第58話 風になる悪役令息


 聖騎士が剣を振うと光の刃がこちらに飛んでくるので、避けて中級風魔法『鎌鼬』を打って応戦する。

 先ほどから加護は持ってないのか、大技は打ってこない。

 現在の距離感からいって照準を付けにくいということはないので、遠距離に対応した加護は持ってないと思った方がいいいか。

 それにしても攻めにくいな。

 強い攻撃を持っているわけではないが、隙がなく固い。

 言い方はあれだが格下狩りに特化した性能をしているように感じる。

 正面から盾の防御を貫通するのは厳しいので、防御しきれない死角を突くしかないだろう。

 初級土魔法『土形成』で砂と岩を作り出すと中級風魔法『暴風』で撹拌する。

 砂埃で視界が遮られ、風に寄って体捌きが乱れ、巻き上げられたいくつもの岩が飛来する。

 俺がゲームの時に固い敵にやっていた時によくやっていたコンボの一つだ。

 若干見えにくくなるが風に乗ることによって敵を全面から叩ける上に、岩がぶつかることを俺の攻撃と誤認して隙ができて、弱点を叩きやすくなる。

 ゲームでは更に砂一粒がぶつかることもコンボとしてカウントされ、コンボのボーナスダメージで凄まじいダメージを叩き出せたがそっちについてはゲームではないのでしょうがないだろう。


『これが貴殿の戦い方か。見えぬ』


 中級風魔法『浮遊』で浮かんで暴風に乗る。

 久しぶりだが相手の影の確認と岩にぶつからずに移動は問題なくできるな。


『ふむ。加護の力か? 四方八方から攻撃?』


 ある程度近づいてきたので身体強化で鎧の出力を上げ、聖騎士の状況を精査する。

 最接近時には背面──防御の及ばない死角から叩けそうだ。

 このまま軌道修正せずに攻撃するか。


『グアああああああああ!!』


 中級火魔法『爆剣』──斬撃にプラスで爆発を生じさせる魔法を繰り出すと聖騎士の乗ってる量産機の下半身が爆散し、上半身だけとなって地面に倒れた。

 想像以上に威力が高い。

 こっちの世界ではゲーム時のように砂一粒がぶつかるごとにコンボのボーナスダメージは入らないと思っていたが、現状を見るにはあったようで爆発的なダメージが生まれたようだ。



   ───


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