僕の心の鍵をこじ開けてくる義妹たち
風親
第1話 義妹プロローグ
内藤楓は、異国の血が混ざった金色の髪に紺碧の瞳を持つ少女だった。
その特徴的な髪と整った容姿は、普通の住宅街の中を歩いているだけでも、人目を集めてしまう。
制服の白いブラウスに真紅のリボンが映え、プリーツスカートから伸びる長い脚が印象的だ。いつもは冷静沈着な彼女だが、今日は少し表情が曇っている。
いつもの時間、いつもの住宅街の中のファミレス。
窓際の四人掛けのテーブルには、歩いてきた楓と先に待っていた親友の小林美咲、山本真由美がいた。
先月までと違うのは今日は三人とも高校の入学式のあとで、美咲だけは2人とは違う制服になってしまったことだった。
カラフルなパフェを前にして楽しげに会話を交わしていたが、その中で美咲が不意に口を開いた。
「ねえねえ、楓ちゃん。お義兄さんができたって本当なの?」
小林美咲は3人の中では小柄で小動物みたいな可愛らしい少女だった。
今も真っ直ぐに楓を見つめる瞳は好奇心に満ちている。噂を吹き込んだであろう隣の真由美も興味深そうに身を乗り出している。楓は思わず顔をしかめ、小さくため息をついてから答える。
「うん。まあ、そうなの……」
「えっ? どういうこと? 楓ちゃんのママ、お兄さんを産んだの?」
美咲の問いに、楓は呆れたように首を振る。
「今から産んだら弟か妹でしょ……」
人の家に対する好奇心を隠さず身を乗り出す美咲に対して、楓は冷静に、でも呆れた感じで答えた。
「え、じゃあ、楓ちゃんのママたち、離婚して、連れ子がいる人と再婚したの?」
「してないよ。うちの親は今でも仲良しで、目のやり場に困るくらいにラブラブだよ」
楓の言葉に、美咲は『じゃあ、どうして?』と首をかしげた。真由美も話には興味があるようにストローをくわえたまま、楓を見つめたままだった。
「なんか、遠い親戚でさ……ご両親が亡くなっていて、うちで養子にすることになっていたんだって……。それも、ずっと前から決まってたらしいの」
「いきなりで大変だね。でも、同年代のお義兄さんなんて楽しい生活になるんじゃない?」
真由美が楽しそうに言うと、美咲も目を輝かせた。
ただ、当の楓はあまり楽しくなさそうに憂鬱そうな顔をしていた。
何かあったのだろうかと真由美と美咲は顔を見合わせる。
「わかった! きっとこうなんでしょ。俺様なお義兄さんと最悪な出会いをして、壁ドンとかされて、楓ちゃんはビンタをしたけれど、次の日から義兄のことが気になって仕方ない……って感じでしょ」
想像を膨らませる美咲に、楓は苦笑する。
「……なにそれ、美咲が読んでる少女漫画でしょ?」
そんなことあるわけないと笑う。
だが、表情が曇るのを隠せない。
「ただ、どっちかっていうと、最悪なことをしたのは私の方かも……」
そう呟いて、楓は荒れた金髪を指で梳いた。金色の髪が日差しに煌めく。何かを思い出したように、こめかみに手を当てる仕草をする。
「ああ、そっちなんだ」
美咲と真由美は心配そうに楽しげな表情を引っ込め、何があったのかを聞くための沈黙がしばらく流れた。
次の更新予定
僕の心の鍵をこじ開けてくる義妹たち 風親 @kazechika
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。僕の心の鍵をこじ開けてくる義妹たちの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます