「涼太、帰って来ない?」
「帰らない。」
「目が覚めでもあたしいないのよ?探しても見つからないけどそれでもいいの?」
「いい。」
「どうしたの。」
「いい。」
「なんで?」
「だって……」
「だって?」
僕はルイの膝に頭を乗せていた。
「誰もママにはなれない。」
「そうだね…。確かに誰もアミにはなれない。」
「だからもういい。」
「あんた『死にたい』とか思ってる?」
「……」
何も答えられなかった。
「よく聞いて。あんたの母親はこの私。確かに産んだのはあたしじゃない。でも、正真正銘、涼太も、衣舞も私の子。」
僕は起き上がってルイに抱き着いた。
「そうね…いずれは巣立つ日がくるからね。早かれ遅かれ。…でもちょっと早くて寂しいかな。」
「ごめん…なさい…」
「止めはしない。だからいつでも帰っておいで。…あと、もうアミには連絡しなくていい。あんたの母親は私。誰がなんと言おうとあたしの子。渡さない。」
「ルイ…」
ルイにキスした。
「……本当にあんたって子は。」
「ルイ、今日も一緒に寝ていい?」
「いいよ。制服持っておいで。明日の準備もね。」
「わかった。…衣舞、一緒行こう?…」
「いいよ。行ってあげても。」
―――――――――――――――自宅。
鍵を開ける前に、衣舞を抱き寄せた
「……。」
「わかんない。教えてよ。」
衣舞はいつでも気だけは強い。
「……言いたくない。」
「じゃあ言ってあげようか?」
「だめ。」
「だめ?」
何故か、こいつの体、匂い、纏ってる空気がどんどん僕の母親に似てくる。
だからわからなくなってしまう。
だから怖くなってしまう…。
でも、目の前にいるのは誰でもない、衣舞だ。
僕は鍵を開けて中に入った。
そのまま手を引いてベットに座らせた。
衣舞の髪を耳にかけて、ギラギラしたピアスを出した。
そして、指で撫でてそのまま首筋…鎖骨…。
僕は
そしてこの、鎖骨の窪みに僕のあげたクロスのネックレスのクロスが作ったように丁度入るのがたまらなく好きだった。
僕は…衣舞のおでこにキスして、
その場にしゃがんで、鎖骨にキスした。
右、左、そのまま首筋…そして耳に舌を這わせて甘く噛んだ。
小学生の時にキスして以来、今もまだ直接唇にはキスしてない。
でも、さすが衣舞だ。
襲いかかるようにキスして来た…。
「涼太…もうこれ、してんのと変わりないよね?」
「さぁ?お前はどう考える?入れて始めてしたことになるか?それともしたくてたまらなくされたらそういうことになるか?」
「…涼太に触れて貰えたらもうそれは全部したことになる。」
「……いい女だな。」
「皮肉?」
「俺ならどう伝える?」
「わかんないからちゃんと言って。」
「…お前が好きだ。でもそんな軽いもんじゃない。」
僕は首の後ろで支えて、耳にまた舌を這わせた。
衣舞は耐えきれず甘い息を漏らす…。
「…次はどこに開けようか。耳だけじゃ足りねーな。」
そう。こいつの耳の穴は全て僕が開けた。
高校二年生で恋人でもない女子の耳の穴をあけまくっていた。
「…衣舞。」
「なに…?」
「…入れないとダメか?」
「そんなことない。」
「…おかしなこと言っていいか?」
「なに?」
「お前に出したくない。汚したくない。」
「ありがとう。」
「…」
「大好き、涼太。」
「俺も……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます