【覚醒の夜明け】

アルフォスを間一髪助けたノルンは"隠し通すはずだった"鷹龍の目を発動したが、何故か【神眼】へと覚醒していた。

ノルンはその違和感に気づいていたが、その状況を利用しない手はないとさらに攻撃を仕掛ける。

再生途中のケルラにダガーを、首元を抉(えぐ)るように何度も刺す。


ケルラ:「あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!い゛だい゛!やめてよおおお゛゛!!」


首を何度も斬られ悶えるケルラに追い討ちをかけるノルン。

しかし顔を再生していたベルラが背後からノルンに爪を伸ばし、とてつもない速さで襲いかかる。

だが【神眼】へと覚醒したノルンは背後の視点からその攻撃を察知し、避けたベルラの攻撃がケルラにそのままぶつけられてしまう。


ベルラ:「ー!?……ケ…ケルラ……! どけぇぇ!!」


ベルラの鋭く長い爪がケルラの首を跳ねてしまう。

首元から血が噴き出し、ベルラの顔に降り注ぐ。


ベルラ:「て……てめぇ……ハハッ……アハハハハ……!!ゼッテェ殺すっっっ!!!!」


ノルン:「はぁ……はぁ……後二人……」


アルフォス:「ノルン……その動き、まるでシエルじゃないか……いったい、どうなって…」


ノルン:「黙ってアルフォス、この事…絶対秘密だから!!」


アルフォス:「お……、おう」


ノルン:「立てる?アルフォス、一緒に戦ってほしいんだけど……はぁ…はぁ……」


アルフォスは立ち上がり再び戦闘態勢にはいる。


アルフォス:「なんかよくわかんないけど、今は目の前のこいつらをぶっ殺すか……!」


ノルン:「私はあのベルラって奴を殺る、だからアルフォスはあの長女をお願い……!」


アルフォス:「任せろ……ロイの仇は俺がとる……!」


シオン:ー私……なにしてるの……ノルンも、アルフォスも、ああして戦ってるのに……私は涙を流してただ座って見ているだけ……こんなんじゃ……"顔向け出来ないよ"……"あの人に会うまで"……絶対死ねない……!!


シオン:「待って! ……二人共」


ノルン:「シオン……!?もう大丈夫……なの?」


シオン:「うん、私も戦う……考えがあるの」


ー・・・・・一方シエル達……


目の前に現れた囚人の少女が出す謎の攻撃に手を焼いていた……。

距離を取り、体制を立て直す為一度建物の屋根に登った。


シエル:「いやぁ〜参ったね〜、近づけないんじゃどうしようもないよね!……アハハ!!」


レイン:「なーに笑ってんだバカ!!アハハじゃねぇっつの!」


デイン:「はぁ……はぁ…しかしこの状況、本当に笑うしかないな……」


マキシス:「近づけば見えない何かに首を絞められ、周りにはホムンクルスの様なバケモン……ったく、さすがにキツイぜ」


黒い者は何度倒しても次から次へと生成され、体力を幾度となく削られる。

そして少女には指一本触れることが出来ないという最悪の状況にレイン達は頭を悩ませていた……。


シエル:ー月が隠れてる……地面は一面影、さぁどうする……あの少女、最初は魔女かなにかだと思ったけど違うみたいだし、あの目なんかとくに……?!……!ー


シエル:「わかった!みんな!!」


レイン:「あ?何がだ?」


シエル:「レイン、"女神族"が【輪(りん)】を失ったらどうなるか知ってるかい?」


レイン:「は!?……えーと……えーと…人族となるか神への贖罪(しょくざい)に生きる罪神(アーグル)となるか……だっけか?」


デイン:「罪神(アーグル)……神の掟に背き、各神の欲を満たす事で神への罪滅ぼしをするというあれか……」


レイン:「もしかしてお前……あれが罪神(アーグル)だってか?」


シエル:「うん、そうだよ…しかも最悪のね、死を司る罪神(アーグル)だよ」


【罪神(アーグル)】

神の掟に背き女神の【輪(りん)】を奪われたとされ、四の罪神がこの世界に存在しているとされている。


【恐怖】【虚無】【天災】【死】

死を司る罪神は生の魂を喰う冥府神の為、死者の魂を操り冥府へと誘(いざな)う事で罪が許されるとされている罪神である。


デイン:「恐怖であればよかったのだがな……まさか死とは……厄介だ」


シエル:「油断したら冥府行き、だから絶対失敗できないよ三人とも!」


三人は覚悟を決め無言で頷く。


ー作戦はこうだ……

死の罪神は闇を住処とし闇に生きる者。

それ即ち影を利用して黒い奴を生み出しているに違いない!

そしてあの見えない攻撃は恐らく霊魔の仕業だ……

霊魔は俺の鷹龍の目でもさすがに見えない。

となると……影だ、月が雲から出た時が好機!

霊魔は影となり映る。

ロキシルの話ちゃんと聞いといてよかった〜……ー


デイン:「考えはあるのだろうな……シエル!」


マキシス:「ハッハッハッ!信じてみようぜ!面白ぇしよ!」


レイン:「はぁ……手に負えねぇよ……」


攻撃をしかけない以上少女からの攻撃は無く、あくまで邪魔者を排除するという目的なのだとシエルは理解していた。


その予想どうり少女は黒い者を引き連れ、真っ暗な街を徘徊しているだけ。

息を潜め月が出るのを待つ……。


レイン:ー月が出るのを待ってるのか……シエル、でもどうやってあいつに刃を当てるつもりだ……ー


ゆっくり……ゆっくりと雲から月が顔を出す……。


シエル:「今だ!みんな!!」


瞬時に屋根をつたい少女の元へ急ぐ。

月の灯りに照らされた少女の影には、少女を囲む大きな影が見えシエルの予想が的中した事を三人に伝える。

そして影を見ることで少女の攻撃を避ける事が可能になり一気に距離を詰める。


罪神の少女:ー!??……ー


少女の首にダガーを深く刺すシエル。

少女は唖然としたままシエルを見つめる……。


シエル:「やっと届いたよ、君に俺の刃が……」


罪神の少女:「な……なぜ……ありえない……」


シエル:「ありえちゃったんだな〜これが!……レイン、今だ!!!」


シエルの呼び掛けにレインが高速で少女の両手を斬り落とす。

しかし、妙な事に少女からは一滴も血が出ず、シエル達は戸惑う。


デイン:「どうなってる……!?」


シエル:「ー!?まさか……!」


次の瞬間地面から黒い棘が飛び出しシエルの腕を貫いてしまう。

少女は本体ではなく影の中に隠れていた者がいることに気づいた時には既に遅かった……。


シエル:「……ありゃりゃ、やちゃった……」


ゆっくりと地面から正体を現す死の罪神、その正体は少女の皮を被った成人の女性であり、黒い衣装に身を包んだ罪神の姿だった……。


死の罪神:「貴様……覚えているぞ、あの時我が主(あるじ)を殺そうとした愚者(ぐしゃ)……忘れはせん……」


シエル:「さすが……元女神、その美しさは罪だね……」


レイン:「シエル!動けるか?!」


シエル:「ちょっと…無理みたい」


シエルの体は霊魔に強く掴まれ、身動き一つ取れない状態だった、しかしそれに気づいたレイン達も、既に霊魔の手に掴まれ動くことが不可能だった……。


レイン:「しくじった……相手が悪すぎる……」


デイン:「神相手とはな……ぐっ……死んでも悔いはない……」


マキシス:「悔いしか残らねぇぜ!!くそぉぉ!!離しやがれ!! 神の一人でも殺さねぇと死にきれねぇえ!!」


死の罪神:「愚者(ぐしゃ)めが……冥王神(めいおうしん)様にその魂を捧げるのです……」


シエル:ーなにか打つ手は……いや、ないな……神ね…流石に人間じゃ適わないか、、ー


ゆっくり……ゆっくりと地面から出てくる影へ飲み込まれるシエル達……絶体絶命の窮地にしを悟った……。

ー……しかし、突然霊魔が物凄い速さで斬られ、その一瞬の出来事に死の罪神は状況を理解出来なかった。


死の罪神:「!?ーなんだ!!?何者だ!」


シエル達を掴んでいた霊魔が消え、シエル達は窮地を脱した。

