第16話 神聖力高すぎて草


「過去に見たことのないほどの神聖力です! ステラさん! これに比べたら教会一と言われる私の神聖力などカスのようなものです! あなたはエリス様から余程の寵愛賜っているのでしょう!」


 まあわかりきっていることではあったが神聖術の教練をやる内に教皇──モンローがステラを見る目が変わった。

 教会一らしい自らの神聖力をカスとして貶めてまで称賛するところを見るにその道に精通した人間にとっても規格外なのだろう。

 素人の俺からしてもどう考えても周りとは次元の違う領域にいるからな。

 俺のように聖女──特別なものと知っている人間でなかったとしても特別なものだと確信するレベルだ。


「もはや存在そのものが奇跡のようなもの。早急に聖女に認定するべきです」


「私が聖女に!?」


 モンローが聖女にするしかないと息巻くといきなりのことにステラが慌て始めた。

 本人からしたら自覚はないし、いきなり抜擢されても……と感じだろうなのだろう。

 まあ単純に間近で見ていた聖女があれだったのでなるのが嫌というのもあるのかもしれないが。


「そうです。ステラさん、あなたは聖女になるべきです。きっとそれが生きとし行ける人類のためになります」


 モンローは聖女になってもらわなければならないというところまで意識が行ってるようで必死めにステラに聖女になる必要性について説き始める。

 実際のところステラが聖女にならなければ、世界は滅ぶので理にかなった行動ではあるが、必死すぎてステラが若干ビビっているように見える。

 前世でキッズアイドルの勧誘してるおっさんが「君は見る人を救える選ばれし子や!」と言って幼女を必死に口説いていたのを思い出す。

 十歳の幼女に任すには処理能力を超えているし俺の方から助け舟を出すか。


「大きな選択ですし、奇跡認定を受けただけで同じ聖女から殺害されそうになりましたから、まだステラに聖女になる選択を委ねるのは時期尚早だと思います。するのならば同じ危険を及ぼす可能性のある聖女を罷免してからでないと、あっちが話を聞きつけた直後にステラを狙った殺人未遂が起こりかねません」


「すみません。あまりにも大きな女神からの祝福を見たことで気が動転していました。確かに暴走傾向にある光の聖女──リアーナをそのままにしておけば問題が起きることは明らかですね。リアーナを罷免してからまたお伺いを立てさせていただきましょう。ステラさんは我が教会の希望ですから」


 平静に戻すためにステラが聖女になるに当たって問題があることを指摘すると落ち着いたらしいモンローがもう一人の聖女をお役御免にすると約束し、ステラに聖女になる可否を問うのを保留してくれた。

 ひとまず落ち着いてくれてステラが解放されたし、偽聖女がこれで潰えて正史通りなりそうだし俺としてもは万々歳だ。

 既存の聖女を一人クビにして聖女になるので就任するときにリップサービスは必要だし、その時に「一人も犠牲にしないという気概を見せるために鎧から自爆装置を取り除きます」とでも言ってもらえれば精霊ワープの時に使用する自爆装置もついでにゲットできそうだな。

 うまくいくかはわからないが、もう一人の偽聖女──リアーナを罷免をしてステラが聖女になる段になったら頼んでみるか。



  ───


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