出会い【二】

ロキシルからデイン達の捜索依頼を受け、

アサシンズギルドの団員総出で王国周辺を手分けして探す事になった…。


そして俺たち3人は酒場で情報を

集めた後、デイン達が最後に訪問していたという情報を受け、

北の村【クラノース村】へと

来ていた…。


この村は王国を代表する農場で栄えた村で、他国との貿易も行い

王国の稼ぎ柱の一つとなっている村である…。


「にしても綺麗な村だなぁ〜」

「気が緩みすぎだシエル…デイン達に何かあってからじゃ遅いんだ…一刻も早くもっと手掛かりを掴んで何があったのか知らないといけねぇんだぞ…!」


レインが焦っているのはずっと分かっていた...でもその焦りの理由は、

ギルドで二番の強さを誇るデインと三番のマキシスがいるにもかかわらず2週間もの間姿を消しているからなのか、それとも敵の強さが

デイン達を殺せるくらいの強さなのか…または両方有り得てしまうかもしれないからなのか…俺には分からない、でも…こんなに焦るレインは珍しい...。


普段は俺たち3人の中ではかなり冷静な立ち回りをしているし、落ち着いて考えれば誰よりも行動が的確で迅速なレインだ…。


そんなレインがこんなにも落ち着きがないのは何か勘づいているからなのか……?


「なぁ…レイン、デイン達の事心配か…?」


「当たり前だろ……逆にお前は心配じゃねぇってのか…?シエル」


「まぁ…心配はしてないかな⋯!

だってアイツら絶対殺られねぇもん...そうだろ?俺と怠慢張っても

互角かそれ以上……

毎日毎日鍛練鍛練の戦闘バカだし、レイン……お前アイツらのこと甘くみすぎてるぞ」


「シエル……レインはね……」

シオンは俺の横で少し小声で話そうとすると、レインはなぜか顔を赤くしてシオンの手を瞬時に引っ張った…。


「え……レイン……お前まさか……」


「シエル…察してあげて…?レインはねデインの……」


「お前デインが好きなのか…?!!」


・・・・・・。

「シエル…てめぇ本気で殺すぞ」


あれ……図星?めっちゃ怒ってるんですけど……

シオンはほけぇ〜っとした顔で俺を見ていた。


「シ…シエル……流石のレインもそれはないかなぁ〜……。」


「シオン!それ以上は言うなっ…!!このバカには誤解をうんでしまう…!そもそもシオンの伝え方が危うい…」


「え……レインまさか」


「あぁ…、そうだよ…そのまさかだよ…悪いか…?!」


「そっか……そういうのも受け入れないとな…」

あれ…なんか違う………そう言いたげな顔をするレインと

首を傾げるシオン……なんかかわいい……


「マキシスがタイプだったなんてなぁ……」

・・・・ブフッッ…

「おい…!!?シオン今笑った!?笑ったよね……?!」


レインは吹き出したシオンを指さす...。


肩をプルプルさせ、無言のシオン


「シオン〜笑っちゃダメだぞ、レインが可哀想だろ…?」


頬をぷく〜っと膨らませ肩をプルプルさせたまま首を横に振るシオン……

あれ……?違うの?…


「絶対……!!絶対誰にも言わないって約束しろシエル!」


え……どっち?あってるの?

違うの……??


「こたえろ…!!」

「あ……あぁ、わかったよ…約束するけど……」

「ぷはぁ〜…!レインはミリスが好きなの!」


レイン……絶望の顔


ー言うの俺じゃないのぉぉぉぉ…?!ー


そう思ってる顔だよねその顔は…口が塞がってないぞレイン

なぜかものすご〜く満足気なシオン


「あ……ミリスか!なぁ〜んだ!」

「なんだじゃねぇよ!!

ミリスしかいねぇだろ!