あまりにも急な出来事にシエル自身も理解できなかった。


シエル:「誰!?…… アルフォス!?」


レイン:「どう見てもあれは男には見えねぇよシエル……」


デイン:「っ!! まさか、エルナか!?」


屋根の上から長い金髪をなびかせ、月の灯りを反射させる白美の鎧を着たその女性は、どうやらデインの知る人物だったようだった……。


マキシス:「なに!?エルナだと……!?どうしてこんな所に」



エルナ:「デイン様、マキシス様…ご無事で何よりです。ーギルガメス・エルナ・ルスタレム、貴方々をお救いする為ここに参りました」


死の罪神:「き……貴様!!よくも私の邪魔を!!許さん!!」


エルナ:「"神如き"我が騎士たる信念で斬り殺してやりますよ」


死の罪神が霊魔の手をエルナへと伸ばすがエルナは何故かそれを避け、瞬時に死の罪神の目の前へと移動していた。


エルナ:「おや?こんなにも近くに来れてしまいました、隙が多いですね!」


死の罪神の中心を刺しそのまま上へと斬りあげる。


死の罪神:「ぎぇええええええ゛゛!!ゆ…許さん……私を愚弄し、こんな屈辱を与えられるとは……許さん!!」


エルナ:「そうですか、貴方に許される筋合いはありませんが、貴方は許されたくて仕方の無いようですね」


更に追い討ちをかけるべく、何度も幾度となく死の罪神を斬る、しかしある異変にシエルが気づく。


シエル:「レイン、おかしいと思わないかい?あれが本体だと思ったんだけど、おかしいよね、血が出てないんだ…」


レイン:「マスターが言ってたな、血を持たぬ神はいないって…てことはだ、本体はどこにいる?」


デイン:「ん?…シエル!あそこを見ろ!!」


デインが指さす方向には静かに走り去る少女がいた。

すぐに少女の元へ駆けつけ、手を掴んだシエルは絶対に逃がさないようダガーで足を斬った。


少女:「ああ゛゛っ!貴様ら!」


シエル:「やっと捕まえた!結局、本体は君だったんだね…あの存在は全て影の幻影、なかなかいい手だとは思うよ!」


少女:「離せ!私に触れるな!!」


シエル:「攻撃、出来ないんだね?彼女があそこで君の幻影と戦っているから君は俺に攻撃できない。そうだろ?」


少女:「・・・・」


シエル:「教えて貰おうか、君がここで何をしているのか、ラボラスがなぜここにいるのか…」


シエルの質問に少女は答えようとせず、驚く事に目の前で舌を噛みちぎったのだった。


シエル:「君!!なんてことを!!!」


少女:「はぁ…はぁ…あにも……はあふきはあい……」


シエル:ーこれ程の忠誠心を……ラボラスはあの時、なぜこの子を連れていった、女神族だと知ってて…?いや、でもあの時の反応はわかっていないようだった、

曖昧な情報だけでこの子を利用しようとするほどあいつは短絡的(たんらくてき)じゃない、わからない……何が目的なんだ……ー


深く考え込んだシエルは気付かぬうちに手を緩めてしまい、少女は影の中へと消えていってしまった。


シエル:「しまっ……」


レイン:「なに逃がしてんだどアホ!!」


デイン:「シエル、なにか考え事をしているようだったが、わかった事はあるか?」


シエル:「ごめん……何もつかめなかった、あの子いきなり舌を噛みちぎったんだ、余程言いたくなかったんだろうね…」


マキシス:「惨(むご)いな……」


