第15話 神聖術強すぎワロタ


 銃については順調。

 目下のところ前魔王対策はこんなところでも十分だが、現魔王側がこっちでいざこざが起こってるのを知って絶好の機会として攻め込んでくることがないともないから精霊ワープの対策もとった方がいいな。

 今思いついている対策としてはワープ地点に量産鎧からとりだした自爆装置を設置しといて、飛んでくると同時に爆殺することだ。

 いちいち一体ずつ倒す必要がないので、これなら撃ち漏らしなく確実にやれるはずだ。


「いつまで寝ぼけてるんだ。いくぞ」


「助かったぜシド」「いくか」


 とりあえず対策の前に神聖術の教練に行かなければいけない。

 単発銃を受け取って寮の部屋に戻ると寝ぼけてムリムリカタツムリ状態になっていたロイドとアンディに水をかけて復活させると教練に向かう。


「あらごめんなさい」


「グアアあああああ!」


「「あ、アンディィィィ!!」」


 時間が押していたので朝飯のパンを口に突っ込んで走っていくと角を曲がる時に教皇──モンローの胸にアンディがぶつかり、そのまま弾き返されると壁に磔にされた。

 こいつはひどい。

 走ってぶつかった時の勢いが倍にして返されたのか、完全にノックアウトされている。


「しょうがない。抱えていくかロイド」


「行くしかないな」


「そんなに急がなくても結構ですよ。今日は私が担当ですので」


 気絶したアンディを運んでいくかと思うとモンローが制止をかけてアンディに神聖術「回復」──手から生じさせた光を浴びせるとアンディが目を覚ました。


「何か酷い目にあった気がする。天国から地獄に落とされるようなそんな酷い目に……」


「回復したみたいですね。このまま礼拝堂に一緒に行きましょうか」


 ゲームでは聖女しか神聖術を使うシーンがなかったからこうして他のキャラが使っているのを見ると新鮮に見えるな。

 というよりも神聖術は割と謎の部分が多いな。

 前世のゲームの中でも回復の回数制限をかけるためなのか、主人公も神聖術が使えなかったので使う機会はなかったし、今世でも習ったのは魔法ばかりで神聖術は一切触れんかったしな。


「シド様」「男どもおっそ。ギリギリじゃん」「あ、教皇様だ」


「おはよう。そっちは優秀だな」「うるせえ。今日は色々とあったんだよ」「そうだ。そうだ」


「はい、はい。神聖術の教練を始めますよ。昨日の件で教導者が休まれているので今日は私が神聖術を担当させて頂きます」


「「「「はーい」」」」


 一同が揃ってやいのやいの始めるとモンローが場を納めて教練を始めた。

 教皇より教師の方がしっくりくるなこの人。


「まずは神聖術の初歩“祈り“から始めましょう。エリス様に祈りを捧げて体にエリス様のお力──神聖力を貸し与えて頂く神聖術です。ここで分け与えて頂いた神聖力を利用することで“回復“や“光球“の神聖術が使えるようになります。そのまま利用せずに身に留めておけば神聖力で体を強化できるので初歩とはいえできることの幅が広く、とても大事な神聖術です。ではエリス様の感謝を込めてお祈りをしてみましょうか」


 要は神様に頼んで神聖力ていう力を貰うってことか。

 魔力と同じく使える神聖力には個々人で差があるっていう設定を考えると貰える量も神様の御心次第でところか。

 周りもゾロゾロと祈り始めたので俺もエリスに祈りを捧げる。

 体が若干熱くなるのを感じると周りの連中の挙動がいつもより素早くなっており、ステラに至っては残像が生じている。

 おそらく俺も早くなっているはずだが、魔法の『身体強化』をかけた時のようなしんどさと違和感がない。

 もしかしてこれは『身体強化』のように筋肉だけではなく、しっかりと脳を含めた体全体にかかっているぽい。


「使えるなこれ」


 思考速度まで上がってということは同じ神聖術使い相手以外なら一手早く動いて速さにおいて大きなアドバンテージを得ることになる。

 鍛錬すれば強化できるかはわからないがこれを強化できれば後手に回ることがなくなる。

 こいつは伸ばすしかないな。


  ───


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