第2話 さぁ、抹殺だ

 リチュは、森を突き進む。

 目的地は、リチュを化物と呼んだ。リズのいる、『ヒューマノン』だ。


 スライムの脅威が、近づいてることはいざ知らず、リードとリズは、未だ続く、子供の行方不明事件の調査をしていた。


「やはり、スライム族が集まる村に行ってみようと思う。」


 リズの提案に、心配するリード。


「大丈夫か?リチュは、ブラックドラゴンを従えてただろう。最上級のドラゴンが相手だと、さすがに1人じゃ厳しいぞ。」


「無茶はしないよ。遠目で確認するだけだから。それよりも…」


 リズが、リード方を見る。


「タンクは、大丈夫か?」


 リードは、タンクの部屋を見る。


「未だに、出てくる所を見ていない。」


「だから、あいつはやめろと言っておいたのに…」


 リズは、昨日、スライムの素材を持ってきた者が言っていた、スライムの村に向かう為、城を出る。


 ――――――――――


 リズが、都市から出る。リズの目の前に、復讐の念に染まったスライムが、現れる。


「おぉ〜、リズさん。ちょうど良かった、貴方にお会いしたかったんですよ。」


「リチュ…」


 リズが、リチュを睨みつける。

 リチュが、笑顔を見せたまま、リズに近づく。


「昨日、私達の村が襲われたんですよ。リズさん、貴方、何か知りませんか?」


「スライム狩り… お前の行動を見て、スライム族は、人間にとって危険な生物と判断して、スライムの皆殺しが、決まったんだ。」


 リズが、杖を構える。それに対して、リチュは、相変わらず笑顔を変えない。


「そうですか。」


「お前、なんで笑ってんだよ。」


「リズさんの言う通り、私は、化け物なのかも知れませんね。こんな時にすべき顔が、分かりませんので。」



「こういう時に、お前がすべき顔は、死に顔だけだ!! 『火炎魔弾ファイアーボール』!!」


 リズの杖から、火の玉が放たれる。

 しかしそれは、真顔になったリチュに、軽々と避けられる。


「貴方、それしか出来ないんですか?」


 次々と、放たれる火の玉を避けながら、リチュが、リズに近づいていく。


 途中、リチュの足元に水のマナが集まる。


「これは!?」


 驚くリチュに、リズが言う。


「確かに私は、『火炎魔弾ファイアーボール』ばかり使うけど、それ以外もできる!『水柱スプラッシュ』!!」


 リチュの足元から、大きな水柱が発射される。


「やったか?」


 リズの疑問に、答えるように、水柱の勢いがなくなっていく。

 水柱が、無くなった先に見えたのは、傷一つ付いていないリチュの姿があった。


「これでも、ダメなのか。」


「流石です。火の玉を避けるのに注意を引いて、地面からの攻撃を行う。私の目に、マナが見えてなければ、直撃でした。」


「ちっ、ならこれなら…」


 リズが杖を上げると、風のマナが、リチュの真上に集まり、暗雲を生み出す。


「『落雷サンダーボルト』」


 暗雲から、雷が落ちる。しかし、リチュが、高速で前進し、回避される。


「そんな見え見えの攻撃に、当たるとでもお思いで?『氷の槍アイススピア』。」


 リチュが、左手を前に突き出すと、氷柱が3つ現れらリズに向かい、放たれる。


「『魔法の盾マジックシールド』!!」


 リズの前に、土のマナが集まり、茶色の盾が生成される。

 氷柱は、魔法の盾によって防がれる。

 その光景を見て、なお前進するリチュ。


「この距離なら、当たるでしょう。『炎の槍ファイアランス』。」


 リチュの手から、炎の槍が放たれる。

 炎の槍が、魔法の盾に突き刺さる。


「ぐぐぐぐぐぐぐ…」


 炎の槍が、魔法の盾を貫通し始める。やがて、魔法の盾は突き破られ、リズの体に、炎の槍が貫通する。


「ぐぁ!!」


 リズの叫び声は、初めだけを残し、それ以上放たれることは無かった。

 リズの体は、一瞬にして灰になってしまった。

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