エルナ:「デイン様、お役に立てず申し訳ありませんでした。」


デイン:「いや、そんな事はないエルナ、お前が来てくれなければ俺たちはとっくに死んでいただろう」


エルナ:「お褒めに預かり光栄ですデイン様。ー?デイン様、マキシス様このお方はもしや……」


エルナはシエルを強く見つめ、シエルはそれに困惑する。


シエル:「え、えーと……なに?」


デイン:「エルナ、お前が想像している通りの人物だ、俺達は出会う事が出来たんだ」


エルナ:「あ、あ、あなたが……!!お会い出来た事、深く感謝致します」


突然シエルの前で手を胸に、地に膝をつけ頭を下げる。

シエルはどうしていいか分からず、あたふたとしてしまう。


シエル:「出会えた?どゆこと?俺そんなすごい人物じゃないよ??」


デイン:「すまないシエル、詳しいことはまた話そう。とわいえ、エルナ…なぜここに俺達がいるとわかった?」


エルナ:「ロンプルクへ訪問していた我が国のアサシン達から御三方がいると報告を受け、王の命によりここへ参りました」


マキシス:「父上が?ったく、心配性だな……」


デイン:「まぁ、おかげで命がこうしてあるわけだ……いいじゃないかマキシス」


レイン:「てか、どうするんだ?逃がしはしたけど、犠牲者は出なかったみたいだし…とりあえず城へ戻るか?……うわっ!な、なんだ!?」


突然目の前に一人のアサシンが現れ、エルナに何か伝える。

するとエルナの顔色が一変し、何か嫌な予感がしたシエル達は息を呑む……。


デイン:「どうしたエルナ…何があった!?」


エルナ:「報告致します、デイン様達の報告をしたアサシン達三名が何者かに殺されたと……」


デイン:「……!?ーそんな、その者達はどこにいた!?」


エルナ:「王城近くです。つい先程、通信石(つうしんせき)が途絶え見つけた時には既に……と」


エルナの言葉を聞き、無言でシエルはその場を離れる。


レイン:「くそ!!五人共……生きてろよ!!」


シエル:ー頼む……皆無事でいてくれ……!!ー


ー・・・・・一方ノルン達


シオンの作戦が幸をなし、フェンレール達にかなりのダメージを与えていた……。

アルフォスとノルンが三姉妹にシオンを意識させないよう攻撃を仕掛け、その隙にシオンが糸を張り巡らせた。

そして罠の場所へ三姉妹を誘い込むことに成功し、三姉妹を細かく切断したのだった……。


アルフォス:「はぁ……はぁ…これでも死なないのかよ……腕やらなんやらが動いてやがる……」


ノルン:「どうすれば……いいの……」


シオン:「こいつら……本当に不死身なの……?」


フェンレール:「お……が……ガ……げ……」


ケルラ:「わたしの……からだ……どこ……」


アルフォス:「踏み潰せば……消えるのか……残忍だとは思わない……ロイをあんな目に合わせたんだからな……」


ノルン:「アルフォス……私にはそんな事出来ない……」


アルフォス:「見ろよ……あんなにウザかった化け物共が……今はこんなにもちっさいんだ、俺達はアサシンだ……殺るか…殺られるか……」


アルフォスがしようとする行為に目を向けられない二人は、無言で視線を外す。

アルフォスは一つづつ足で三姉妹の肉片を踏み潰し、

三姉妹は声を荒らげる。


ベルラ:「あ゛あ゛あ゛あ゛!」


グブェチュッッ……グチュッッ!!


