第6話 遠い平和、近い日常
首都ルディアにはベールストリートのほかにいくつかの街やエリアがいくつもある。
サラリーマンが多く集うビジネス街、若者たちが集うショッピング街、郊外には住宅街が立ち並んでいる。
シラゴは平日の昼でも多くの市民たちが行きかうショッピング街を歩いて行った。
雑踏を抜けると少し小ぢんまりとした商店街が見えてきた。
この商店街はシラゴのお気に入りの商店街だった。
プライベートで何か雑貨を買うときや、食料品
を買うとき顔なじみとなったシラゴにとって
は色付けてくれるいいお店が立ち並んでいる。
中に入っていくと新しくできた店がセールを行っている。
少し進んでいくと逆に閉店してしまった店も
あった。
ぶらぶらと歩いていると立ち食い屋台が目に入った。
外国からやってきたホットドックというものらしい。
最近は若者たちの間で立ち食いが流行っており、マナーを厳しく教えられた大人たちの顰蹙を買っているのだとか。
16歳のシラゴ自身は立って食べることは別に
悪いことではないので屋台のおっちゃんにホ
ットドック2本頼んだ。
ホットドックができるまでの間、シラゴは
ふと壁に貼ってあるポスターが目に入った。
政府が発行した種族融和を呼びかけるもので
あったがそこに映っていたのは特権階級のヒ
ト族とエルフの少女が仲良く手をつないでい
るものであった。
この国にはつい最近までヒト族つまり人間と
エルフが特権階級として制度の上に君臨していた。
その後革命が起きたがうまいこと権力を維持している層がいるので根本的なところは現代化している以外何も変わっていないのだ。
出されたホットドックを食べながら考えてい
るとシラゴに通信魔法が届けられた。あて名
はサイキからだった。
『仕事が入った。今すぐ帰ってこい。』
だった。
ウチは小さいからこういう依頼はまたとないチャンスなのだ。
シラゴは残りのホットドックをほおばり、屋
台を後にした。
帰るために財布の中の小銭を確認したがホッ
トドックを買ったせいかギリギリだった。
シラゴが事務所に帰るころにはすでに依頼
者の話は終わっていてシーカの姿はない。
きっと情報を得るために出ていったのだろう。
依頼者はまだ応接室にいて、サイキがうんう
んとわんわんと泣いている依頼者の女性を手
を握り、背中をさすりながら優しくなだめて
いる。
そんな情景を扉越しに覗いているとロドクが
兄の手を引っ張り、別室へ連れていかれた。
自分たとの憐憫の目が彼女に見られたら本人
に対して大変失礼に当たる。
「兄さん、シーカ兄ちゃんからの伝言。この
メモ読んで準備しとけって。」
メモはシーカの字で書かれた依頼者の半生と依頼内容と今回の標的に関してだ。
依頼者はシラゴと同じ16歳魔人族の女性、幼
少期口減らしの一環として人間とエルフのダ
ブルつまりハーフエルフのある議員の養子と
なった。
しかし養子とは名ばかりでその実態は議員の
醜い性のはけ口にされてきたという。
何度も使用人に訴えても聞き入れてもらえず、
むしろなぜしゃべったのかと折檻されたのだ。
そいつは外面がいいらしい。ほかにも同じよ
うな被害に遭っている子供は当時からたくさ
んいたがエルフだからという権力によっても
み消されてしまった。
革命のときに脱出することができ晴れて自由
の身となったがその直後に戦争が起きここま
でこれたのは彼女1人だけという。
新進気鋭のマスメディアに頼ろうとしたが、
あのおぞましい記憶が掘り返され、さらに自
分の受けてきた被害が周知されるのではない
かと怖くなり訴えることができなかったのだ。
八方ふさがりの彼女をシーカが見つけこの依
頼に至ったわけだ。
「つまり今夜その例の議員をぶっ殺してほしいってわけ。」
ロドクがどこかかわいそうな目で依頼者のいる扉を見つめる。
しばらくすると扉がキイイイと音を立てて開
く話が終わったのだろう。
依頼者が帰っていった。
シラゴは仕事の準備に取り掛かった。
その日の深夜例の議員が商店街を通り抜け
て歩いて行った。
議員はお酒がはいっているのか千鳥足でふら
ついていてる。
本来ならば車で自宅まで帰る予定だったが、
急に車が故障してしまい、秘書が歩いて帰る
という提案をしてきたのだ。
深夜の商店街は人通りがほどんどおらず、議員
の陽気な声が響いていた。
この時代の車には故障がよくあることで秘書
が工場に修理にもっていくというので彼とは
別行動になってしまった。
急に歩いて帰るなんて突拍子もない発想に秘
書らしさが感じられなかったが、そんな時も
あるし、それ以外は本当に優秀なやつなので
議員は少しも疑いもせず秘書の提案に乗った。
「車がこ、、こしょ、故障するなんてな~」
へべれけ声でいいながら議員は勢い良くしゃべる。
そんな彼を4人のボディーガードが距離をとり
ながら護衛していたその時だった。
護衛の1人が音もなく倒れこんだ。
街燈もすくなくほぼ真っ暗闇のなか、1人また
1人と倒れていった。議員がそれに気が付かず
商店街を抜けようとした時、
「あんたが例のロリコン議員?」
「ああ!?誰に物言ってうぐがあっ!!」
シラゴは議員の首を締め上げる。
殺気が感じ取れたのかさっきまでの威勢は消
えて命乞いのような声を発しだした。
「お・・・おい何しているお前たち・・・何
しているんだ!」
「邪魔だから始末にしたに決まってんでしょ」
シラゴが冷たく言い放つ。議員は怯えたよう
な目で
「わ・・・ワシは国会議員だぞ・・・?こん
なことしてただで済むと思っているのか?」
「それで?権力を振りかざせば許してもらえ
るとでも?俺はこれが仕事だ。」
シラゴは手を刃に変形させて胸に刃物を突
き刺して、陰茎までに刃をのこぎりに変え、
下に引きながら下半身を裂いた。
事を終えたシラゴは死体を眺めながら通信
魔法で兄に連絡した。
「兄さん終わったよ。早く片付けしに来て。」
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