なんでデインとマキシスになるんだよ!そっちの方がおかしいわ!!」


ミリスはデインとマキシスの妹で桃色の髪のスラッとした少女である…。


3人の中でずば抜けてスピードがあり、ギルド随一の双剣使いだ。

そして美少女…。レインが好きになる気持ちもわかる。シオンともとても仲が良く普段は一緒にいることが多い。


「ミリスなら尚更大丈夫だろ、デインとマキシスは妹のミリスが大好きだから…!二人なら自分を犠牲にしてでもミリスを護るだろうしな……。

いや〜それにしてもまた大変な子を好きになってしまったな〜レイン」


「わかってるっつの……だからこそ俺も強くなってあの二人に認めて貰わないといけない」


「そ・れ・と!仮をつくっておきたいんだろ…?お前」


「ぐっ……別にそういう訳じゃねぇし……。」

お前今…ぐっ……って言ったじゃん…

嘘へたかよ…。


「はい…!もう理由もわかった訳なんだし急ぐよ!!私もミリスが心配だから...。」


シオンはそう言うと頬をーふんっー

と膨らましズシズシと前を歩く、

レインと顔を見合せ、ふっ...と

お互い力んでいた肩をおろす。


......。


それから村の住人一人一人に話を聞いていた俺たち...突然遠くから

物凄い勢いで走ってくる人影が見え、殺意は感じなかったので手を振ってみた...


「おーい、どうしたの〜ん...?」

そう呼びかけると、ぜぇぜぇと

ブレた男性の声が聞こえた


「...けて..くれ...ぇぇ」

...?助けを求めてる...?!

そう思い、瞬時に男性の元へ駆け寄った。


男性は先程まで数百歩程先に居たはずの者が突然として目の前に現れたことに驚いたのか腰を抜かし地面に

尻をドサッッ...と着いた。


男性に大丈夫か...?

と手を差し伸べると震えた声で


「お..ぉ....お前さんなにもんだや...!?!?それとおれの声がきこえたんか!?」

と震えて手をつかもうとしては

こなかった。


少し恐怖心を与えてしまったと

男性にギルドの冒険者だと伝えると


「...ぃ...今の冒険者はとんでもないのがおるんだなぁ......。」

と信じてくれたようで、差し伸べた手を掴んでくれた。


「にしてもお前さんよくあんな距離のおれの声がきこえたなぁ……?」

そう問われるとどう答えていいものかと言葉に詰まる......。


「えっとぉ〜...あれだよ〜...エルフの加護だよ...〜アハハ...なんてぇ...」


・・・・・・。

ーやばいぃぃぃ....?!

気まずいぞぉ〜...

さすがに無理があったかなぁ...?ー

と冷や汗をかいてしまう...。

男性は"んんん〜.........と

俺を見つめているが何も言葉を発さない。


アサシンには固有の聴覚スキルがあるがそこらの冒険者には聴覚スキルはおろか...エルフの加護なんてスキル余程の上級者かエルフ族しか

持っていない......そんなスキルの名を出してしまった俺はバカだ...大バカだァ......。

そんな事を考えていると後ろから

シオンとレインが男性に話しかけてくれた。


「村の方ですか...?すいませんうちのメンバーが何かご迷惑を...?」

いいタイミングで来てくれたレインとシオンに無言で親指をたてる...。

シオンはニコッ...と俺を見ているけど...なんだろぅ...虚しい気がした。


「お前さん達はこの冒険者どののお仲間ですか...?いい仲間をおもちで...。」

「あ...はい」

レインはふり返り

ーん??ー

という顔で俺を見る...。


いや...どういう状況だったの...??

と言わんばかりの顔である。

俺はーはぁ...ーと軽く息を吐き

話を戻すために男性に話しかけた...。

「えー...と、おじさん助け求めてたよね?お急ぎなんじゃ〜...??」

そう男性に問うと男性は

クワっっ...!!っと目を見開き

グンっっと視線を俺たちに向けた。

ヒッッ......。

......と声が出ていた気がする...

いや、出るでしょ...。

シオンは男性にも聞こえたのでは?

と思う程に声に出していた...。

途端に男性は

ーうわぁぁぁっー

と声を荒げ話し始めた...。


「そうだっ!!そうなんだ!!

助けて欲しいんだぁぁ!大変なんだったぁぁぁ!!」

俺は思った...

ーやばい.....だいぶ時間たってしまってるんじゃぁ......!!?ー...と。


「すぐ近くのダーズ森林で女の子の悲鳴が聞こえたんじゃっっ!!」

その言葉を聞いた瞬間俺含めきっと二人もだろう...