ケルラ:「ぃいいいいい゛……やめで……やめでぇぇ!!」


シオンとノルンは涙を流し、耳を塞ぐ。

しかし耳を塞いでも聞こえてくる叫びに、苦しく…締め付けられるような感覚に襲われ、二人は吐き気が止まらなかった……。


フェンレール:「せ……せん……せ……だス……げで……」


アルフォス:「じゃあな……死んで償いやがれ……」


フェンレールの頭を踏み潰そうと足を上げた次の瞬間、アルフォスの視界が真暗な闇で覆われ身動きが取れなくなってしまう。


アルフォス:「なんだ……!?!くそ!前が……見えね……!!」



???:「あ〜……ったくよぉ〜」


シオン:「ー!?……この声……」


ノルン:「そん……な……ふざけないで……」


エレボロ:「あらら〜、んだ〜?このザマはよ〜エハハ!ひでぇ〜ひでぇ〜」


アルフォス:「あいつ……シエル達の報告にあった魔人族か……!?」


エレボロ:「お前初めて見る顔だな〜!結構派手にやるじゃ〜ねぇかよ、ちょっと仕返しだ……」


エレボロは闇を鋭くさせ、アルフォスの胸目掛け素早く伸ばした。


アルフォス:「早い……!避けられな……」


諦めかけたアルフォスの目の前に紅い髪がなびく。


エレボロ:「おほ?……よぉ〜、また会ったな先生……」


アルフォス:「シエル……、お前」


シエル:「なんとか間に合った……と思いたかったよ……遅くなってごめん皆……」


エレボロ:「先生ぇ〜、ヨルムには会ったか〜?あいつ会いたがってたからよ〜?」


シエル:「あぁ、会ったよ……とってもいい子だった。」


エレボロ:「はぁ…本当問題児だなあいつは、兄貴に似てわがままだしよ〜、色々聞けたか?」


シエル:「いや……何も聞いてない、お前ら……ここに何しに来たんだ」


エレボロ:「俺は来る予定じゃ〜なかったんだけどな〜、こいつら殺されちゃ色々困んだよ〜……詳しくは言えねぇ〜けどな……エハハ!」


シエル:「早く消えろ……また殺り合うかい?」


エレボロ:「いいや〜?今日はおさらばだ先生ぇ〜、次会った時は本気でやろうぜ?そこのお前もな黒髪〜」


デイン:「次は負けないぞ……影やろう……」


エレボロ:「エハハ!影じゃねぇっつの!んじゃあな〜……」


エレボロは三姉妹の肉片を回収しそのまま暗い街へと消えていった……。


アルフォス:「シエル……すまない、助かった……」


シオン:「……シエル……ぅぅ……ごめん……ごめんなさい……」


シオンは血まみれのままシエルへと抱きつく。

無言で頭を撫でるシエルは辺りを見渡し状況を理解した。


シエル:「……ロイ……すまない……ゆっくり、眠ってくれ……」


ノルン:「シエル……無事で良かった……」


シエルはノルンの目を見て驚く。


シエル:「ノルン……その目……」


ノルンは【神眼】であることを忘れており、即座に解除する。


ノルン:「な……なんのこと……?」


シエル:「え……ううん…なんでもないよ」


シエル:ー今……確かに目が紅かった気が……ー


デイン:「ミリス……酷い傷だ……こんなことが……」


マキシス:「してやられたってか……あいつら繋がってやがるのか……?」


レイン:「ミリス……ロイ……くそっ……くそぉぉっ!!」

レインは悔しさの余り、床を強く殴る……。


シエル:「シオン…ロンロンは……無事かい……?」


シオン:「うん……この部屋の中に……」


シエルはロンディネルの部屋の扉を優しく叩く。

ゆっくりとロンディネルが扉を開け、涙を流しながら

床に崩れる。


ロンディネル:「申し訳……ありません……私が……私が無力な……ばかりに……あぁ゛……ぁああ゛ぁぁ……!」


シエル:「ロンディネル……立ってくれ……」


ロンディネル:「……え……」


シエル:「君は立っていなきゃいけない……立って約束してくれ……必ずこの国を守り通すと……」


ロンディネルは力を入れ立ち上がる。

涙を流しながらシエルを真っ直ぐ、強く見つめ宣言する。


ロンディネル:「……今ここに宣言します……私はこの国を……生ある限り守り通します……!父から受け継いだこの国の民を……誰にも手出しさせません」


シエル:「ありがとう……君が倒れたら……死んでいった者達が眠っていられない……だから、君は立って……強く生き、この国の王として剣を握っていなきゃいけない……その事を強く胸に刻んでいてほしい」


ロンディネル:「はい……先程の弱音をどうかお許しくださいシエル、貴方の言葉に目を覚ます事が出来ました。」


シエル:「それでいいんだロンロン……」


アルフォス:「王よ……すまない、俺の弟をこの国で見送ってくれないか……」


ロンディネル:「貴方は……はい、わかりました。この世界で死した者はこの世界を照らす星となると言われています。彼も、この世界の未来を明るく照らしてくれることでしょう……、明日にでも星葬礼(ほしそうれい)を行わせて下さい」


アルフォス:「感謝する……」


血で染められた廊下に立ち尽くすシエル達……

仲間を失った悔しさが、怒りが……何にもぶつけられない思いがシエル達にのしかかっていた。


ヨルム:「雨……降るんだねここ……泣かないで、せんせ……」



何も知らぬ街には、優しく雨が降っていた……。



【泣いている心】へ続く……。

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〜アサシンズ・クラウン〜【暗殺者の王冠】 空の上の猫 @soraneko2525

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