第41話 愛の幸せと尊さ
新宮市の初夏は、緑豊かな山々と透き通る青空が美しく調和し、街全体が活気に満ちていた。新と優子は、家族三人で過ごす休日を楽しみにしていた。今日は芽衣の幼稚園で親子参加のイベントがあり、一緒に参加する予定だ。
朝、新はいつもより早く目を覚まし、キッチンで朝食の準備を始めた。優子がリビングに入ってくると、新は笑顔で「おはよう、優子。今日は僕が朝食を作ったよ」と声をかけた。テーブルには芽衣の好きなパンケーキが並んでいる。優子は驚きながらも、「ありがとう、新。芽衣も喜ぶわ」と微笑んだ。
しばらくして、芽衣が元気よく部屋に飛び込んできた。「パパ、ママ、おはよう! いいにおい!」と目を輝かせている。三人は笑顔で朝食を囲み、楽しそうに会話を弾ませた。
幼稚園に到着すると、園庭にはたくさんの親子が集まり、賑やかな雰囲気に包まれていた。芽衣は友達と手を振り合いながら、新と優子の手をしっかりと握っている。
イベントが始まり、親子でのゲームや工作を楽しむ中、新はふと周囲を見渡した。子供たちの笑顔、親たちの笑い声、そのすべてが温かな空気を作り出している。新は心の中で、「これが幸せというものなんだな」としみじみと感じた。
昼食の時間になり、三人は木陰のベンチに座ってお弁当を広げた。優子が手作りしたお弁当には、芽衣の好きなキャラクターのおにぎりが入っている。芽衣は嬉しそうに「ママ、これ大好き!」と言って頬張った。新はその様子を微笑ましく見つめ、「優子、いつもありがとう。君のおかげで、こんなに素敵な時間を過ごせている」と感謝の気持ちを伝えた。
優子は少し照れながらも、「私こそ、新がいてくれるから毎日が幸せよ」と答えた。二人の間には、言葉では言い尽くせない深い愛情が流れていた。
午後のプログラムが終わり、帰り道を歩く三人。芽衣は遊び疲れて新の腕の中で眠っている。静かな街並みを歩きながら、新は優子に話しかけた。
「今日は本当に楽しかったね。芽衣の笑顔を見ていると、僕たちがこうして家族でいられることがどれだけ幸せか、改めて感じるよ」
優子は優しく頷き、「そうね。毎日の忙しさに追われて、つい忘れがちだけど、こうして家族で過ごす時間は本当に大切だわ」と答えた。
その時、一匹の子猫が路地から飛び出してきて、新たちの前で立ち止まった。痩せ細った体で、寂しそうに鳴いている。優子は思わず立ち止まり、「どうしたのかしら、この子…」と心配そうに見つめた。
新は芽衣を優子に預け、子猫に近づいた。「迷子かな?」と手を差し伸べると、子猫は逃げることなく、新の手にすり寄ってきた。
「連れて帰ってあげようか」と新が提案すると、優子も「そうね、このまま放っておけないわ」と賛成した。
家に戻り、子猫にミルクを与えると、元気を取り戻した様子で喉を鳴らしている。その姿を見て、芽衣も目を覚まし、「にゃんこ!」と喜んだ。
その夜、家族四人(子猫を含めて)はリビングで穏やかな時間を過ごした。新はソファに座り、芽衣を膝に乗せながら、優子と目を合わせた。
「小さな命だけど、こうして出会えたのも何かの縁だね」と新が言うと、優子は「ええ、私たちの家族がまた一つ増えたみたいで嬉しいわ」と微笑んだ。
新は深く息を吸い込み、静かに語り始めた。「優子、君と出会ってから、僕の人生は本当に変わった。君がいてくれることで、僕は強くなれたし、何より人を愛することの幸せを知ることができた」
優子は新の言葉に目を潤ませながら、「私も同じよ、新。あなたと芽衣がいるから、毎日が輝いて見える。愛する人がいるって、こんなにも幸せなんだって、あなたが教えてくれたの」と応えた。
二人はそっと手を重ね合い、静かな時間を共有した。窓の外には星空が広がり、優しい月の光が部屋を包んでいる。
その時、芽衣が小さな声で「パパ、ママ、大好き」とつぶやき、再び眠りについた。その言葉に、新と優子は胸がいっぱいになり、互いに微笑み合った。
「愛する人がいること、それが何よりの宝物だね」と新が言うと、優子は「ええ、そしてその愛を大切に育んでいくことが、私たちの使命なのかもしれないわ」と答えた。
新は優子の言葉に深く頷き、「これからも、家族みんなで幸せを紡いでいこう」と誓った。
夜が更けていく中、家族の温もりが静かに広がっていった。人を愛することの幸せと尊さを胸に、新たな一日へと向かっていく。
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