いつか恋は愛になる(医師編)
水島あおい
第1章 再会
第1話
風が吹いていた。
真っ青な海に、まるで絵の具で描いたような青い空が広がる。
風の中に潮の香りがする。
伊那国島診療所兼介護センターでは
丁度昼食の時間だった。
時刻は午後2時。
おばあちゃん達は昼食も終わり、部屋でのんびり過ごしている。
「来週から新しい先生来るじゃない?
どんな先生かな」
「内田さん、詳しい情報教えてくれないんだもん」
介護士の徳山さつきと、秋山絵見が話をしている。
「ねえ、瑠加はどう思う?」
「長くいてくれる人がいい」
大浦瑠加は弁当を食べながら言った。
瑠加は26歳である。
介護士の仕事を5年勤めて、介護福祉士の資格を取った。
20歳で伊那国島に来てから6年、今は介護部のリーダーである。
「確かに。前の中村先生なんて3ヶ月しかいなかったもの」
さつきが言った。
「あんな奴に先生なんてつける必要ないわよ」
廊下を歩いて来るのは看護師の蔭山亜紀だ。
「ろくに仕事はしない上に、女にちょっかい出すし、診断ミスで念のために本土の病院で治療受けたから良かったものの」
亜紀は腹を立てている。
「それ指摘されたら俺は頼まれてこの診療所に来てやってるんだぞ!と言って逆ギレして辞めた」
「あれで島の人達の心も離れたし、だからまともな先生に来て欲しいわけよ」
亜紀の言葉を聞いてみんな頷いた。
蔭山亜紀は24歳。
伊那国島の生まれである。
本土の看護学校を卒業後、民間の総合病院救命救急センターで2年間看護師をした後、島に帰って来た。
食事スタッフの香山晴美が厨房でおやつの準備をしている。
3時からはまた忙しい時間が始まる。
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