第40話 負け確を悟る魔族


「前魔王とともに教会を背後から叩くはずの二万の軍がまだ来てない!?」


『ええ、二万の軍にきていない上に前魔王は未確認の鎧に足止めを喰らった挙句、見たこともない魔道具の直撃を喰らって撃ち倒されました』


 潜伏してるグリコンからの報告を聞き、魔族側の転生者──プリシラは耳を疑った。

 奇襲の情報は漏れていないはずだし、何より二万の軍勢に対抗できるほどの戦力はゲーム内には存在しない。

 例え奇襲が来ると分かったとしてもどうにかできるわけがないのだ。

 ないと言うのに二万の軍勢が教会本隊とは別の何かに引き留めるもしくは潰されている。

 これはどう言うことだと言うのか。


『作戦はもうすでに失敗かと……』


 疑問が頭の中で渦を巻くとグリコンの状況判断が聞こえ、思考が謎から目の前の現実に復帰する。


「失敗したとして教会側になんら打撃を与えられず撤退はできないでしょ。どう考えても。せめて教皇か聖女は仕留めないと。二人の状況はどうなっているの?」


『教皇は教会本隊と共に居て手を出せないかと。聖女についても戦闘中ではあるものの膨大な神聖力と神鎧を持っており、これも危険だと思われます』


 現状を聞くと両方とも状況が悪く落胆する。

 聖女の方はまだ力をつけていないと高をくくっていただけにもうすでに力を覚醒させていたのが完全に誤算だった。

 報告ではどれだけの力を覚醒させたか判然としていないが、状況的には聖女側の方が付け込みやすくはある。

 覚醒の度合いによって成功が左右されるのでギャンブル要素が強いが聖女側に送るしかないだろう。


「聖女側に私兵を送って仕留めさせる。状況について引き続き報告して」


『御意』


 グリコンに作戦継続を言い渡すと前回アクアスマッシュを送ったカマッセイ男爵領にある泉の精霊ワープを使って千の私兵を聖女に向けて送った。

  ───


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