かなりの胸騒ぎと焦りで空気が重くなる感覚が全身にズシッとのしかかる...。

レインは男性の肩をガシッッと掴み

焦り口調で男性に聴き始める。

「おっさんっっ!確かに女性の声だったかっ...?!!モンスターの声は...!?聞こえなかったか...??!」


男性はレインの力強さに少し震えながらもレインの目を逸らさず見て確かに女性の悲鳴だったと答えた。

モンスターの声などは聞こえなかったらしいが複数の人らしき姿を見たという...。


ー行こうっっ!!ー


レインはそう言うと男性に礼を伝え

即座に走り出した...。


「おじさん!危険かもしれない...、今は家に戻っててほしい

ちゃんと戻ってくるから!」

俺は着いてこようとするおじさんの体をくるっ...と村の方向へ向け肩を

ポンポンッと叩いて"任せて!"

と伝えレインとシオンの元へ急いだ...。


悲鳴が聞こえたというダーズ森林の前までやってきたものの...

異様に静かすぎる......。

普段きこえてくるモンスターの鳴き声すら聞こえず、明らかに人為的なものだと判断した俺たちは隠密スキルで森林内部へ入っていった・・・


「ねぇシエル、グリフォンの加護で上空からなにか見えない...?」

シオンとレインは

"グリフォンの加護"

またの名を"鷹龍の目"のスキルを

使えない為、シオンは千里眼を、

レインは空間感知スキルを使って

周囲を見ていた。

俺は上空からの視点で悲鳴の正体を探る...。


「お前のそのスキル...何度もみてるが、やっぱり慣れねぇな...なんで紅く目が光るんだ?普通は黄金色に光るって聞くんだが...お前のは特別なのか...?」


とレインは不思議そうに聞いてくるが...正直そんな事考えたこともなかった俺は特に特別感を感じた事も無く、アサシンにはとっておきのスキルな為単独依頼の時もよく使用している。

しばらく上空から見ていると

倒れている人影を見つけ、上空視点から地上に視点を近ずけると

そこには少女が倒れていた......。


しかしその少女は俺たちが探しているミリスでは無く、王都内でも見たことの無い姿だった...。


「レイン..シオン...誰か倒れてる...若い女の子だ...距離はそう遠くない、急いで向かうぞ...。」


2人にそう伝えると顔を見合わせ

ミリスでは無いことを残念に思ったのか...それとも少し安心したのか、強ばっていた顔が少しゆるんだのがわかった...。


罠かもしれないと周囲を警戒しながら少女の元へと辿りついた俺たち..

レインとシオンに木の上から見ていてもらい俺が少女の元へ近寄る。

すると、気を失っているのか

呼びかけても全く反応せず動きもしない...だが息はしていた為、少し安心できた。


その少女は透き通る程綺麗な白髪で、

俺やレイン達よりも歳は若く見える。


か......かわいい...

そう思いながら少女の頬をぷにぷにとつまんでいると少女は

"ん...んん......"

と目を覚ました。


まぶたをゆっくりと開けた少女は

俺を見るやいなや顔を真っ赤にしていた。


普通なら大声で叫んだり、即座に距離をとって戦闘態勢になるものだが

この少女は俺たちに殺気が無いことをわかったのか泣き始めた...。

ーうぅ......うぅぅぅ...ー

困る...かなり困ってしまう...

ガシッっと掴まれ俺の腰あたりで涙を流す少女に少し罪悪感を感じた。

そんなに嫌だったのだろうか...

それとも安心してこれだけ泣いているのだろうかと俺は少女を見ながら考えていた...。


するとシオンとレインも周囲に敵が居ないことを確認し、少女と俺の元へ降りてきた。


「え...!?この子どうしたの!?なんで泣いてるの......??」

「お前...ついにやってしまったのか...」

と勘違いをしている二人に少し思う部分はあるが...日頃の行いだろうとここはグッと堪える。


すると少女は顔をあげ、小さな声で何か語りかけてきた......。


「ご...ごめんなさい..急に泣いてしまって...やっと危険を感じない人に会えて...安心してしまいました...」

そういうと少女はゆっくり立ち上がり自身についていた砂をはらった。


「急で驚かせてしまったよね..ごめんっ...!俺の名前はシエル、そこの二人はレインとシオンだ、

俺たちは王都の冒険者だから安心して欲しい...。君の事教えて欲しいんだけどいいかい...?」

そう聞くも少女はじーっとシオンを無言で見つめたまま視線をずらさない...。


少ししてハッと思い出したように

ーごめんなさいっっ!!ーと頭を何度も下げた...。


少し変わった子だな...と思いつつも...

なんだろう...さっき腰で泣いていた時に

どこか懐かしい匂いがしたのは気のせいだろうか...

