第20話 ゼロ地点への旅立ち
翌朝、カフェ「パッタイ・タイムズ」の店内は、いつになく静かだった。
雅史、玲奈、大介の三人は、ゼロ地点への旅立ちを前に、それぞれが準備を整えていた。冷たく澄んだ空気の中で、緊張感が漂っている。
玲奈がタブレットを片手に説明する。
「ゼロ地点は、完全に周囲を覆われた施設になっている。防衛システムが高度すぎて、正面突破は不可能。でも、ここに一つだけ盲点がある。」
彼女が指さしたのは、施設の地下にある隠された通路。
「この通路を通れば、施設の内部に潜入できる可能性があるわ。ただし、時間との勝負になる。防衛システムが作動する前に内部のコアを破壊しないと、私たちも巻き込まれるわ。」
大介が苦笑いしながら肩をすくめた。
「また時間との戦いかよ。スリル満点でいいけどな。」
雅史は土鍋を軽く叩きながら静かに言った。
「時間があればパッタイだって作れる。焦らず、確実にやるだけだ。」
旅立ちの準備を終えた三人は、最後の打ち合わせを終えると、それぞれ静かに思いを巡らせていた。
玲奈はカフェの窓際に立ち、ぼんやりと外を眺めていた。彼女の瞳には、不安と決意が交錯している。
「これが最後の戦いになるのかな…。」
その独り言に、大介が軽く肩を叩いて答える。
「最後だろうとなんだろうと、俺たちでやるしかねえ。お前も覚悟を決めろよ。」
玲奈は少し微笑みながら頷いた。
「分かってる。でも、どうしても緊張しちゃうの。」
一方、雅史は土鍋を磨きながら、これまでの戦いを思い返していた。いくつもの危険を乗り越え、幾度も倒れる寸前まで追い込まれた。それでも、自分を支えてきたのは、この土鍋と、仲間たちの存在だった。
「パンティを守る。それだけを信じてここまで来た。」
雅史は静かに呟く。
大介がそれを聞きつけ、少し笑いながら言う。
「お前、パンティって単語だけでよくそこまで熱くなれるよな。でも、まあ、だからお前についていく気になれるんだけどさ。」
雅史は笑い返し、背中に土鍋を背負った。
「これが俺のやり方だからな。」
その夜、三人はカフェを後にし、ゼロ地点への旅路に出発した。深い闇に包まれた道を進みながら、玲奈がタブレットで情報を確認する。
「施設の防衛範囲に入るのは明日の夜が最適なタイミング。それまでは慎重に進む必要があるわ。」
雅史は静かに頷いた。
「分かった。その間に作戦を練り直しておこう。」
大介が笑いながら答える。
「作戦って言っても、お前はパッタイ作ることしか考えてないだろ?」
三人の笑い声が、夜の静寂に響いた。だが、その背後には、次なる戦いへの覚悟が確かに感じられていた。
ゼロ地点への道のりはまだ始まったばかり。だが、彼らの心には一つの確かな想いがあった。
「この戦いを終わらせる。それが、次に進むための第一歩だ。」
静かな夜空の下、三人は力強く歩みを進めた――。
(第20話 終わり)
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