74.スケルトンナイト戦
通路を塞ぐスケルトンたち。カタカタと歯を鳴らしながら、こちらに向かってくる。
「まずは任せて! 漲る魔力よ、砕けぬ石にその身を変え、敵を穿つ衝撃を放て。ストーンバレット!」
セシルが杖を構えて土魔法を発動させると、尖った石が無数に出現した。凄い速さでスケルトンに飛んでいくと、その衝撃でスケルトンの体がバラバラになって飛び散った。
「やあっ!」
そこにフィリスが飛び込んだ。体を回転させ、双剣で円撃を食らわせる。スケルトンたちの振った剣は弾かれ、その体に双剣が当たる。剣の衝撃でスケルトンの体はバラバラにはじけ飛んだ。
「残りは任せて」
それでも、まだスケルトンは残っている。素早く駆け寄ると、一メートルほどのメイスを振り回した。メイスはスケルトンの剣を弾き、その攻撃を無力化させる。メイスで豪快に叩きつけると、衝撃でスケルトンがバラバラになった。
これで立っているスケルトンはいない。地面には無数のスケルトンの骨が転がっていて、復活する兆しはない。ちゃんと浄化魔法が発動しているお陰だろう。
「よし。とりあえずはここはクリアですね」
「通路のお陰でスケルトンが密集してくれて、魔法を当てやすかったわ」
「まぁ、こんなものか」
「サクサクここまで来ましたね。四、五体にまとまって襲い掛かってくるから戦いやすかったです」
「小刻みに来て、本当に良かったわね。それ以上だと、動き辛くて大変だったわ」
「向こうも動きやすい人数を派遣してきたんだろう」
洞窟に入ってから、スケルトンは小刻みに襲い掛かってきた。大体四、五体ほどに別れていて、波状攻撃を仕掛けてきているようだった。でも、そのお陰で危ない場面はなく、全て打ち取った。
「きっと、この奥にスケルトンナイトがいるのね。今の私たちに上位ランクの魔物は倒せるかしら」
「みんなの力を合わせたら、きっと勝てますよ!」
「私頼みにはならないでね」
「そう言われると、ユイに頼りたくなっちゃうわねー。ってか、ユイが規格外に強いのが原因でしょ!」
「ユイさんの強さは本物ですからね。ユイさんを軸にして戦えば、私たちの戦力なんてオマケのオマケくらいですから」
戦力差があると、どうしても一番強い私が活躍してしまう。でも、それだと意味がない。私だけの戦力を当てにするのであれば、パーティーでいる必要がないのだ。
二人はパーティーを継続させたいと思っている。だったら、私にパーティーを続けさせる利点を示さなければならない。弱いままの仲間ならいないも当然なのだから。
「見てなさい。その内、私の魔法がないと困るくらいに強くなってみせるんだからね」
「私もそうなりたいですね。ユイさんが私無しではいられなくしてあげます!」
「ふーん。期待しないでいる」
「もう、ユイったら釣れないんだから」
「釣れたら釣れたでビックリしちゃいますけどね」
ふぅ、なんだかんだで会話をしてしまう。仲良くなるつもりはないんだけど……。まぁ、ある程度だし気にするほどでもないか。
適当に会話に参加しながら、洞窟の奥へと進んでいく。すると、大きな空間の場所に辿り着いた。その空間の奥を見ると、見慣れない姿をした魔物がいるのに気づく。
金属製の鎧を着て、盾と剣を構えている。視線を上に向けると兜を被っているスケルトンの顔が良く見えた。全身を金属の鎧で包まれたスケルトンナイトが二体もいる。
「へー、魔物が金属の装備を揃えている。これは厄介だね」
「一体かと思ったら、二体もいるんですね。私のような鎧を着ているので、攻撃があまり効かなそうです」
「あの装備で攻撃が通るのかしら?」
全身金属装備に盾か……生半可な攻撃じゃ全く意味がなさそうだ。きっと、金属のところを攻撃しても武器に付与した浄化魔法は届かない。どうにかして、骨の部分に攻撃を通して直接付与した浄化魔法を当てるしかない。
すると、スケルトンナイトが動き出した。剣を構えると、こちらに向かって走って来る。
「私は一体と戦う。二人はもう一体の相手をして」
「えっ、私たち二人でスケルトンナイトと戦うんですか!?」
「そ、そんな……上のランクの魔物と戦うのに、ユイなしなの!?」
「あの時の威勢はどうしたの? 強くなるんでしょ?」
「うぅっ……やります! セシルさん、やりますよ!」