と少女の事を見ていた

少女は涙を拭うと深呼吸して話し始めた。


「私はノルン..."ノルン・レス・リルガーで...です...。」


名前全部言うと思わなかった...。

とどこか気まずい俺たち三人は

ニコッと苦笑い...。

ノルンか...素敵な名前だ

「ノルンって凄くいい名前ね!

ものすごくかわいいし!仲良くしてね!」

とシオンは唐突にノルンに抱きつき

ノルンは顔を真っ赤にして慌てていた...。


素性も分からない少女にいきなり抱きつくのはどうかとも思うが

ノルンはそんな敵意のある子には当然見えなかった..そう思っているのは俺だけでなく、レインとシオン...

二人も同じ気持ちだろう。

そう思うと少し安心できた。


「あ...あの...助けていただいてあれなんですが...なぜ、私がここにいるとわかったんですか...?」


俺たちはノルンに近くの村の住人から悲鳴が聞こえたと情報を受けて

ここに来たことを伝え、話しやすくする為シオンは...


「もう!私も二人もノルンを疑ったりしてないから!...

だから普通にはなして!」

と説得し、対等に話してくれるようになった。

するとノルンは自らここにいた理由を説明してくれた。


「私...サミシュティア精霊国から来たの...。大精霊シルフィール様からリオル王国である人物に会って欲しいってお願いされて...それで休息を取ろうとこの森林で休んでいたら盗賊に襲われて...ぅぅ...。」


正直にまず思った...情報が多すぎる・・・・。


まずはるか遠くの東部にある

サミシュティアから来たということ、でもノルンは精霊でも無ければ

エルフでもない、どこからどう見ても普通の人種だ...。


それと王都で探す人物とは誰なのか...それも気になるところだが、

盗賊に襲われて生きていたのは奇跡だろう。場合によっては殺されていたかもしれない。


そう思うと生きていてくれて本当に良かったと思った...。


レインが突然ノルンに近ずき

じろじろとノルンの身体を見ていた。


「何じろじろ見てんの...!?

この変態レインッッ!」

と、レインを勢いよくビンタするシオン、それを見て悲鳴をあげるノルン...。

何だこの状況は...?

「馬鹿っ!ちっげぇよ!

いてぇなチクショウぅぅ......。なぁノルンじろじろとみてしまって申し訳なかったが、この際だから聞かせてもらうけど...

ノルンはアサシンなのか?盗賊に狙われて生きているのは冒険者でも難しいからな、それに何も盗まれてはいないようだし、ノルンも無傷だ...気を失っていたのは数人を一人で相手して

だいぶ体力を消費したからではないか...?」


その問いをするレインを前に

動揺する俺とシオン...

こいつ...正気か?!

分かっていても聞くのはアサシンなら尚更駄目だ...!!

敵ではないといえ、自ら口にするのは"死"を意味するんだぞ...?!

俺たちはアサシンだが、本当の冒険者なら敵対する...ノルンッッ答えるな!答えなくても俺たちはお前を襲ったりしないっっ...!!


「アハハ...やっぱり分かっちゃうんだね...レイン達もそうなんでしょ?」


平然と答えるノルンに戸惑いを隠せなかった......。


バレ...てた...?

それなりに冒険者を装ってはいるが

同職者だと分かるものなのか?

と不思議に思う。


あまり他国のアサシンに会ったことが無かった為、申し訳ない気持ちの俺は少し反省していた...。


「やっぱりか、安心したよ...失礼なことを聞いてしまった...すまない。」


レインはノルンに頭を下げた。

しっかりと完璧な姿勢でだ...。


レインがここまで他人を信用するのはごく稀だ...。


俺たちアサシンにとって仲間以外は信用するなが鉄則であるだけに...それだけノルンにはどこか安心感と信用性が増していたということを認めざるおえないと

思った。


「ノルン...実は俺達も人を探してるんだ...この辺で強そうな男二人と女性を見なかったか?」


俺はノルンにそう聞くと

何かを思い出したようにーあっ!ーと声に出す。


ノルンは一度でも"見た人間の顔は忘れない"という事に自信があるらしく

意気揚々と説明してくれた。

ノルンの説明だと

桃色の髪の少女と黒髪の男性を見たといいデインとミリスの特徴にしっかりと一致していた。

だがマキシスの存在が無いことに

俺たち三人は焦りを感じていた...。


〜道化の章〜・出会い【三】へ続く

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