僕の世界支配計画
@tokinashifuratto
第30話 盗み聞き
「さて、じゃあ話そうか。簡潔に彼との出会いから。」
ちょっと窓辺に通りかかっただけなのになんかかなり重要そうな話を外でしてる。焼き肉食いながら。このまま聞いていいのだろうかと良心が痛むが心の天使と悪魔は悪魔のほうが優勢だった。
「世界各国が自分達の国だけが正しいと思っていたあの頃、少年も戦地に出されていた。私も例外ではなかったが、私と五味は能力も特殊でちょっと特殊な組織にいた。まあ要はスパイをしていた。さっき五味は煙を使ってきた、といったね。彼にはもう一つ能力がある。『信用』っていってね、相手の信用をコントロール出来る。五味が騙して私が刈る。いくつもの要人を殺したものだ。
かれこれ二年位そんな生活を続けていた。戦争も落ち着いてきていて、各国が手を結び始めた。だが腑に落ちないことに戦争の発端であり、まだ数が少ない能力者ばかりがトップになったんだ。しかもなかなかに厄介なね。日本はまだ他国との戦争を続けて痛んだがね、ある一人の男が私達の所にやってきた。三十代半ば位の歳で戦乱の世に似つかわしくない整った風貌だった。いくら名を訪ねても答えない。男は私に日本を治めないか、と言ってきた。聞けば戦争が終わった国全てこの男が統治者を選んだのだそうだ。五味も私もまだ義務教育も終わっていない歳だったからね、もちろん断った。
暫くして日本も戦争が終わり、新たな統治者が生まれた。私と五味は活躍を認められて、数人の統治者から世界を束ねる組織に入らないか、と誘われた。今のWEAだ。入って見れば最初から大佐だった。五味はそのとき抜けていったがね。私達のような若いやつも職員として働いていた。戦後の治安維持に奮闘していたらいつの間にか総統だ。実力、精神、経歴ともに優秀だってね。
総統になって、誰かから召集が来た。総統は世界の最高権力だ。誰からの召集かとても疑問だったのを覚えている。会場には、さっきのあの男がいた。そしてあろうことか男はこう話した。
『まず私の正体から話そうか。私の名はマモン・ビンスフェルト。君達十二人には今世界を治めて貰っているね。知っての通り世界は戦後の混乱期でいわゆる犯罪が増えてきている。由々しき事態だ。死者数も増える一方だ。このままだと我々にも不景気が回ってくる。そこで君らには治安維持活動をして貰いたい。具体的にはその年の出生者と死者が同じくらいがいいな。』
私以外の十一名も理解が追いつかなかった。一体この男はどの立場で我々に話しているのか。まだ青年だった私はまずおまえは誰なんだ、と噛みつくように問いかけた。そしたらなんの淀みもなく答えた。
『君らが神や悪魔という存在だな。人とは違う存在だ。今我々の世界でも戦争中でね、しかも奴ら困った事に人間を巡って争ってる。君等が持ってる能力、それは神だったものだ。神々が死にすぎた影響で人にもそれが渡るようになってしまった。私は神々の世界を止めたいのだよ。もっとも、賛同者は一握りだがね。』
あぁ、神とはこんなにも愚かなのだなと思った。戦争中、どんなに神に祈った事か。私達は害虫に豊作を祈っていた。ただ男は胡散臭いが神を止めるなら利用は出来る。ひとまず信じるしか無かった。」
「待って待って!そろそろ脳のキャパが足りなくなる。神なんて本当にいるの?」
「私の能力をその時使ったんだ。私だけで無く他の参加者も。一人たりとも効果を示さなかった。」
「それがリノの親ってことなんですかぁ?」
「ああ。」
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