「わ、分かったわよ! やってやるわよ!」
私は二人と別れて、迫って来るスケルトンナイトと対峙した。全身鎧を着ているのに、スケルトンナイトの動きは素早い。流石はCランクの魔物だけはある。
一メートルのメイスを構えていると、先にスケルトンナイトが攻撃してくる。素早い剣裁きで何度も振るってくる。明らかに普段のスケルトンとは格が違う。だけど、この程度なら対応できる。
お互いに何度も武器を叩きつけ、洞窟内には金属音がけたたましく響いていく。このままじゃ埒が明かない。振るってくる剣に合わせて重い一撃を叩きこんだ。すると、剣が弾かれて大きく仰け反るスケルトンナイト。
ここだ! メイスをその顔に叩きつけようと、大きく振った。だが、その顔面が盾で覆われる。メイスは盾で防がれてしまった。ふーん、そういうことをするんだ。
一度、スケルトンナイトと距離を取り、相手の様子を窺う。スケルトンナイトは落ち着いた様子で私を見据えて、攻撃をするチャンスを窺っている。冷静な判断はできるようだ。だったら、驚かせてやろう。
どちらともなく駆け出す。スケルトンナイトは剣を振り上げ、私は横にメイスを構える。そして、間合いに入る前にメイスを振った。その時、メイスを特大に変形させて一気に間合いを詰める。
咄嗟のことでスケルトンナイトは対応できない。特大のメイスは簡単にスケルトンナイトの体を捉え、その体を金属の鎧ごと叩く。渾身の一撃は全身鎧を着たスケルトンナイトを簡単に飛ばし、壁に叩きつけられる。
これだけで許すはずがない。身体強化した体で一気に距離を詰めると、地面に倒れたスケルトンナイトに特大のメイスを振り下ろす。ドシンッという音とともに、スケルトンナイトはメイスによって叩き潰され、浄化魔法がその体に通った。
しばらく様子を見てからメイスを持ち上げる。スケルトンナイトは骨がバラバラになって、完全に沈黙していた。どうやら、無事に倒せたみたいだ。金属の鎧と盾が面倒だったが、意表をついたら簡単だった。
さて、私は終わったけど……二人はどんな様子かな? 視線を向けてみると、スケルトンナイトとフィリスが剣同士をぶつけあっていた。
「今です、セシルさん!」
「行くわよ! 漲る魔力よ、砕けぬ石にその身を変え、敵を穿つ衝撃を放て。ストーンバレット!」
フィリスがスケルトンナイトを抑えている間にセシルが詠唱を完成させる。尖った石が無数に現れると、スケルトンナイトに向かっていく。その行先は……無防備な足元だった。
骨がむき出しになっている所を無数の尖った石が襲い掛かる。その衝撃にスケルトンナイトは立っていられない。足を取られ倒れそうになるところを、今度はフィリスの双剣が狙う。
「はぁっ!」
双剣が狙った先にあったのは……スケルトンナイトの顔面。突き出された双剣がスケルトンナイトの顔面に当たる。すると、スケルトンナイトの体がビクリと震えた後、足元の骨が崩れて地面に転がった。
ガラガラと崩れていくスケルトンナイト。どうやら、ちゃんと浄化魔法が通ったみたいだ。その姿を確認すると、フィリスは力なくその場に座り込んだ。
「はぁ、はぁ……や、やりました……やりましたよー!」
上のランクの魔物を倒して嬉しかったのか、声を張り上げた。そこにセシルがヨロヨロと近づき、一緒になって地面の上に座り込んだ。
「最高のトドメだったよ、フィリス」
「そういうセシルさんこそ、ナイスアシストでした」
なんとか二人が協力し合って、スケルトンナイトを倒したみたいだ。二人とも嬉しそうな顔をして、お互いをの事を称えていた。
その様子を見ていると、二人がこちらを向く。
「ユイさん、見ててくれました? 私たち、やりましたよ!」
「どう? 私たちもやるでしょ?」
とても嬉しそうな顔をして報告してきた。
「見てたから、分かってる」
二人の頑張りは分かった。上のランクの魔物に勝つなんて、普通なら無謀な事だろうと思う。だけど、それを二人がやり遂げた。だから、ここは大人しく称賛しておこう。
「……良くやったと思う」
私が言える精一杯の言葉を送ると、それだけで二人はとても嬉しそうな顔をした。
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